第14話 — 夜になって、ハルミは魂を落としました
ある夜、死ぬほど働き詰めだった晴海は、目の前に箱を見つけた。
おもちゃがぎっしり詰まった箱
服
普段は絶対に買わないような高価な品々
町の人々の優しさが溢れる箱
そしてもちろん、数日後には「一大イベント」が待っているという約束も。自分の抱えている問題の重大さに、晴海は泣き崩れた。
贈り物は彼女の心を満たし、
いつの間にか、そこは家よりも居心地の良い場所になっていた。
それは「疲れ果てた夜」だった。
そして、晴海の混沌とした人生における、ただの日常だった。
家中が、濡れた木と石鹸の匂いに包まれていた。
三人は完全に限界だった。
ハルミは畳に倒れ込む。
「……私、死ぬ……」
「死なないよ」
タケルが冷静に言う。
「数時間、動けなくなるだけ」
「希望をありがとう……」
メイが腕に寄り添う。
「ハルおばちゃん、強い」
「ううん……ただの頑固……」
ハルミは目を閉じた。
ほんの少しだけ――
コンコンコン
「えっ!?」
猫のように飛び起きた。
ドアを開けると――
人。
たくさんの人。
箱を抱えた近所の人たち。
先頭には、優しく微笑むサクラ。
「ハルミちゃん。
頑張ってるみたいね」
汗だく、ボサボサ、片足だけ靴下のハルミ。
「……あ、こんにちは」
「差し入れよ!子どもたちにも、あなたにも」
そこには――
暖かい服、学用品、おもちゃ、本、
新しい布団、鍋、枕、
そして巨大な食料セット。
ハルミは、泣いた。
「どうして……?」
「あなたが、頑張ってるからよ」
「お礼なんて――」
「じゃあ町のみんなにご飯作って!」
「土曜で!!」
「ハルミ!!町に七千人いる!!」
「今から玉ねぎ切る!!!」
子どもたちは輝いていた。
混乱の中で、ハルミは気づく。
疲れている。
腕は痛い。
家は物でいっぱい。
約束は無謀。
それでも――幸せだった。
三日。
たった三日で、
彼女の心は引っ越していた。
夜。
箱を片付け終えた家は、
静かで、でも期待に満ちていた。
「……今日、開ける?」
メイの目が輝く。
タケルは無言で近づく。
「じゃあ――
非クリスマスだけどクリスマスみたいな
プレゼント開封会、開始!」
笑い、遊び、散らかし、
気づけば深夜。
誰も布団に行かなかった。
行きたくなかった。
畳の上。
箱とおもちゃと笑いに囲まれて――
ハルミは先に眠った。
メイは抱きついたまま。
タケルはそっと毛布をかける。
「……おやすみ」
その声は、誰にも届かなかった。
でも家は、もう空っぽじゃなかった。
――家族が、そこにあった。




