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10話 また会える


シンは旅の準備の為に街で買い物をしていたが、白馬のベガをテイムした途端に倒れてしまった。

「うぅ」

目を開けると小屋の中だった。

「頭が少し重いな」

シンは上半身を起こし額を押さえながら言った。

「シン様、大丈夫ですか?」

「アル、大丈夫だよ」

「良かったです」

「心配かけたね」

「シン様が倒れた時は本当に驚いたんですよ?」

「ごめんね」

「いえ、ご無事で何よりです」

ハクをテイムした時もクラっとしたんだよな、テイムは魔力が相当必要みたいだな。

「アル、僕が倒れてからどのくらい経ったの?」

「今は夕方ですね、出立は別の日にしますか?」

「いや、明日で大丈夫だよ」

「では今日は休みましょう」

「そうだね」

小窓から見ると、ベガが大人しく草を食べていた。

テイムしたばかりなのに大人しい子だなぁ。

シンがそう思っていると小屋の扉がノックされた。

「シン様!お倒れになったと聞いて心配で!」

その声はシンの婚約者のヨミだった。

「ヨミ?」

「シン様!入っても?!」

「いいよ」

扉から入ってきたヨミは涙目だった。

「ご無事で何よりです」

「心配かけたみたいでごめんね」

「いえ」

しばし沈黙が流れた。

「私はベガにもっと草をあげてきますね」

そう言ってアルは小屋から出て行った。

「明日旅立つのですね」

「うん」

「そうですか」

ヨミは悲しそうな表情になり、またもや沈黙が流れた。

どうするのこの空気!こういう時どうしたらいいか分からないんだけど!

ヨミは何か言いたそうに口を開いては閉じていた。

「...寂しくなります」

ヨミは小さな声で言った、シンはヨミの言葉に笑顔で言った。

「また会いに来るよ!僕は君の婚約者だからね」

「あ、ありがとうございます」

ヨミはシンの言葉に赤くなった。

「手紙も書くよ」

「私も書きます」

「楽しみにしているよ、それと渡したい物があるんだ」

「なんでしょう?」

そう言ってシンは収納袋から唐揚げのレシピを出した。

「これ唐揚げっていう料理のレシピだよ」

「社交界で出された美味しい料理ですよね?」

「そう、あげるよ」

「いいのですか?」

「うん、それとこれはプレゼント」

そう言ってヨミに白色の花の髪飾りを渡した。

「綺麗です」

「でしょ!ヨミに似合うと思ってさ」

「ありがとうございます!」

ヨミは両手で大事そうに髪飾りを包み嬉しそうな表情だった。

「付けてみてよ」

「はい」

そう言ってヨミは髪飾りをつけた。

「どうでしょうか?」

「似合っているよ!」

「シン様、ありがとうございます、大事にしますね」

「うん」

「それでは私はこれで」

そう言ってヨミは小屋から出て行った。

「ふぅ」

知り合いと離れるのは寂しいものだな。

今日はシンとアルは旅の為に眠るのであった。

翌朝小屋の外でシンとアルは見送られていた。

「またいつでも来いよ」

「また修行をつけてやろう」

「お二方お気をつけくださいね」

ヤミ、ハヤテ、ヨミがそう言った。

「ありがとうございます」

「皆様もお元気で」

そう言ってシンとアルは馬車に乗り込みシンは見送りの皆を見る。

前世ではこんな風に見送られた事なんてなかったと思う、気づけばこの世界で守りたいものが増えたな。

そして、二人はヒメノ国からでたのであった。

...

..

.

