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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
16/71

16、宗教学会と旅巫子 1

説明回です。

 

「大地」があり「魔王」がいて「女神」がいる────


 ある出来事をきっかけに女神が世界を二分した。

 世界の三分の二を捨て、残りを生かした。

 女神が結界をはり完全に遮断したそれぞれの大地をこう呼ぶ。


 魔力を失いし大地「外界がいかい

 魔力が生きる大地「内界ないかい








 内界の大国レインニジア。

 山を囲った大きな城は本日も活気付いている。

 その城で働く騎士も朝から訓練をする。本隊勤めの騎士達はもちろんだが、騎士見習いも城の演習場で訓練をする。

 国で一番広い場所でもあるし、何より本隊勤めの騎士達から直接指導もしてもらえる。ただし決まった日にだけだが。

 騎士見習い達もいつも城で訓練しているわけではなく、様々な場所で様々なことを学ぶ。

 本日の訓練所は城であり、本隊騎士による指導が入る日だった。

 朝と昼の中頃になり一度休憩が入る。騎士見習いであるレイは当然この訓練に参加している。休憩になったことでレイは別所に用があり演習場から一人退場した。

 騎士見習いでありながら慣れた足取りで城を歩くレイは少し立場が変わっている。というのも大体が身内の立場が関わっているのだが。

 自分自身の生い立ちも普通とは言い難いレイは幼い頃からこの城の世話になっている。今では世話をしている側だが。

 広い中庭が見える廊下を歩いていれば晴天の日差しが当たりとても気持ちがいい。

 ふと外の広い空を見上げれば、晴天のお陰でいつも同じ場所に見える一つの建物がはっきりと見えた。

 遥か遠い場所に建つ建物。遠い場所にあるにも関わらずはっきり見えるその姿。

 縦に長い、とても長い、頂点が天を突き抜けているのではないかと思うくらい長い。そしてその頂点はいつも見えることはない。

 世界の中心に立つそれは誰もが知る建物で、誰も入ることは出来ないと言われている建物。


 女神の塔。


 女神が住み、いつ何時も女神が地上に住まうものを見守り時には天罰を下すという。

 それが一般に広まっている女神の話である。御伽噺……のようにも感じるが、残念ながら御伽噺でもない。

 御伽噺ではない。一般教養で習うのだ。女神は()()()()()()()

