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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
25/71

25、宗教学会と旅巫子 10

投稿後に忘れていた部分を思い出し、後程最後の部分に少し話を追加しました。

 甲高い音が響いた後、近くで何かが破壊される音が響く。

 するとユアを囲っていた結界で一番厳重だった結界が壊れた。

 どうやら近くに結界を維持する魔道具があったようだ。それがどういう方法かはわからないが破壊した。

 一歩二歩とユアに近づく人物。手には淡く光る水晶を乗せて。


「それ以上は女神に仕える者として許すことは出来ません」


 その声と同時に手に持つ水晶がより輝きだす。薄い結界に包まれたユアをしっかり見つめてさらに一歩。

 ユミは水晶を掲げた。



魔術転換回路グリモワル・リライト



 告げられた言葉と同時に水晶の光が消滅する。

 そしてその代わりといわんばかりにユアの周りに構築されていた召喚魔法が先程までの水晶と同じ光を放ち始めた。


「な、に!?」


 重要な結界が壊れたことで若干焦っていたユアが今度は召喚魔法に別の動きを加えられて、思わずそんな言葉が口をついた。

 あと少しで完成となっていた召喚魔法の構築が止まる。

 それどころか次々と形を変えて別の姿へと変わっていっている。


魔術転換回路グリモワル・リライトとは術式書き換えの魔法です。ある一定層しか知らない魔法ですのできっと見るのは初めてでしょう」

「ど、どういうことだ! この召喚魔法は強力な魔法だ! いくらそんな魔法が存在するとはいえ簡単に介入など許すはずが……!」

「残念ながら出来るのです。なぜなら……」


「魔力そのものに介入する魔法であり、「女神」の魔力を使う魔法だからです」


 魔法とは本来自分の中にある魔力を使って発動するもの。

 他から魔力を借りて魔法を使うケースももちろんある。

 そして今回は「女神」の魔力を使ってとユミは言った。


 つまり魔術転換回路グリモワル・リライトが使える一定層。

 女神に仕える者、女神の塔に所属する者が使える魔法だということだ。


 こうしている間に召喚魔法は次々と書き換えられていく。その速さは先程の召喚魔法を構築するよりも速く。

 あっという間に魔法の書き換えは終了した。

 新たに出来上がった魔法陣が光り輝く。


「なにを……!」


 中心にいたユアがあまりの眩しさに手で顔を覆うと同時に光は大きく広がり、そして弾け飛ぶように消える。

 すると騎士団が覆っていた結界を残しそれ以外の結界は全て消滅した。

 信者達が慌ててもう一度結界をはろうとするがどうやら上手くいかないようで結界をはることが出来ないでいる。

 しかし、慌てているのはそれだけではないようだ。


「そ、そんな魔法が……!」

「魔力が集まらない!」

「魔法が使えないぞ!?」


 そんな信者達の声を聞いてユアも慌てて別の魔法を使おうとするが、他の者と同様に発動することはなかった。

 動揺しつつもそんな状態にしたであろう人物、ユミへと顔を向けて睨んだ。


「貴様! 何をした!?」

「これは此方の台詞ではありませんか? 貴方は何をしようとしたんですか。女神の結界を揺るがすということがどういうことか知らないわけがないでしょう」

「「女神の結界」など、ただの邪魔な結界に過ぎん。我らの崇高な行いの邪魔をせんでほしいものだな」


 ユアに対して応えたユミに、さらに横から別の声がかかる。

 先程までバルハードに対抗していたファーマだ。傷は見当たらないので激しい交戦はしていないようだ。

 ファーマの言葉にユミの片眉が僅かに上がる。

