32話 虫唾が走るな…
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
小説のことばかり考えていたら少し疲れてしまったので、今後は不定期更新にしようと思います。
しばらくは新しい話よりも、過去に投稿した話を読みやすくなるように見直し・修正していく予定です。
これからも自分のペースで頑張っていきますので、よろしくお願いします!
セリーが少年に魔法を使おうとしたとき、門から一つの瓶が飛んできた。
「急いで鼻と口を塞いでください!」
セリーの指示どおりにリア、ラナ、ラーシャは口と鼻を手で塞いだ。
パリン!
ボフッ!
瓶が割れると青色の煙が周囲に広がった。
しばらくして煙が消えリアは周囲を見渡した。少年と少女、そしてビビンバ国の王子が倒れていた。
「大丈夫!?」
リアは少女に駆け寄った。
「リア様、ご安心をあれは睡眠薬なので眠っているだけです」
セリーは焦っていたリアに優しく言った。
「良かったわ…でも何でセリーはわかったの?」
「あちらをご覧ください」
そう言ってセリーは門のそばで倒れている者を指差した。
「シリアお姉様!?」
「アレが元凶です」
「アレって…お姉様は一応王女でしょ?」
「そうですね、あの方はメーティスに行く前は城で様々な研究をしていたのです。城中に薬品の匂いや爆発等の処理は私達メイドが行っていたので」
セリーは意味深な笑みを浮かべた。
「そ、そう…」
リアはセリーの表情を見て目を逸らした。
「しばらくは起きないと思うので屋敷に移動させましょう」
「分かったわ」
リアは少女を背負った。
「セリー様、あの者達はどういたしましょう?」
ラナはビビンバ国の王子へ視線を向けながら、シリアを抱えているセリーに尋ねた。
「縛っておきなさい」
「承知しました」
「それと、その者も運んでおきなさい」
セリーはいびきをかいているラテを指差す。
「「はい…」」
ラナとラーシャは呆れたようにラテを見た。
そうして、リア達は倒れた者達を屋敷へと運んだのだった。
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シン達はハクに乗って二時間ほど走り、五階層までたどり着いていた。
「あっという間に五階層だね」
シンはハクに乗りながら言った。
「これでは私達の出番がありませんね」
「そうだねー」
(せっかくのダンジョンなんだからレベル上げとスキルを手に入れたい!)
「ここからは自分達で進もう」
「クゥーン…」
シンの言葉を聞いてハクは悲しげに鳴いた。
「ごめんね、でも帰りは思いっきり走っていいからね」
「ウォン!」
ハクは嬉しそうに吠えた。その時、シンとアルは道の先が明るくなっていることに気付いた。
「ん?」
「先が明るいですね」
そうして、シン達は石造りでできた家々がある場所へと入った。
「もしかして安全地帯?」
「そのようですね」
「初めての攻略でしょうか?」
ギルド職員の服を着た男性がシン達に声をかけた。
「はい」
「冒険者ギルド職員の方でしょうか?」
「はい、五階層の安全地帯担当の者です。ギルドカードを拝見しても?」
シンとアルは職員にギルドカードを見せた。
「確認できましたが…そちらのお二人は大丈夫でしょうか?」
職員は苦笑いでハクの背中でぐったりしているガイとアーサーを見る。
「えっと〜気にしないでください!」
「これがあの二人のギルドカードです」
そう言ってアルはいつの間にかガイとアーサーの懐からギルドカードを取って職員に渡した。
「確認できました。ごゆっくり体をお休めください」
「ありがとうございました」
そう言ってシン達はハクに乗って安全地帯の道を進んでいく。
「シン様、このまま安全地帯を抜けるのですか?」
「うーん」
シンが悩んでいるとハクの背中から掠れた声でガイとアーサーが言う。
「飯ぃ……」
「水ぅ……」
「じゃあ、食事処に行こうか」
「そうですね、少し休めばこいつらも治るでしょうし」
「うん。おっ!いい匂いがするね」
「あそこの店ですね」
「あの店にしよう!」
そう言ってシン達はハクを店の前に待たせて食事処へと入った。
「らっしゃい、何にする?」
「おすすめと水を四杯お願いします」
「あいよ」
シンがそう言うと、女性の店員は店の奥へと去っていった。
「はぁーーー」
席に着いた途端にシンは長いため息を吐いた。
「どうしました?」
「…素材拾えてない…」
シンは机に伏せ落ち込みながら呟いた。
「そんなことですか」
「そんなって!」
「これからどうせ魔獣などを倒すのですから良いでしょう」
「そうだけどさぁ〜」
そう話していると女性の店員が食事と水を運んできた。
「おまちどう、焼いた肉と水だよ」
「ありがとうございます…」
店員はその場から去っていった。
「肉と水か…」
焼きたての肉と木製のコップに入った水が並んでいた。
(これがこの世界での最高の食事なんだよな……)
シンはそう思いながら食事を口に運んだ。
「復活!」
「もう大丈夫だよ!」
食事を食べ終わってガイとアーサーが元気よく言った。
「それじゃあ行こうか」
「おう!」
シン達が立ち上がった瞬間店内に怒声が響く。
「この俺様から金を取るのか!!!」
シン達は怒声が聞こえた方向を見るとそこには、金ピカの鎧と剣を携えた少年と大剣を背負っている少年と修道服を着た少女がいた。
「俺様は勇者だぞ!!」
「だからと言って代金は払って貰えませんと…」
勇者と名乗る少年は料理人らしき中年男性に怒鳴っていた。
「もしや貴様魔族か!!」
「ち、ち、違います!」
「いいや、勇者のこの俺様が言うのだ魔族に違いない!」
修道服の少女は勇者を止めようと口を開きかけたが、何も言えずに俯いていた。
その言葉に店にいた人々が呟く。
「魔族だと!?」
「なんでこんな所に!?」
「勇者様どうかお助けを!」
「魔族を倒してください!」
人々の言葉に勇者は笑みを浮かべ剣を抜き、男性に剣を向けた。
その様子を見ていたシンは静かに怒っていた。
(勇者だから金を払わない?魔族がいると言って人々の感情を煽って、無実の人を殺めて名声を得ようとしているのか?)