 さらに城勤めになると習うことがある。


 女神の塔の仕組みだ。


「レイ。こんなところでどうした?」


 なんとなく足を止めて女神の塔を眺めていたら、後ろから声をかけられた。

 よく知る声に振り返れば予想通りの人物がレイに近づいてくる。

 黒髪で青みがかった黒角が生えた黒竜の竜人。魔導騎士団副団長、アベル・ランティースだ。

 さらにその後ろにももう一人人物がついてきていた。

 壮年の男性でそれなりに伸びている金の髪が一つに纏められ緩やかに波打っている。

 騎士らしいがっしりとした体格で背筋がしっかり伸びて威厳をも感じられる姿。レイを見つめる瞳は煉瓦色をしていて表情も引き締まっているがどこか優しさも含まれていた。


「アベルさん、黒星団長」


 レイがそう声をかければ黒星団長と呼ばれた男性は苦笑する。


「お前もレイナもすっかりそっちの呼び方をするようになってしまったな」

「休憩中とはいえ、騎士の習い事中ですから。馴れ馴れしくは呼べませんよ」

「だそうですよ。団長」

「休憩中くらいは義父上ちちうえと呼んでくれてもよくないか。久しく聞いてないぞ」


 きりっとしている眉を下げて団長と呼ばれた男は肩を竦める。

 改めて彼が誰なのか紹介しておこう。


 魔導騎士団長、バルハード・ファナスタ


 そしてレイナとレイの義父にあたる。

 この辺の関係はまたいずれ語ることにしよう。

 魔導騎士団長ではあるが、大体のものは黒星団長と呼ぶ。なぜそう呼ぶのか。

 それには簡単に城勤めである本隊の説明をしておこう。


 レインニジアの騎士団は見習いを含めるとかなりの数になる。

 城勤めの本隊が騎士団の中でもトップクラスの者達が集まっている。

 さらにこの本隊もいくつか部隊が分かれている。まず大きく3つ。


 騎士団。

 魔導騎士団。

 魔導師団。


 それぞれに団長と呼ばれる立場の者が率いる団だ。その中からさらに「竜騎隊」「獣人隊」など様々な隊が存在する。

 そういった名前がついているのは特殊部隊になり、団の中の隊は「第一部隊」「第二部隊」という形で分かれている。

 各団の説明はまた後日するとして、そんな団を区別する為に特徴をつけた呼び方をしている。

 なので正式名称はこうなる。


 赤天騎士団。

 黒星魔導騎士団。

 青月魔導師団。


 この名前にちなんで制服も少し違ってくる。

 基本は黒だが騎士団は赤の衣装が混じる。魔導師団は青の衣装が混じる。

 魔導騎士団だけ黒のままだが装飾が金になり華やかなものとなっている。

 そんなわけで先程レイがバルハードを呼んだ名称は「黒星魔導騎士団長」という長ったらしいのを縮めた呼び方だ。

 不敬にあたるのではとも思うが、そもそもが国王が長いからそう呼ぶことにする、と言い始めたのだから不敬も何もない。

 なので今ではそれぞれの団長を「黒星団長」「赤天団長」「青月団長」と呼ぶのが普通になっている。


 さて話は戻って、人気の少ないところに騎士見習いと副団長、騎士団長という本来ならば緊張しそうな組み合わせ。

 しかしお互い気安い間柄であり、レイとバルハードにいたっては親子だ。堅苦しさや緊張などは存在するはずもなく。

 おどけて見せたバルハードにレイは穏やかに笑った。


「その呼び方は僕じゃなくて姉さんに言ったほうがいいよ。僕より頑なに「義父上」って呼ばないから」

「そうだなぁ。家に帰ってもそのままだからな。いや、それはまたいずれ話すことにしよう。で、レイは何を見ていたんだ?」

「私が声をかける前に何かを眺めていたな」

「あ、はい。今日は女神の塔が綺麗に見えるなと思ってまして」


 そういうとアベルとバルハードはつられるように女神の塔へと目を向ける。


「ああ、確かに。よく晴れているからはっきり見えるな」

「そういえばレイは女神の塔について城から説明は受けたか」

「あ、はい。大体は」

「うむ、とはいえ最初に簡単に説明するだけだからな。少し確認もしておくとしよう」


 女神の塔とは、女神が住まう塔。それは変わらない。

 しかし、その内部について城勤めのものは周知しておく必要がある。

 女神は伝説でも御伽噺でもなく、本当に存在する。

 あらゆる事項を見つめ、国を正しく管理する。そう、管理しているのだ。

 正確には国を管理する王族を統一している機関、とでも言えばいいだろうか。

 女神は国自体には直接関与することはない。しかし国が傾いたり繁栄し大きくなりすぎたりすると王族に修正するよう命を出す。

 王族は女神のもと国を管理する。女神の意向を無視するようなことをすれば最悪、粛清されたりもする。

 女神の塔とは国をまとめ管理する機関である。

 女神を筆頭としてその機関の主だったものはこうなっている。


「女神」……世界を支える存在。絶対権限を持つ。


「聖教」……女神の補佐兼世話役。下の者に指示を出すのも仕事だが基本、女神の塔から出ることはない。


「聖神官」……女神に直接仕える八人の官。女神の命により動くことができ、その権限は王族と同じとなる。


「聖官」……塔の管理をする方々。色んな部署がある。文官や武官のようなものだがまとめて聖官と呼ぶ。


「聖騎士」……塔に仕える騎士。粛清、鎮圧などを主な仕事としている。


「聖女、聖兵」……女神の塔に仕える人達。塔を円滑に管理する為に色んな雑用をこなす方々。塔の出入りが自由なので王族達への伝達などはここで行う。


 以上が塔に仕えている者達の説明になる。

 塔に仕える者は塔の出入りは自由だが、それ以外の者が塔に入ることは禁じられている。

 塔から招かれた場合のみ例外となる。たとえ侵入しようとしても特殊な結界に阻まれ絶対に入ることは出来ない。

 ただまったく外の世界から切り離されているわけではなく、塔に仕える者も普通に外と交流はしている。ただ仕事が忙しくて上の役職の者ほど外に出れる機会が殆どないというだけなのだ。