 だがそんなことは気にせずにファーマとユアは言葉を続けた。


「結界などと所詮はただの隔離。そうすることで我々を管理しようとしているだけではないか」

「女神などと結局は力での支配だろうが! 国を上から操り、反発するものは聖騎士で粛清とはな! 上から制圧しておいて信仰しろとは随分厚かましい神もいたものだ」

「結界がなければもっと外界とも交流が広がる。そういった視野を狭くしているのもおかしいというものであろう」

「女神の塔とて何を行っているのはわからん組織だろう! 都合の良いときだけでしゃばりやがって」


 ここぞとばかりに言いまくる反女神派、新大地聖教の面々。

 ちなみにこの言葉に信者達も大きく頷いている。

 だが、それ以外の者達は若干顔を青褪めていることに気づいてはいない。

 そもそもここがどこだか忘れてはいないだろうか。


 ここはレインニジアの神殿。女神信教が管理する建物であり、宗教学会は女神信教が主催の催し物。


 まぁつまり。新大地聖教の者達にとって敵の本拠地……とまではいかないが、周りが敵だからけの中にいることになるのだが。

 熱くなった信者たちの口は止まらない。

 その様子をティアナは困ったように見つめている。


「困りますわ。あまりそのようなことを口に出してしまっては……」

「何を今更! それにお前が困ったところでどうということはない!」

「ええ、ええ。そうですね。私が困ることには問題ありません。しかし、それ以外の部分でとても困るのです」

「はっ! なにが……」


「いい加減身の程というものを弁えなさい!!!!」


 ガッ、ーーーンッッッ

 おっと、何か硬いものがやわらかいものにぶつかった音がしたぞ。

 しかも中々に鈍い音が反響する。

 その後にカランコロンと何かが転がる音も続く。


 メインの場にひとりの人間が地に伏していた。


 さっきの硬いものとは水晶で。やわらかいものは人体だ。

 よし、これで何が起こったか想像できるだろう。


 ユミが手持ちの水晶を全力投球して目の前の新大地信教の信者にぶつけたのだ。


 しかもどうやら水晶に強化をつけている模様。

 投げつけた水晶は宙を浮いて再びユミの手の中へと戻ってきていた。



「なんたる不敬! 女神様を愚弄するとは何様です! ただの痴れ者ですね! ああ、本当に口汚い上に浅はかな行動しか取れないとは愚か極まりない! 女神様の所業を何一つわかっていない者が女神様のことを語ろうなど片腹いたいですね! まさに処罰ものでしょう、ええ!! いいでしょうそこまでお望みでしたら是非とも私がこの手で女神様に代わって処罰することにいたしましょう!!」



 ゴスッッ、と最後まで台詞を言い終わる前に鈍い音が再び響く。

 再びメインの場にひとり地に伏していた。

 あの、普通、台詞の途中で攻撃するって、卑怯って、言われるんじゃ……


「貴方がたの魔力は先程の書き換え魔法で封じました。本来ならばもう少し別の罰を与えるようなものに書き換えようかとも思いましたが、一応言い分も聞こうかと思いまして。ですがその必要はありませんでしたね。本当に不要でした。ええ、結構なことです。ですので今から罰を、私が、与えましょう!」


 そういうと再び帰って来た水晶が今度はユミの手の中で光りだす。

 と思ったら、また剛速球で投げつけられた!

 避け切れなかった信者がひとりそのまま平伏す!

 一度伏したものは起き上がる気配がない。完全に気を失っている模様。


「さっきの私の時は起き上がってきたのに、水晶にやられて起き上がれないってどういうこと!?」

「水晶に強化がかかっているせいですね。あと気合の問題だと思います」

「気合なの!?」


 巫子に気合ってどうなの!?

