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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
52/71

52、賊と貴族と義賊 15

 着いた場所は何もない通路だった。


「うん、話には聞いてたが、こりゃ確かに道に迷いそうだ」


 誰もいない通路で、誰も聞いてないがグリーンはそんなことをぼやいた。

 クリーム色の廊下が続き、とりあえず曲がり角が見えたのでそこまで歩くことにした。

 のんびり歩きながら思い出す。


 さて、俺がやるべきことといえば……


 今回、グリーンが任されているのは人質関連だ。ある意味、今回も、だが。

 人質というより、今回売りに出される人達のことだが、その人達を無事に救出する事が目的となる。

 ただし、救出といってもたいしたことは出来ない。

 出来ることは、捕らわれている場所を探し出し、無事にそこから出すことだけだ。

 それ以外のことは今回の目的に含まれていない。

 むしろ、それ以外はやってはいけないとすら言われている。


 まず、捕らわれている場所を探す。

 ジルは正確な場所は把握することは出来なかったらしい。ある場所に捕らえているという情報だけで、その場所には足を運ばなかったという。

 その為、グリーンが送られた場所はその付近というだけで、詳しい情報はない。

 しかもこの建物は特殊で、迷路のようだという。そこから探し出すというのだからだいぶ骨が折れるだろう。

 もちろん、誰かに見つかったりしたらアウトだ。

 騒ぎを起こしてもいけない。誰にも見つからずに場所を探し出す。


 うーん、そういう隠密行動は俺の分野じゃないんだけどなぁ。


 だが、グリーン以外に穏便に物事を運べる奴はいるのか、と言われると、今回ばかりはいないということになった。

 まず、レイナは拒否した。他にやることがある、と。

 ウェルバとネッタはそもそも此方の作戦に加担すべき相手ではない。最初から含まれていない。

 ネーナにそんなことはさせられないだろう。まずそういった知識はないし、探索能力もなさそうだ。

 シオンも単独行動を拒否した。理由を聞きたかったがなんとなく怖かったので聞かなかった。うん、そういうこともある。

 グリーンは拒否する理由もないので、こちらの担当となったわけだ。


 場所が見つかったら、次に無事にそこから出す。

 これは直に実行することは出来ない。

 実はタイミングを見て、救出をしなくてはいけないのだ。

 それまでは周りの不穏な要素を取り払うことに専念することになっている。

 部屋に罠がないか。見張りはいないか。経路に邪魔な障害はないか。と、そんなところだろうか。

 それくらいだ。たいしたことはしない。しないのだが……


 穏便に、ねぇ……騒ぎを起こさないでってことは、誰かいたらとりあえず片っ端から気絶させればいいのか。


 騒ぎを起こした時点でグリーンは任務失敗となる。

 慎重にことを運ばなくてはならない。……が、グリーンの足取りは軽い。

 それはもうグリーンの脳内ではとりあえず全員気絶させよう、で完結しているからである。


 そんなわけでひょいひょいと誰もいない通路を歩いては曲がり、階段があれば降りたり上ったり、緩くカーブしてるところがあって……

 ということを繰り返しているうちに、グリーンは屋敷内を把握することを諦めた。

 帰り道? もうそこはシオンの魔道具に頼ることにする。自力で帰れる自信はない。

 何時まで経っても通路に同じ扉。ある意味恐ろしい光景だ。

 これはもうどこかの部屋に入らない限り他の風景は拝めそうにない。そうとなれば、片っ端から扉を開けていこう。

 罠とか、誰かに見つかるとか、そういう危機感はもう既にない。なぜならこれだけ自由にうろついていて何も起こらない。起こらなさすぎる。

 いっそ罠とかがあったほうがまだすっきりするくらいだ。

 そんなわけでグリーンはとりあえず一番近くにあった扉へと手を伸ばした。




「あらあら、そこは駄目よぉ。別の場所に移転させられちゃうわ」




 後ろから掛かった声にグリーンはすぐさま飛び退いた。

 そして確認すれば、先程までは誰もいなかった通路に佇む人影がひとつ。

 くすくすと小さな声だが静かな廊下にはよく響く。


「嫌だわ。驚かせちゃったかしら。でも罠だと分かっていて教えないなんて、駄目よねぇ」


 フードのついた白いローブ。赤い口紅と胸の膨らみが女性であることを表している。

 ジルの言っていた三人の護衛だろうとグリーンには予測がついた。

 先程まで緩みきっていた時とは違い、対峙するように向かい合い近すぎず、遠すぎずの場所を保つ。


「そんなに警戒しなくてもいいのに」

「いやいや、警戒するだろう普通」


 気を引き締めたグリーンに引き換え、現れた女性はまるで知り合いかのように気軽に話しかけてくる。そこに張り詰めた空気はない。

 ないけれども、そこがまた気を緩められない理由でもある。

 女性は赤い口元で綺麗な半月を描きながら笑う。


「本当に罠があるから声を掛けただけなのに。折角この場所に来たのにわざわざ別のところに行きたくはないでしょう?」

「まぁ……そうだけど」

「でしょう? せっかく私も遊び相手見つけたんだもの。このまま一緒に遊んでくれないと、つまらないわ」


