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聖女学校に行く

1話更新します。

 「〜♪」


 新品の制服を着てエプロンを着けたノルンが鼻歌を歌いながら、手馴れた手付きで二人分のお弁当と朝食を作っていきます。

 コンロの中心部で、調理用の火を灯している魔石に火を止める為に魔石の効果をオン・オフする魔術刻印の付けられた棒を当て、火を消してからノルンはお弁当箱に出来上がったおかずを詰めていきます。


 「これでよし……っと」


 この世界は魔石と呼ばれる物を使い人々が生活しています。

 光を放つ魔石、冷気を出す魔石、火を吹き出す魔石、水を綺麗に浄水する魔石と言った様々な物があり、魔石に込められた魔術を当てる事で起動と停止を行う魔術刻印の棒とセットで売られています。


 子供でも簡単に使える魔石は、灯りに使ったり、料理やお風呂等に使ったり、食品を冷蔵したりとこの世界での必需品です。

 都市部や大きな街なら、各家庭に上下水道も完備してたりします。

 この世界も人が生きていく上で、快適に暮らせるように色々と改善されているんですよ。


 これも人間、エルフ、ドワーフ、魔族が手を取り合うようになった結果です。

 ノエル達が生きた時代は種族間の仲が良くなくて、争いが多く過去には戦争も多発していました。

 邪神ドルディバイアと言う共通の脅威の出現により、それぞれの種族はようやく手を取り合うようになったのです。

 もちろん、そこに至るまでは当時の勇者ライオネル様と、聖女ノエルの働きも大きかったのですが。


 そんな過去を乗り越えた今では、各種族がそれぞれの得意分野で、異種族の苦手分野を補い合う理想的な関係になっています。

 人間は色々な物を考えて作り出し、エルフは様々な薬や衣料品を作り出し、ドワーフは武器や日用品や機械を作り出し、魔族は様々な魔石を作り出す。

 そんな持ちつ持たれつの関係です。


 おっと、話が逸れましたね。

 ノルンの方に話を戻しましょう。

 ノルンはお弁当を包み終わると、2階にあるラインハルト様の寝室に向かいます。

 部屋のドアをノックして、返事がない事を確認してから、ノルンは部屋の中に入っていきます。


 「だーりん♡朝だよ。早く起きて♡」


 ノルンがベッドで寝ているラインハルト様の肩を揺すると、ラインハルト様が目を覚ましました。


 「ふああ……。おはよう、ノルン」

 「おはよ♡朝ごはん出来てるから、冷めない内に下りてきてね」

 「うん」


 寝ぼけ眼のラインハルト様にそう言って、ノルンは1階に下りると朝食をテーブルの上に並べていきます。

 コーヒーを淹れ終わると、顔を洗って着替えたラインハルト様がやってきました。


 「お待たせ……?ノルン、その制服は?」

 「今日から通う新しい学校の制服だよ。どうかな?」


 ノルンはコーヒーの注がれたマグカップをテーブルに置き、エプロンを外して椅子の背もたれにかけると、少し下がって一回転してみせました。

 一回転した事でノルンのスカートがふわりと浮き上がり、ラインハルト様の視線が一瞬そちらに釘付けになりました。

 男性の悲しい性質サガですね。


 「良く似合ってるよ。かわいい」

 「ホント?えへへ……。だーりんに褒められちゃった♡」


 好きな人にかわいいと褒められ、ノルンは嬉しそうに笑います。


 「しかし、あれだ。この世界にもそういう服ってあるんだ。知らなかった」

 「どういう意味?」

 「前世で俺、役者やってたって言ったよね」

 「うん」

 「その時にね、異世界物の乙女ゲームのキャラの声を当てる仕事があってさ、そのゲームに出てきたヒロインの着てた制服みたいだなって」

 「乙女ゲームってなあに?」


 前世が5才の幼女だったノルンには意味がわからないみたいです。