 思わずそんなツッコミが入るが、それに応える者はいない。

 そうしている間も次々とユミが信者を倒していく。物理で。

 見た目は本当に水晶を投げつけているだけなのだ。

 しかし、なぜかそれが必ず当たる。避けようとしているらしいが当たっている。

 さらに狙いは急所らしく、見事に剛速球の水晶が一発で信者達を沈めていった。

 先程まで色々吠えていたユアとファーマも応戦しようとしている。

 だが、それも一瞬だった。


 ゴッッッ


「うわ……」

「今、先程よりも大きな鈍い音がしましたね……」

「まって、生きてる? あれ、生きてるの??」


 魔法が使えない信者達になすすべもなく、ユアとファーマも見事に一撃で沈んでいった。

 しかもかなり容赦のない一撃だったらしく、攻撃を受けたさいにかなり吹っ飛んでいった上にピクリとも動かない。

 気づけばメインの場に新大地聖教の信者達は誰一人も立ってはいなかった。

 水晶を手元に戻してユミは大きく息を吸ってゆっくりと吐く。


「女神様のお導きがあらんことを」


 いや、多分別の導きが来そうな状態なんですが……

 死屍累々とした化したメインの場。思わずしん、と静寂が広がる。

 だがすぐに回復した女神信教の方々が掃除……もとい、倒れてる方々の介抱をして退場させたことによりホール内が一気にざわめきが戻ってきた。

 というか何故か盛り上がった。観客達の熱気は一気に上がっていて、そのまま宗教学会は終幕となっていた。


「……ところで。今回、私とかいる必要なかったんじゃない……?」


 後片付けをしつつ、レイナがそんなことをポツリと呟いていて、その横でバルハードが僅かに口の端をピクリと引きつらせていた。






「おー、今回もお疲れだったみたいだなー。ご苦労さん」


 お気楽な声で騎士団達にそう声をかけてきたのは赤髪の男性。

 男性の後ろには今回最も騒動を起こした新大地聖教の者達が取り押さえられている。

 赤髪の男性の前にはアベルがいて、その男性の声に応えていた。


「まぁ今回はそんなに被害が酷くなくて助かったよ。それよりもすまないな。休暇中だったんだろう?」

「んーいや、どうせレインニジアの出店目当てで来てたし、ついでだから気にすんな」

「ついでで引き取ってもらうのもどうかと思うが。流石に今回の件はウチだけで扱うわけにはいかなくてな」

「あー……召喚魔法使ったんだって? そりゃこっちの管轄にもなるよなー」

「丁度ブレイダーが来ていて助かったよ。他の聖騎士の派遣も必要だろう?」

「うん、まぁ今日は仲間と一緒に来てたからそこは大丈夫だと思う。聖騎士が数人いればどうにかなるさ」


 ブレイダーと呼ばれた赤髪の男性はにかっと笑う。

 赤髪の短髪に空のように青い瞳、身長は高く竜人であるアベルよりも少し高い。好青年という顔つきをしている。

 年齢もアベルと同じくらいに見える。服装は一般人の着る様な服だが、本来ならば女神の塔に属する聖騎士だ。

 聖騎士は主に粛清やら国の制圧やらに携わるのだが、それ以外の仕事もする。あまり知られてはいないが。

 今回は召喚魔法を使ったことで女神の塔が新大地聖教の信者の引渡しが決まった。

 いや、実際にはまだ決まってはいないのだが、半日も経たずに城にそういった通達は来るはずだ。

 それを引き取りに来るのが聖騎士達なのだ。


 今回は偶然、レインニジアに聖騎士のブレイダーがいたことでさっさとやり取りが決まった。

 騎士団が勝手に判断して良いのか、とか休暇中の聖騎士がそんなことしていいのか、とか色々思うところはあるだろうが、案外これでどうにかなってしまうのだ。これが。

 なぜなら女神の塔はすでに今回のことを把握しているからだ。

 確認はしていない。だが、女神の塔とは「そういう所」なのだ。


「後で聖女がくると思うから確認しといてくれよ」

「ああ、わかった。国王陛下にも既に連絡はしてある」

「助かるー。そうだ、ついでにちょっと神殿に顔だしていくよ。聖騎士が何も言わずに立ち去るわけにもいかないし」

「そうだな。ではティアナ様に声をかけてこよう」

「うん、頼む」


 そんな会話してるとブレイダーが何かに気づいて大きく手を振る。

 丁度アベルの後ろであった為、アベルも振り向けばレイナがこちらに歩いてくるところだった。


「レイナちゃん! 久しぶりー!」

「本当にいたのね、ブレイダー……久しぶり。元気だった?」

「うん。やっぱりレインニジアの食べ物は美味しいよねー。仲間にも好評だった!」