【翌日・シュトラス国王城】

シンとアルがヒメノ国を出立した翌日、シュトラス国の城のダイニングにてウィル、ルシア、アリス、リア、ハクが集まっていた。

「今朝冒険者ギルドから手紙が来たよ」

ウィルはそう言って手紙を見せた。

「もしかしてシンちゃんから!?」

ルシアは喜びながら席を立って言った。

「ルシア落ち着いて」

「落ち着いて居られないわよ!」

「はぁ、どうやらシンとアルは修行が終わって帰って来るそうだ」

「兄様はいつ頃着くの?」

アリスが喜びの表情で言った。

「ヤミの手紙では昨日ヒメノ国を出たみたいだ、馬車で帰って来るらしいから2週間後だろ」

「楽しみね」

ウィルの言葉にリアが言った。

「ウォン!」

ハクは尻尾を振りながらシンの帰りを待ちわびているようだ。

「あ、でもダンジョンによるらしいと書いてあるな」

「ちょっと!修行が終わったなら真っ直ぐ帰ってこないと!」

ルシアが怒ってウィルに言った。

「もう向かってるみたいだよ」

「いいわ!私が迎えに行ってくる!」

「ダメだよ」

「なんでよ!」

「王妃としての責務が君には沢山あるのだから」

「紅のダンジョンでしょ?里帰りついでってことで」

「心配しすぎだ!」

「シンちゃんとアルちゃんを心配して何が悪いのよ!」

「何かあったらエルフ国に助けを求めるだろ」

「ぐぬぅ」

ウィルの言葉に何も言い返せないルシア。

「シン達なら大丈夫だろう」

ウィルは窓から見える空を見ながら言った。

..

.

シンとアルはベガが引く馬車に乗って紅の森を抜けていた。

「明日には紅のダンジョンに着くでしょう」

「楽しみだな〜」

シンは馬車の中でワクワクしていた。

「シン様そろそろ休憩しましょう」

「ベガを休ませないとね〜」

そう言ってシン達は開けた場所で休むことにした、シンは地面に寝そべって青空を見た。

異世界でも空は同じく青いんだな〜。

「むぐっ!」

シンが空を見ているとベガがシンの腹を踏んだ。

「ベガ何するんだよ!」

「ブルル」

ベガは鳴いて自分の体を見る。

「ブラシをかけて欲しいの?」

「ヒーン」

「いいけど踏まなくて良かったよね?」

「ブルル」

「気にするなって?わかったよ」

俺は収納袋からブラシを取り出しベガをブラッシングする。

「気持ちいいか?」

「ヒーン!」

「良かった良かった」

シンがベガをブラッシングしていると森の奥から足音が聞こえてくる。

「魔獣かな?」

「この道を通るみたいですね」

「冒険者かな?」

「馬車が邪魔になるな」

「収納袋に入れましょう」

「え?入るの?」

「シン様が倒れた時に試しましたよ」

「アルってどこか抜けてない?」

「それより入れますよ」

「うん」

シンはアルに言われるまま馬車に触れ、収納袋へと収納した、そして道を馬車と5人の人が進んできてシン達の前で止まった。

「おいおい、こんな所にガキがいるぞ」

「馬もいるぜ!」

ガラの悪い奴らがシン達に向かって言いながら近づいてくる。

「盗賊みたいだね」

「人攫いですか」

シンとアルは剣を抜きながら言った。

「ガキのクセに俺らとやろってのか?」

「冒険者さんですか?」

盗賊らしい男にシンは聞いた。

「フッ、俺たちは泣く子も黙る黒猫の盗賊団だ!」

「分かったら大人しくしときな!」

シンとアルはそう言われ目を合わせお互いに頷いた。

「嫌です」

シンが盗賊達に向かって言った、それを聞いた盗賊達は武器を構えた。

「だったら死にな!」

盗賊の1人がアルに斬りかかった。

「パリイ!」

アルがスキルを発動して盗賊の剣を飛ばした。

「なっ!」

「ハッ!」

ジュシュッ!

アルは剣を振り下ろし盗賊を倒した。

「赤髪のガキには気をつけろ!」

「赤髪のガキからやるぞ!」

盗賊達の言葉にシンは反応し魔法を唱えた。

「アイスボール!」

シンの手から球体の冷気を纏ったボールができ、盗賊の1人の片足に当たり右足が凍った。

「足がァ!」

盗賊の足は完全に固まった、その隙にシンがトドメを刺した。

「なんだこいつら!」

「ガキがぁ!!」

盗賊の残り3人が一斉にシンへと斬りかかった。

「おらぁ!」

シンは振り下ろされた剣を避け盗賊の腹を切って倒した。

「なめんなぁぁー!」

「殺してやる!」

シンは2人の盗賊の剣を受け止め、その隙にアルが背後を取り倒した。

「ありがとう、アル!」

「無事で何よりです」

「これで終わりかな?」

「だと思いますが」

ガンッ!

っと馬車から物音がした。

「まだいるのか?」

「警戒して行きましょう」

シンとアルは警戒しながら馬車に近づく。

それがシン達の運命を大きく変える出会いになるとは、この時まだ誰も知らなかった。


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