 笑いながらいう女性の言葉に、グリーンは身構える。少しだけ相手を睨みつけるが、それでもその女性は笑ったままだ。


「やだやだ、殴り合いとかじゃないわよ。本当にただの遊び相手。私の暇つぶしに付き合ってくれればいいだけだから」

「いや、遠慮しときます」

「もう! 若い子が遠慮しちゃ駄目よ!」

「今使うような言葉じゃねぇよな!?」

「謙虚なのはいいことよ。でも謙虚すぎるのもよくないわぁ。もらえるものはもらっときなさい?」

「そういう会話でもなかったよな!? なんで親戚同士みたいな会話になってんの!?」


「私はアクミューワっていうの。気軽にアクちゃんって呼んでくれてもいいのよ?」


「呼ばねーし、会話無視されてるし! もう少し場の雰囲気読んでくれねぇかな!?」


 俺、ここまでツッコミキャラだったかな!? と思わず心の中で叫んでしまうグリーンだったが、視線と身構えた形は決して崩さない。

 会話はだいぶ緩いが、警戒心は変わらない。それはアクミューワと名乗った女性も同じだった。

 彼女は笑う。


「ずっと退屈だったのよ。喋れないし、遊べないし、私の可愛い子ペット達も運動させてあげられないし。だからちょっと遊んでくれるだけでいいの」


 両手を肩まで上げて左右に軽く振る仕草をする。

 ふと一気に空気が生暖かくなる。


 彼女の後ろの何もなかった空間から別の生き物が現れた。

 一匹ではない。次々と続いて出てくる。

 十匹近く、いや、それ以上はいるであろう、四足の獣のような生き物。一番小さくて彼女の腰の高さのものから背丈以上のでかさの奴もいる。

 見た目は虎に近い。だが、どう見てもそれよりも毒々しい色合いと六つの目に牙と角がついていることから普通の動物たちではない事が窺える。


猛毒突虎ヴェレティグっていう魔獣よ。私の可愛いペットなんだけど、最近運動させてないから色々溜まっちゃってるの」


 可愛いとはなんだっただろうか。どちらかといえばグロイ。禍々しいというんじゃないだろうか。

 猛毒突虎ヴェレティグは全身が毒に侵されている魔獣だ。体液は固体物を溶かすほどの猛毒だと言われている。獰猛であり肉をこよなく愛しているので、とりあえず目の前で動いているものは何でも腹に収めてしまう。知能は低いがその厄介な体質と獰猛さで現れたら真っ先に討伐対象となる魔獣として知れ渡っている。


 グリーンは即決断する。




 うん、無理。




 限りなく相性が悪い。一人で相手するようなものではない。

 全身猛毒って、触れたらアウトな相手だ。

 思い出してみよう。

 グリーンの戦闘スタイルは拳だ。殴って倒す。

 この場合、殴って倒れるのはグリーンだ。自ら毒に中てられに行ってどうする。

 もう一度言おう。


 触らずに倒すとか、無理。


 グリーンは迷うことなくシオンから渡された魔道具を手にし、起動させる。

 例の緊急用の魔道具だ。

 後で小言を言われるかもしれないが、それよりも自分の任務失敗のほうが重要だ。

 先程も言ったが、騒ぎは起こしてはいけない。

 だが、目の前にいるのは獰猛と言われる魔獣であり、気絶させてどうこうとか通じる相手ではない。

 しかも謎の護衛もいる。

 魔獣を呼び出したところから、女性の護衛は「魔獣使い」だと判断していいだろう。

 魔獣使いは、その名の通り魔獣を従え扱う事が出来る。

 契約をすることで魔獣を呼び出す事が可能。つまり、魔獣は倒しても補充される可能性がある。


 どう考えても、穏便にすませられる気はしない。

 扉の一つ、二つは吹っ飛んでいくくらいは覚悟しないと無理だろう。最悪、壁破壊だろうか。

 何かが破壊された時点で任務失敗だ。

 なら、潔く救援を頼んだほうがいいに決まっている。

 ついでに武器とか持ってきてくれるとありがたい。一番いいのがシオン辺りが来てくれるのが理想だが無理だろう。


 誰かが来るまでは、どうやって凌ごうかな


 物を破壊せず、魔獣に触れず、謎の護衛の動向を気にしつつ、時間稼ぎをしなくてはいけない。

 少しだけ考えて、グリーンはひとつ頷く。


「遊ぶかどうかは別として、そういえば自己紹介まだだったな。俺はグリーンって言うんだ。見ての通りエルフだけど、戦士だ」

「あら、丁寧ね。エルフで戦士なんて変わってるわ! 私は見ての通り、魔獣使いよ。可愛い子をペットにするのが趣味なの」

「……可愛い子……? え、可愛い?」

「可愛いわよ! このとろっとした毛並みに濁った瞳とかいいじゃなーい!」

「可愛いの基準おかしくねーかな!? お姉さんの可愛いってなに!?」


 とりあえず、無駄に会話をしてくる相手に合わせてグリーンもどうでもいい会話をして時間を引き伸ばすことにした。

 若干、精神面が疲れそうな会話になりそうだが、対処法が出来るまでの間だと思ってあれやこれと話を投げかけて過ごすことにする。




 というか、会話成り立つのか、これ……




最近、書きたい時に書くというだらっとした傾向にあるので、話を気に入って頂けたり、続きが気になる!とか思って頂けたら、ブクマや評価をポチッとして頂けるととても助かります。

私も気にして続きを書いていけるようにはしていきたいです。

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