「聖女の方がこの間、城に来ていたのは拝見しました」

「ああ、確か国王の誕生祭で来られたのだろう。国王に祝いの言葉と品を持って来ていたな。ただ本人は城下町での祭りを楽しみにしていたようだから町娘の服を借りて遊びに行く、とか言っていたな」

「女神の塔という名だけで遠い存在に感じるかもしれないけど、働いてる者は私達と変わらないからな。女神の塔も種族差別はしない場所だから色んな種族がいるそうだ」

「不思議な場所ですね」

「塔が建っている場所は海に囲まれた大きめな孤島だというが、塔の周りには豊かな街もあるというぞ。孤島自体に辿り着くのが困難な為、実際に見た者は然う然ういないというがな」

「そもそも各所にある「教会」の殆どは女神の援助だからな。国で管理はしているがその資金は殆ど国を通して女神の塔が出している。最近では教会の一部として孤児院も出来ているという」

「教会は宗教の方々が作っているのでは?」

「もちろんそういう場所もある。だが殆どは国が管理してる教会だ。その為、各所に存在している教会が崇拝しているのは「女神信教」だ。女神関連だから役職も異なっているな」

「司祭や修道女とは違うのですか?」

「違うな」


「女神信教」の教会に所属しているものはこのようになっている。


「巫子」……教会に勤める人達。修道女のようなものだが性別、種族は関係ない。男女共に「巫子」と呼ぶ。婚姻は可能。


「神子」……教会の責任者。司祭のようなもので、巫子達の管理、町の人々に教えや学を直接広める役目を担う。「かみこ」と読む。


「神兵」……大きな街では教会は「神殿」扱いになる。その神殿を守る兵。戦力的な意味で守るのも、知力で支えて守るのも神兵の役目。男女共になることが出来る。ただし神子レベルの知識が必要になる。


「神官」……神殿の責任者。自分の管轄内の他の教会をまとめ、所在している街の祭事の管理もしている。扱いは上位貴族と同じになる。


「旅巫子」……旅をして教えを説く巫子。人を助け知識を広める。教会や神殿で申請して許可証を貰うことで旅をすることが出来る。許可証があれば各所の教会、神殿に立ち寄り援助金を貰ったり宿や食事も無償で受けることが出来る。


 これが女神信教の教会および神殿の役職だ。


「この王都にも神殿があるのは知っているな」

「はい。確か女性の神官様がいらっしゃったかと」

「神官ティアナ様だな。国王の誕生祭もティアナ様が主立って取り仕切って頂いた」

「そうだったんですね」

「教会も女神の塔も城で働くようになると色々関わりを持つ場所だ。きちんと覚えておくように」

「はい、わかりました」

「ああ、そういえば。団長、誕生祭にブレイダーが来てたのは知ってましたか?」

「そうなのか? ならばまた挨拶もせずに帰っていったのか」

「用があったのは城下町ですからね。仕事じゃないのに城には寄りたくなかったのでしょう」


 しょうがない奴だ、とバルハードは溜息をつくがその表情は軽い。アベルもただおかしそうに笑うだけだった。

 ただ一人、レイだけが首を傾げている。

 そんなレイの姿をみてアベルが話を付け足した。


「ブレイダーは聖騎士だよ」

「え?」

「よくふらふらと遊びに来るんだ」

「えっと、聖騎士の方が城下町に?」

「もちろん一般人のフリをしてだ。あいつの趣味なんだよ」

「一般人のフリをするのが?」

「違う違う。食べ歩きをするのが」

「えぇ?」

「趣味がグルメツアーなんだそうだ。だからよく色んな街に出没してる聖騎士なんだよ」


 気軽過ぎないか聖騎士よ。

 聖騎士の仕事ってもっと重いよね? 威厳あるものじゃないのかな。違うの? 国を粛清出来るような人たちだよね?

