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地底の未来  作者: Spumante Rock


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第2話 報道の檻 ――歪む真実――

いつも読んでいただきありがとうございます。

鎌倉の午後


潮風に混じるざらついた熱気

――それは、迅の心を蝕む“現実”の重さだった。富士山テレビの取材班が、

清風ケアセンターの門をくぐった日から、施設の空気は変わった。

「――清風ケアセンターで起きた高齢者転倒事故、

 原因は介護士・杉本迅の判断ミスだった可能性があります。」冷たい女の声が、

モニター越しに響いた。


記者の名は、桧山あかり。


端正な顔立ちに、確信めいた言葉。

それは“真実”ではなく、“演出された正義”だった。カメラの前で問い詰める桧山。

「あなたはそのとき、対応を誤った可能性はありませんか?」

「責任をどうお考えですか?」迅は言葉を失った。

事故の瞬間、老人の手を離したのではない。

それでも、編集された映像は“彼が見捨てた”ように映していた。

迅の上司の田村が、記者たちに立ちはだかった。

「彼が命を救おうとしたのは事実だ!報道が介護現場を潰すようなことをしていいのか!」

同僚たちも迅を囲み、懸命に庇った。

だが、カメラはその姿を映さなかった。社会は“便利な悪者”を求める。

そして、迅はその役を押しつけられた。


――数日後

夜のコンビニ前、雨上がりの街灯の下――

傘を差し立つ、ひとりの女性がいた。「……久しぶりね。」

あの時の少女だった、、、

偶然を装うように微笑むが、その瞳の奥は冷静に光っている。

迅は驚きと戸惑いを隠せずに立ち尽くす。「テレビ見たよ、ひどい報道!!」

「……でも、仕方ないよ。介護士なんて、誰も守ってくれないから。」

「だったら――別の目を使えばいい。」

梓の声は、雨の音に溶けていくように静かだった。「別の局に、あなたの話をリークするの。

 “真実を報じたい”と思っている記者が、まだいる。」迅は首をかしげた。

「そんな人、本当にいるの?」梓は微かに笑った。

「信じてみる価値はあるわ。

 その時、わたしも一緒に行く。現場に一緒にいた私だから少しでも助けになれるように。」(――誘導できる。今ならまだ、彼はわたしを疑わない。)

梓の中で、冷たい思考が流れた。


迅の“素直さ”こそ、人間という種の最大の弱点。

だが、それを“救う力”にもできるかもしれない。


――翌日、迅と梓は

JBSテレビ報道部のディレクター、香坂ひろしの元を訪れた。

香坂は無精髭の顔を上げて二人をじっと見つめる。


「富士山テレビの報道……あれは完全に編集されてるのはわかる!!」

彼はかつて富士山テレビに在籍していた。

“上”の指示に逆らえず、報道を歪めてきた過去がある。

その罪を償うように、いまは“真実”を追い続けていた。

「定点カメラの映像を、全部見てもらえませんか?」

迅は1枚のSDカードを差し出す。

そこには、富士山テレビの流した定点カメラの編集無しの映像が記録されていた。


――“悪者を作ってしまえば、視聴率が取れるのよ… ” 微笑む香坂


――“編集で印象を変えてしまえば先日の富士山テレビが放映したような映像になる。


「面白い!!……これを、ノーカットで放送しよう!!」


――数日後。

JBSはニュース番組で全国に放映した。“介護報道の裏に隠された真実”