「あれ? 今回はひとりじゃないんだ?」

「うん、一緒にきたかった子がいたから今日はその子と一緒なんだ」


 どこか照れた様にでも嬉しそうにブレイダーは笑う。

 その笑顔を見て、レイナはおや? と思い、そして気づいた。


 なるほど、ブレイダーはデートのつもりでここに来たな。


 確かにレインニジアは華やかだ。デートコースならばいくらでもある。

 グルメツアー好きなブレイダーとしても美味しいものを好きな子と食べたりもしたいのだろう。

 まぁ、タイミングは悪かったようだが。

 それにしても……


「ブレイダーですら恋愛にうつつを抜かせるのに、なんで黒星団長だとああも上手くいかないんだ……」

「レイナちゃん、声に出てるよ。多分それ、口にしちゃいけないやつ」

「おっと失礼」


 コホン、と咳をしてレイナは口を噤む。

 それを見てブレイダーは苦笑する。自分がデートしに来たことがバレたこと、多分バルハードが今回も大変なんだろうなーって思ったことも全部のせての苦笑だ。


「一緒に来た子も聖騎士?」

「そうだよ。なかなか強い子だからその内レイナちゃんも会うことあると思うよ」

「そう。楽しみにしてるわ」

「きっとあの子もそう思ってるよ! じゃあ、俺はティアナさんに挨拶してくるね」

「ああ、それなら私も一緒にいくわ。私がここに来たのもブレイダーを呼びにだから」


 じゃあ一緒にいこう、とブレイダーはレイナとアベルを連れて神殿の中へと向かう。

 取り押さえられている信者達は周りで騎士団達がしっかり見張っているので聖騎士がその場から離れても大丈夫だ。

 神殿の中はまだ慌しく、他の信者達や巫子達が走り回っていた。

 そんなに進まないうちに目的の人物達を見つけた。

 外が見える大きな廊下にティアナとユミ、イースとバルハードがいて何かを話し合っているようだった。


「ティアナさん、黒星団長さん、こんにちはー!」


 そんなに重い雰囲気でもないと感じでブレイダーが陽気に声をかけると四人が此方を振り返る。


「ああ、ブレイダー様。わざわざお越し頂きありがとうございます」

「やはり来ていたのだな、ブレイダー」

「毎年来てるからね。あれ、アルフェユーミちゃん?」

「ああ、やはりブレイダーさんでしたか。お久しぶりです」


 ティアナ達の側までやってくるとそれぞれに挨拶をかわし、ブレイダーがユミをみて少し驚いたような表情をした。

 それににこやかに笑ってユミはお辞儀をする。

 先程まで暴れていた人物とは思えない切り替えの良さだ。

 ユミとブレイダーとのやり取りに、そういえば、とレイナは思い出す。


「そういえば、ユミは女神の塔に所属する者だったの?」

「いえ、私はただの旅巫子ですよ」

「でも魔術転換グリモワル……」

「旅巫子ですよ」

「あ、はい……」


 にっこり笑顔で力強く言われて、レイナは言いかけた言葉を引っ込めた。

 いや、あんな魔法使える奴がただの旅巫子なわけないでしょうが……

 それは結局言えず仕舞いだったが。


 グリーンも無事合流し、改めてティアナとブレイダーから今回の件について粗方の流れを確認された。

 グリーンも途中で結界が消えたりしたことでユミに何か問おうとしていたようだが「旅巫子ですから」で押し通されていた。

 旅巫子つよい……

 話の流れでお菓子の毒は結局なんだったのか、という所まで来た。


「私は毒など仕込んではいないのですが……」

「そうだね。それは僕も信じているよ。ティアナさんそんなことする人じゃないもんね」

「でもそうするとあの時倒れた者達は一体何があったと」

「毒になるようなものも発見されてないんでしょう?」

「はい、もちろんありませんし、他の誰が調べてもきっと体内からだって検出はされませんよ。まぁ毒は……ですが」

「ん?」


 レイナの質問に対してイースがはっきり応えるが、最後は若干濁した。

 その事に首を傾げるとティアナがいつもの笑みでイースの後にさらに話を続けた。


「今回は私がお菓子を作ったんです」

「はい、そうですね。それは今確認しましたね」

「材料も手順も何もかも問題はありません」

「そうですか」


「本当に不思議ですよね。何も問題ないのに私が作ったものを食べると皆、気絶されてしまうのです」


「え……?」


 さらりと。そうただの世間話のようにさらりとティアナは言った。

 そこにイースの溜息が聞こえる。