 聖騎士というイメージにあまりに誤差が出てしまってレイの頭の中に只管疑問符が浮かび上がる。

 思わずきょとんとした顔で立ち竦んでしまう。だがそれも一瞬で。

 目の前に立つアベルとバルハードの後ろから見知った姿を見つけたのだ。


「あれ? 姉さんだ」

「む、珍しいな。レイナがこの時間に騎士団の方に来るのは」


 レイの呟きにアベルとバルハードが振り返る。

 そこには確かにレイナの姿があった。ただしこちらには気づいてはいなかった。

 それもそのはず。


 宰相であるサシィータに連れられてどこかに行く途中のようだ。

 レイナはいつもの穏やかな笑みを浮かべているが背負っている空気がやたらと重い……ように感じる。

 ここで誰もが察する。


 これは関わってはいけない奴だ。


 さっと三人が目を逸らそうとした時だった。

 サシィータがこちらを向いた。特に団長であるバルハードに目をつけた。

 あの宰相が目をつけるということは、使える手駒を増やすということ。

 無表情の顔を真っ直ぐこちらに向けて近づいてくる。


「これはバルハード殿。ちょっとよろしいでしょうか」

「……何か急用でしょうか。サシィータ殿。急用でないようでしたら優先する仕事がありまして……」

「急用です」

「……そうですか」

「どちらにしろ今度こそ騎士団に用があったので丁度よかった。実は今度の宗教学会のことでご相談があります」


 その言葉を聞いてバルハードとアベルは額を押さえた。

 サシィータのその言葉に覚えがあったからだ。


「そうか……もうそんな時期か」

「しかしその件については既に返答を返していたと思いますが」

「ええ、頂いております。ですが……」


 淡々と話していたサシィータがここで一度言葉を切った。

 後ろをついて来ていたレイナが大きな溜息をつく。

 なんとなく先が見えた気がした。


「足りません。毎度のことではありますが、この程度の人数で足りるとでも?」


 ぐっ、とアベルが言葉に詰る。

 バルハードは眉間に皺を寄せる。

 そう、毎度のことなのだ。毎年のことなのだ。


「去年は魔導師団長殿がどうにかして下さいましたから、今年は魔導騎士団のほうからアベル殿かバルハード殿が来て頂かなくては困ります」


 騎士団の中から毎年、生贄が捧げられる。

 いや、例えの話ではあるが、そう騎士団の中では言われているのだ。


 毎年恒例、宗教学会というイベント事のことを。


 ちなみにレイナはそれで既に捕まっていた。

 宗教学会という単語を聞いた時点で諦めるくらいにはレイナもこのイベント事は承知済みだ。

 ただ、まぁ、せっかくなので。


「前回が青月団長だったなら、今年もやはり同じくらい責任ある人物が行くべきかと思いますよ」


 生贄は増やす。

 猫を被った綺麗な微笑みでレイナは近くにより、笑いかけその人物の腕に手をかけた。

 そしてがっしりと力強く掴む。



「そうですよね。義父上ちちうえ



 久々にレイナの口から聞いた義父上という言葉にバルハードはあっさり負けた。


 レイも流石に手伝おうかと言ってくれたが、そこはレイナが許さなかった。

 なぜ可愛い可愛い弟を生贄になんぞしなくてはならないのか。むしろ近寄ってはいけない。こんなイベント事に関わってはいけない。弟は平穏に生きてくれればそれでいい。

 レイの肩をがっしり掴んでそんなようなことをレイナは力説した。

 バルハードはもう幾度となく経験してるのだ。今更また増えたところでどうとでもない。娘も一緒にいくのだ。道連れくらい付き合って欲しい。


 さぁ今回も適当に放り出されるのを覚悟して国王のところにいこうじゃないか。


 背負った空気は只管重い。

●12810121314

□10-2、14、15

■12、13、14、15、16

17

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