「虫唾が走るな…」
シンの呟きにアル、ガイ、アーサーは息を飲んだ。シンは静かに席を立った。
「シン様!」
「大丈夫、魔法や剣を使ったりしないよ…」
シンは静かに勇者の元へ歩いていく。
「安心しろ!勇者であるこの俺様が魔族を殺してやろう!」
シンは拳を握りしめて勇者の間近まで迫った。
「そこまでだ」
シンが一歩踏み出そうとした瞬間に黒と金色を基調とした鎧を着た男性がシンの前に現れ勇者の手首を掴んで止めた。
「何すんだよ!」
「この人は人間だよ?」
「てめぇ、勇者の言葉を信じねぇのか?」
「信じるも何も見れば人間ってわかるでしょ。魔族は異形の姿だし」
「もしやお前も魔族だな!!」
勇者はそう言って剣を男性に向けた。男性は物怖じしなかった。
ガンッ!
「なっ!?」
男性は勇者の剣を蹴り飛ばした。
「て、てめぇ!!」
勇者が怖気付いていると見ていた人々が男性を見て呟いた。
「もしかして『雷鳴の獅子』のリーダーのガインさん!?」
「AAAランクの!?」
「浮空のダンジョンを四十五階層まで行ったらしいぜ?」
「ホントかよ!」
「そんな方が魔族じゃないって言うんだ人間に違いない!」
「なんだよ!ビビらせやがって」
「だいたい勇者ってのも嘘だろ!」
「俺達を騙したのか!」
「ふざけんな!」
人々は勇者に向かって悪態をついたり食べカスなどを投げた。
「クソ共が!!俺様を侮辱しやがって!」
「とっとと帰りなよ」
「チッ!てめぇら覚えてろよ!」
勇者はそう言い捨てると、不機嫌そうに大剣を持った少年を連れて店を出ていった。
「ごめんなさい!!!!」
店内に大声が響いた。
「君はあの少年と出て行かなかったんだね?」
男性は勇者とともにいた少女に言った。
「ごめんなさい、あの人はちょっと性格が悪くて……」
「ちょっとかなぁ…」
男性は微妙な表情で答えた。
「代金は私が払います!」
そう言って少女は懐を探していたが顔を青ざめた。
「ありません……」
少女は小さく呟いた。
「あの勇者……僕の財布を盗んだな!?」
少女は声を上げて叫んだ。
「嬢ちゃん、すまないが魔導騎士を呼ばせてもらうよ」
先程の料理人らしき店員が言った。
「そ、そんな!」
「君は彼と一緒にパーティーを組んでいるんだろ?」
鎧の男性が少女に言った。
「はい…修行としてあの勇者とパーティーを組んでいます…」
憎々しい表情を浮かべながら少女は言った。
「それじゃあ仕方ないね…」
「もう嫌!あの勇者が問題を起こす度に僕が謝って!何度も危険な目に遭うし!!もうヤダ!」
少女はそう叫び、床を転げ回っていた。周囲の人々はなんとも言えない表情になっていた。
「はい、これ」
シンは銀貨二枚を少女に渡した。
「え!?なんで!?」
少女は驚いてシンと銀貨を交互に見た。
「もらっといて、そして僕らの代金も含まれてるから店員さんに渡しといて」
「あ、ありがとうございます!!」
少女は何度もシンに頭を下げる。
「それじゃあね」
「あの!名前を!」
「気にしないでいいよ」
「待ってください!」
シン達はそそくさと食事処を出ていった。
「彼も冒険者だからまた会えるよ」
鎧を着た男性は少女へと言った。
「お知り合いなのですか?」
「いや、こっちが一方的に知ってるだけだよ」
鎧の男性が話していると食事処に冒険者らしき者達が入ってきた。
「ガイン、例の件はどうなったのよ?」
帽子を被り、露出度が高い女性が鎧の男性に向かって言った。
「例の件?」
男性は首を傾げた。
「ちょっと!まさか忘れてたの!?」
「手分けしてことにあたっていた意味がないですな」
大柄の男性が呆れたように呟いた。
「あ!」
男性は思い出したように声を上げた。
「やっと思い出しましたか」
神父のような服を着た眼鏡をかけた男性が鋭い眼差しで言った。
「もう行っちゃった……」
「「「は?」」」
鎧の男性の小さい呟きに他の三人は怒り心頭の様子だった。
「追いかけるわよ!」
「ガインには困ったものだな…」
「あの方からの直々の頼みごとなのですよ!」
「わ、わかってるって!」
そうして、ガイン達四人はシン達を追いかけたのだった。