富士山テレビの内部音声、操作された映像、

そして迅の本当の姿に、世間は一夜にして、掌を返した。

桧山あかりは批判の矢面に立たされ、局から全責任を押しつけられていた、

静かになった編集室

彼女のデスクの奥から、封をされた黒いファイルが見える・・・


そこには――

企業献金入金リストの文字。桧山は独り呟く。

「……あの報道は、わたしだけのせいじゃないシナリオだったのよ。」


夜の鎌倉。

梓はベンチに座り、空を見上げた。「……まだ、序章にすぎない。」その瞳に、

うっすらと光る爬虫類の紋。

“真実”は暴かれた。

だが、それは“もっと大きな真実”の扉を開ける為の、最初の一撃にすぎなかった。


JBSテレビの特番放送から一週間。

街の大型ビジョンでは、連日「報道倫理の問題」「テレビの信頼回復」が叫ばれている。

その裏で、富士山テレビは沈黙を保っていた。

世論の圧力に耐え切れず、ついに声明を出す。

「一連の偏向報道は、記者・桧山あかりの独断によるものと確認しました」

翌朝、ニュース速報が流れた。


桧山あかり――懲戒解雇。


同時に、テレビ局幹部の謝罪会見。

まるで“ひとりの罪”にすべてを押しつけたかのような結末。

記者たちのフラッシュの中、桧山はただ無言で頭を下げた。

(……私が馬鹿だった、報道なんて信用できない事を良く知っていたのに、、、)

唇の裏で震えるその言葉は、誰の耳にも届かなかった。


――鎌倉の海辺。

日が傾き波が黄金色に輝く。迅はようやく、以前の静かな生活に戻りつつあった。

仕事先の老人たちも「ニュース見たよ、頑張ったね」と声をかけてくれる。


――そして、いつのまにか。

梓が“日常の中”にいる時間が増えていた。

買い物帰りにふと立ち寄る海辺のカフェ。

風に揺れる髪、無表情の奥に宿る小さな安らぎ。

「この前のおばあちゃん、退院したって、、」

「……よかったね。」

「迅さん、最近ちょっと笑うようになったね。」彼女の笑みは穏やかで、

どこか“測る”ようでもあった。


梓の瞳の奥では、微細な光が瞬いている。


(――2分後、コンビニ前に報道カメラが3台……)


(――迅が角を曲がれば、遭遇する。)


彼女は小さく息を吸い、道を変えた。

「ねえ、こっちの道の方が近いよ。」

「え、でもそっちは――」

「いいから。」梓が歩く方向に導かれるまま、迅は報道陣の目をすり抜けていた。


(……気づいていない。よかった。)


予知能力――見えるのは1時間先までの未来。

ただし、他人の未来を視るには、“その人の半径2メートル以内”にいる必要がある。

迅のすぐそばにいる事、、。

それが、梓にとっての“防御”であり、“矛盾”でもあった。


――その頃、SNS上では新たな炎上が始まっていた。

「#富士山テレビから国民自由党へ」

「#裏金リスト流出」政治資金の流れを示す詳細なリスト。

受領額、日付、担当議員名――全て実名で。タイムラインは瞬く間に埋まり、

“報道の闇”は“政治の闇”へと形を変えた。日本中が混乱の渦に巻き込まれていく。


――そんな騒ぎの最中、

清風ケアセンターの前で、ひとりの男が待っていた。「――久しぶりだね。」無精髭の奥から笑みを浮かべたのは、香坂ひろしだった・・・


JBSテレビのディレクター。

あの報道で迅を救った男「香坂さん……どうしたんですか?」

「ちょっと頼みがあってね。」喫茶店に入り、香坂はゆっくりと言葉を選んだ。

「実は、また特番の企画があるんだ。

 “報道の再生”ってテーマでね。君に手伝ってほしい。」

迅はコーヒーカップを見つめたまま、首を横に振った。

「……もう、報道の世界は懲りました。

 僕は介護士です。これ以上、関わりたくない。」香坂は少し沈黙してから、

懐から名刺を一枚テーブルに置いた。


「実は、君に紹介したい人がいるんだ。」

「紹介?」

「明日、夕方。渋谷の編集室に来てくれないか?」


それだけを言い残し、伝票を持って香坂は席を立った。


――翌日、迅は渋谷にいた、、

指定の編集室で香坂は待っていた。

その隣の椅子には、見覚えのある横顔――。


スーツ姿、少しやつれた表情。

だが、その瞳の奥には消えぬ炎。「……桧山、あかり!?」

迅は息を呑んだ。桧山は立ち上がり、静かに頭を下げた。


「杉本さん。あなたに――謝らなきゃいけない。」彼女の声は震えていた。


その頃鎌倉、梓の視界に“ノイズ”のような未来の断片が走る。


――そして、“新たな報道の闇”が開かれる。梓は小さく息を詰めた。

「(……また、動き始めた。)」

ここまで読んでいただきありがとうございました。




引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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