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20話 シン様の身柄を渡せと…


シンはアルとハクを連れて屋敷の門を出た。

「検問所で何かあったのかな?」

「魔物などが来たわけではなさそうですね」

シンとアルがそう話していると、通りかかった男性が言った。

「外へ出払っていた騎士と冒険者たちが帰ってきたんだ」

「あー貴族に連れてかれたっていう」

「そうだ、それで貴族も戻ってきたんだとよ」

男性は不機嫌そうに言った。

(そうだよな…母様達が来なければ大勢の犠牲者が出ていただろうし…騎士たちを連れていった貴族は許せないよな…)

「ありがとうございます」

「いいってことよ」

男性はそう言い残し去っていった。

「ビビンバ国の貴族ですか…」

「ここって領主の屋敷だよね?」

「そうですが?」

「その貴族…ここに来るんじゃない?」

「…可能性は高いですね…」

シンとアルは目線を合わせ同時に頷いた。

「逃げようか!」

「夕方まで街を回りましょう」

「ウォン!」

そう言ってシンとアルはハクを連れて街へと来ていた。

「活気があるねぇ〜」

「商人も多く行き来してますね」

(魔物の襲来があったのにすごいな…)

そう思っていると出店の店員がシン達に声をかけた。

「あんちゃん!魔物達を倒してくれてありがとうな!」

「無事で何よりですよ〜」

「これ貰ってくれや」

そう言って店員はシンに肉の串焼きを山ほど渡した。

「こんなに?!」

「その従魔も戦ってくれたんだってな」

店員はハクを見ながら言った。

「じゃ、ありがたく貰いますね」

「おう!」

そうしていると他の出店の店員達がシンに声をかけた。

「おい!兄ちゃん!うちのも持ってけ!」

「沢山食べな!」

「ありがとうねぇ〜」

「あんがとよ!」

シンはお礼としての食材を山ほど受け取り、収納袋へと収納した。

「いや〜沢山貰ったね〜」

「二週間は食事に困りませんね」

「いや、さすがに腐るでしょ」

「その前にハク達が食べ尽くすでしょう」

「ウォン!」

「うん…」

シンはハクを見ながら顔を引き攣らせた。

「それで、どこに行かれますか?」

「うーん、本屋と武器屋に行きたいかな」

「魔導店などもあるそうですよ」

「うひょ〜!行こう!」

「はぁ、必要な物だけですからね」

「分かってるって!」

シンはそういいながら満面の笑顔でスキップしながら街を歩くのであった。

「らっしゃい」

シンとアルは武器屋に入り、作業着を着た店員に出迎えられた。

「剣を研いで貰うことはできますか?」

「できるぜ」

「ではお願いします」

「おう」

シンは店員に剣を渡した。

「明日の昼にまた来てくれ」

「分かりました」

シンは剣を預け、武器屋を後にした。

そうして、シンとアルは本屋へと入った。

「ゆっくり見てきな」

本屋の店員がカウターからシンとアルに言い、ふたりは店内を見回る。

「魔導書が少ないね…」

「普通の歴史書等が多いですね」

「だけど魔物の本とかは買おうか」

「そうですね」

そう言ってシンとアルは何冊かの本を買い、本屋を出て魔導店へと入った。

「いらっしゃい」

魔導店の店員はエルフの女性だった。

「あら?もしかしてハーフかしら?」

店員はシンとアルを見て言った。

「母がハイエルフで」

「私は孫にあたります」

「あら!ルシアちゃんの身内だったのね!」

シンとアルの言葉にエルフの女性は驚きながら言った。

「なんで分かるんですか?」

「ハイエルフは王族に連なる存在なのよ」

「それだけでルシア様の子とは分からないでしょう」

アルはそう言って警戒する。

「そんなに警戒しないでちょうだい、ルシアちゃんとは友人なのよ、それに昨日ここに会いに来たわよ」

「なら母様が僕をなんて呼んでいるか答えてください」

「シンちゃん♡!!」

店員はルシアの仕草を真似しながら言った。

「事実だよ!アル!」

シンは真顔でアルにそう言った。

「真顔で言わないでください」

「ウフフ、それで今日はどうしたのかしら?」

「魔導店っていうのが気になって」

「そうなのね。自由に見ていってちょうだい」

店員にそう言われ、2人は店内を回る。

「なんか禍々しい物が多いね…」

「触れるのはやめましょう…」

そう言って店内を見て回っていると、シンの目に止まったのは赤い本だった。

「魔導書もあるんだね」

「これは触れても大丈夫そうですね」

シンは赤い本を手に取った。

「【インフェルノ】火の上級魔法か、げっ!金貨5枚!」

「買いませんよ」

「嫌!買うよ!」

「ダメです!それに手持ちが少ないのです」

「ぐぬぬぬ!」

シンは苦虫を噛み潰したような顔になっていた。2人がそう話していると、店員が微笑みながら声をかけてきた。

「どうしたのかしら?」

「……」

「なんでもありません」

シンは苦虫を噛み潰したような顔を続け、アルが答えた。

「なら良かったわ、それよりシンくんに見せたい物があるの」

「見せたい物ですか?」

立ち直ったシンが答えた。

「ええ、案内するわ」

シンとアルが店員に案内された場所には三十センチほどの白色の木でできた杖が飾られていた。

「ん?!」

(なんだ?妙に引き寄せられるな?)