 私もノルンが前世で関わる事がなかった、異世界の娯楽関係には疎いのですが。


 「あー……。なんて説明したらいいかな…。今のノルン位の年の女の子達や大人の女性向けの恋愛物の紙芝居みたいなやつって言えばいいかな。そういうの」

 「そういうのあるんだ。ぼく知らなかったよ」

 「まあ前世のノルンの年の子供向けじゃないからね」

 「そうなんだ。だーりんはいろんなお仕事してたんだねえ」


 そんな会話をしながら、二人は朝食を済ませるのでした。


 「行ってきます」

 「行ってらっしゃい。お仕事がんばってね、だーりん」

 「ノルンも学校生活、楽しんでおいで」

 「うんっ」


 二人はそう言って家の前で別れました。

 行き先がお互い逆方向なのです。


 「どんな人達がいるんだろう?友達沢山出来るかなぁ……?」


 胸に期待を膨らませて、ノルンは学校への道を歩いて行きます。

 途中何人もの知り合いに会い、朝の挨拶をしながら学校へ向かいます。

 20分位歩き、今日からノルンが通う学校へと到着しました。

 周囲を見てみると、人間、エルフ、ドワーフ、魔族の女の子達がノルンと同じ制服を着て、校舎へと歩いていきます。


 「えっと、確かまず最初に玄関口に貼られてるクラス割を確認するんだっけ……」


 ノルンはクラス割を確認する為に校舎への玄関口歩いていきます。


 『リライザ、なんか、やたら視線を感じない?』


 こっそりと私とノルン限定のテレパシー能力でノルンが話しかけてきます。

 周囲の女の子達が歩いているノルンを見て、みんな振り返ってます。


 『ノルンは黙って大人しくしてさえいれば、見た目は儚げで可憐な美少女ですからね。それに世界を救った聖女ですから、顔を知ってる人も多いでしょうし』

 『黙って大人しくってなによー!!それじゃぼくがまるで落ち着きのないじゃじゃ馬みたいじゃないの!!』

 『えっ?まさか自覚がないんですか?』

 『むー!!そういう事言うなら、パスタ捏ねる時に麺棒代わりにするよ!!』

 『仮にも神々の作った神器を麺棒にしないでください。冗談です』

 『リライザ最近、どんどん人間くさくなってきたよね……』

 『ノルンと四六時中一緒だからでしょうね』


 本当に一緒にいて退屈しません。

 そんなやりとりをしていると、凛とした良く通る声で、背後から誰かが話しかけてきました。


 「これは驚いたぞ。まさかこんな所で聖女殿に出会うとは」


 突然背後から話しかけられ、ノルンが振り向いたその先には、黒いツノが左右側頭部から生えた少女が立っていました。


 「……シルフィアーナ様」


 その少女は、かつて冒険の旅でノルンが出会った、同い年の魔族のお姫様でした。

次回もなるべく早めに投下したいと思います。

この世界は魔法で動く機械があるなど、ありふれたファンタジー異世界です。


電気はありませんが、様々な魔石を使用することで冷蔵庫やガスコンロや電灯や扇風機や冷房みたいな文明の利器が色々作られてます。

大気中に漂う魔素マナを取り込み魔石本体が寿命で割れるまで使える優れものです。

魔石は一般人でも普通に買えて誰でも使えます。

スイッチの役割を持つ魔術刻印の付いた棒を当てる事でオン・オフを切り替えます。


乗り物は飛行船以外にも蒸気機関車のある大陸もあります。

個人用の自動車の類はまだ作られていません。

他にない物はテレビやマンガのような娯楽位です。

小説や絵本や紙芝居はあります。


魔族はツノの生えた人種、尻尾や翼がある人種、肌の青い人種がいます。

すべて兼ね備えた人もいれば、人間とほとんど変わらない人もいます。

ライの祖母はほとんど人間と変わらない人種です。

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