「……それを知っていて黙っていた私達も同罪ですけどね」


 …………。

 そっとレイナがブレイダーに視線を送れば横を向かれた。

 こいつ、知ってたな。

 ユミを窺えばティアナと変わらないニコニコ笑顔。こいつも同罪だ。

 グリーンの横にポケットに入っていたシオンがいつの間には飛んでいた。


「一言でいえばメチャクチャまずい。です。ちなみにこれでオブラートに包んだ言い方です」


 そういえばお菓子を頬張っていたな。グリーンがポケットに入っているであろうお菓子を上から撫でた。

 若干顔が青褪めているのは気のせいではないだろう。

 よく見ればユミもお菓子が入っているだろう場所を押さえている。あ、これ、知らなかったやつだ。同罪だと思っていたが被害者のほうであったようだ。


 そこから最後まで話をそれぞれに確認し、一旦話し合いは終了した。

 そこからブレイダーとティアナが引き渡しについて書類の確認などになり場所を移すことになった。ユミとイースもついていく。

 残ったのはレインニジアの騎士達とグリーンにシオンだ。

 暫しの沈黙の後、アベルがバルハードへとそっと声をかけた。


「……あの、隊長が今回何度も神殿に足を運んでいたのは……?」


「……去年の話をノアから聞いていてな。騒動の原因はなんでも突然机の上から火柱が上がったことがきっかけらしく。椅子に座る者達全員分の火柱が上がったそうだ。そこからお互いの魔法合戦へと変わったようだったが……ノア曰く「机に何か仕掛けてたんじゃないかな。神官のティアナ様ならそれくらい出来そうだけど……」とのことでな。だから今回、ティアナ様が何かそういう細工をしないかどうかを見張らせて貰っていたんだが……まさか手作りのお菓子自体が起爆剤だったとは」


 女神信教、怖ぇぇぇぇ!

 そういえば神官ティアナは祭事も自分の采配で執り行っていた。この宗教学会も気づけば祭りごとのようになっている。

 まさか……まさかそんなそんな。

 ここは深く考えてはいけない。そう、事故なんだ。今回のことはたまたまお菓子に中ってしまった信者達が可哀想なだけなお話なんだ。うん。

 レイナは思わず空を見上げるように首を上に向けて言葉を飲み込む。

 ああ、それにしても……


「なんでレインニジアにいる女性ってこんな強い女性しかいないの……」


 今回のバルハードの恋人できるんじゃないの!? という期待は見事に打ち砕かれたのだった。

 むしろそんな気配は最初からなかった。それどころか完全な犯人と監視者視点だったなんて。

 レイナの横でアベルが苦笑を浮かべる。


「まぁ、親子揃って鈍いですよね」

「は?」

「いいえ。なんでも。いずれいい人が見つかるといいですね」

「そうね。本当にそう思うわ……義父上には是非、素敵な女性と巡り会って欲しいところね」

「……レイナさん自身もそういうことに気づいてくれるといいんですが。団長はまず女性というものの認識から変えないといけない気もしますし」

「え? ……え? そこから?」

「まずそこからですね」


 前半部分はレイナの耳に届かなかったようで、バルハードの女性認識の部分でレイナは一気に顔を顰めた。

 その事にアベルはもう一度苦笑する。

 何せ子育てから入ったのだ。しかもレイナという女性を育てている。

 多分本人も気づいてないだろうが女性というものの見方の基準がきっと見守り保護するものだと思っている節がある。

 既に親目線だ。そこから恋愛にいくなんて難しい以外の何者でもない。


 レイナは再び上を見上げる。

 廊下の窓から清々しいほどの青い空が見えた。


 今日もいい天気だ。青空が目に痛い!


 思わず目元を手で覆って大きな溜息を漏らす。

 こうして今年の宗教学会は無事とは言い難い終わりを迎えたのだった。


 女神信教が一番の過激派宗教だってことに気づけたのは、いい収穫……だったと思うことにしよう。


 ちなみに例の召喚魔法。

 後々、この魔法を検証した魔術師団の副団長、ふわっふわのベージュの髪で丸い飴色の目をしたふんわり可愛い系の女性(だたし実験内容はえげつない)フロンが言うには


「何も召喚されなかったでしょうねぇ。術式が移転魔法と混ざっているから多分自分で改良したんだとおもうんですよぉ。精々その辺の魔獣さんが数匹移転で現れて終りだったでしょうねぇ」


 とのこと。

 本当人騒がせな宗教学会である。


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