「ルシアちゃんの言ってた通りね」

店員はシンとアルに聞こえない小さな声で言った。

「これ!いくらですか!」

「大金貨3枚よ〜」

「高!!!」

「それはそうよ、これはね世界樹の小枝で作られた杖なのよ」

「世界樹ですか?」

「別名ユグドラシルとも言われているわ、ドラシエル国にあって、精霊達の住処でもあるのよ」

「へぇ〜」

(ファンタジーでよくある世界樹の木か…1度ドラシエル国に行ってみたい…)

店員の話を聞きシンはそう思った。

「そうね…ナガリオを守ってくれた勇敢な人には大金貨1枚で売ってあげる」

「アル!!!!」

シンはアルにすがりつきながら叫んだ。

「お金が足りませんよ」

「あらまぁ、ウフフ」

「なんだって!!」

「諦めてください」

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!」

シンは床に倒れて転がり回る。

「この杖が欲しいぃぃ!」

「諦めなさい!」

「じゃあ冒険者ギルドで依頼を受けよう!しばらくナガリオにいよう!」

「ダメですって!王子が寄り道しすぎですよ!」

「1週間だけだから!」

「えぇい!もう諦めてください!」

ガシッ!

そう言ってアルはシンの襟首を掴んだ。

「それでは失礼します」

「…ええ…」

「ちょっと!このまま引きずるの?!」

ズズズズズ

「僕って王子だよね!!」

シンはアルに引きずられながらそう叫んで屋敷へと帰るのであった。

―――――――――――――――――――

アルはシンを引きずりながら屋敷を通り、ダイニングへと入った。

「アル、なんでシンを引きずってんだ?」

「駄々をこねるものですから」

アルに声をかけたのはヤミだった。

「それよりなぜここに?」

「お前らを待ってたんだよ」

ドサッ

ヤミはそういいながら机に通貨の入った袋を置いた。

「ナガリオを守ったお前らの褒美だ、感謝するぜ」

「ほとんどあなた達が蹴散らしましたよね…」

シンが立ち上がり、そう言った。

「いいから受け取っておけ!」

「はい…ありがたくいただきます」

そう言ってシンは袋の中を見た。

「買えるよ!買える!あの杖が買えるよ!」

シンは袋を天に掲げながら言った。

「はぁ、せっかく諦めさせたのに…」

アルはヤミをジトっとした視線を向ける。

「いいじゃねぇか買ってやれよ」

「はぁ、では明日の昼に武器屋に寄ってから行きましょう」

「ヤふぅっ!」

シンは飛び跳ねて喜んでいた。そこに騎士がダイニングへと入ってきた。

「失礼します!報告に参りました!」

「おぉ、確かここの騎士団長だったな」

「はっ!実は屋敷の前にビビンバ国の公爵様が来ております」

「あん??」

ヤミは騎士団長の話を聞き不機嫌になった。

「その…なんでもシン様の身柄を渡せと…」

バンッ!

その言葉にヤミは足でダイニングの机を真っ二つにし、机の破片がダイニング中へ飛び散った。

「おい…シンはウチの娘と婚約してんだ…将来俺の義息子になるシンを渡せだと?しっかりとした理由があんだろうな?」

ヤミは騎士団長に圧を加えながら言った。

「…それが…シン様が魔笛を使って公爵を暗殺しようとしたと…」

怯えながら騎士団長は言い、ヤミはさらに怒った。

「なんだその馬鹿げた話は?ビビンバ国が盗賊と手を組んでんのは明確だ、だが証拠がねぇから見逃してやろうと思ったが…怒りが収まらねぇな…そいつは今門にいるんだな?」

ヤミは収納魔法で剣を取り出した。

「おおお止め下さい!」

「そうですよ!さすがにいきなり殺すのは!」

騎士団長が止めシンもヤミに言った。

「我慢ならねぇんだよ!ヒメノ国の民を害そうとしたんだ!ビビンバ国にはケジメをつけて貰う!」

剣を携えたヤミが屋敷の門へ向かおうとした、そのとき――

ブォォォォン!!

ドゴォォォン!!

屋敷の外から轟音が響き、ダイニング全体に振動が伝わった。

「何だ!?」

シン達は顔を見合わせ、一斉に屋敷の外へと駆け出した。

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