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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
14/71

14、盗賊とエルフ戦士 8

 動き出したのはほぼ同時だった。次の瞬間には甲高い音が響き渡る。

 斧と剣がぶつかり合った音だ。しかし直ぐにレイナのほうから振り払うように離れた。

 剣が負けたのだ。僅かに刃こぼれがした。

 斧と剣では厚さが違う。しかも斧は力を込めて扱う武器だ。ぶつけ合えばそこら辺の長剣では簡単に砕け散ってしまうだろう。

 それでも刃こぼれだけで済んだのはレイナの剣術の腕がいいからに過ぎない。

 とはいえ何度もぶつけ合えば後数回で簡単に折れてしまうだろう。強化魔法もこの剣では使うことは出来ない。

 ならばどうするか。


「は、さっきまでの勢いはどうしたよ? まさか今ので萎縮しちまったのか? お嬢ちゃん」


 当然そんな歳ではない。煽っているとわかっていて態々釣られるつもりもない。

 レイナはもう一度剣を構え、そして再び走る。今度は斧をかわし、懐に入るように。

 しかし思いの外相手の斧は早く翻されレイナの手前を薙いだ。だがレイナの足は止まらない。斧の風圧を体を翻していなしてさらに走る。

 斧を振り払った脇、防具がされていない箇所を目掛けてレイナの剣が横一線に入る。

 確かに体に触れた。しかし何故か甲高い音が響いた。レイナの剣がさらに刃こぼれした。

 それを確認してレイナはそのまま勢いを殺さず竜人から離れる。

 離れると同時に竜人は声を出して笑う。


「はーはは! なんだ今のは? まさかこれが攻撃だなんていわねぇよな!? くすぐったくて痒くなるぜ!」


 そういって竜人は剣が触れた場所を叩いた。

 レイナが目を向ければそこには鱗がある。

 なるほど。「竜化」は出来ないが一部は変化することが出来るというわけだ。

 竜の鱗は当然硬い。普通の剣で切れるわけがない。

 武器を合わせるのも避けて、潜り込んで切り込んでも防がれる、ということか。

 さて、では次はどうしようか。


 レイナはもう一度剣を構える。しかし先に動いたのは竜人のほうだった。

 一歩踏み出して斧を大きく振りかぶる。レイナが後ろに飛んで避けようとした瞬間。


 竜人が()()()


 とっさに後ろに飛ぼうとしたレイナは体の傾きを変えて前方に思いっきり飛んだ。

 と、同時に後ろから斧がレイナのいた場所を薙いでいた。


「なかなか勘がいいじゃねーか! なら次はどうだ!?」


 いやに楽しそうに竜人は喋る。

 今度は斧を横に構えて、一歩横へ移動して消えた。

 そしてそれはレイナの真横から出てきた。

 足に強化魔法をかけてレイナは上へと飛ぶ。またもレイナがいた場所に斧が通り過ぎていく。それをレイナは上から見下ろすと竜人が上を見上げレイナと同じように飛んだ。

 次の瞬間にはレイナより上に竜人がいた。

 咄嗟に剣に強化魔法をかける。空中で体を別の方へ動かすことは不可能だ。ならば防ぐしかない。

 斧と剣が激しくぶつかり合い、その衝動でレイナは後方の壁へと吹き飛ばされた。

 ぶつかる前に体をひねり足で着地することで勢いを抑えて、そのまま床まで降りた。

 手に持っている剣は見事に折れていた。


「ああ? 武器が折れちまってるぜ? そんなんじゃまともに戦えねぇだろ」


 ニヤニヤと笑って竜人はこちらに少しずつ近づいてくる。

 何度見てもこの竜人の笑い方は悪役そのままだな、とどうでもいい感想をレイナは抱いて再び構えた。

 折れた剣を持って。

 その姿に腹を抱えるように竜人は笑う。


「あーはははは! こりゃいい! その折れた剣で戦うってか!? いいぜいいぜ戦ってやるよ。じっくり甚振りながらなぁ」


 そうしてまた一歩と竜人はレイナに近づいた。


 さて、ここでいくつか気づいた点をまとめよう。

 そうするだけの余裕がレイナにはあった。


 まず、竜人が戦っている間、周りの盗賊共は絶対に手出しをしてこないこと。

 理由は簡単。竜人の攻撃に巻き込まれない為だ。

 あれだけの巨漢が持つ斧は相当でかい。それを思いっきり振りかぶるだけで風圧が凄いのだ。それを横や縦に動かしてみろ。

 近づけば簡単に真っ二つにされてしまう。

 なので盗賊達が一緒に応戦、ということはない。なので完全に意識は竜人に集中するだけでいい。

 弓や魔法の援護も考えたが、多分タイミングが合わないだろうし、弓は竜人の攻撃できっと弾かれる。魔法はヘタすると竜人を巻き込む。それこそ息の合う参謀とかがいなければ無理だろう。見た限りそれらしい人物もいない。


 次に、竜人が消えるという現象。

 あれは闇特性の魔法だ。

「空間移動」

 文字通り、空間を移動する。目の前にいたのが急に後ろにでたのはその空間移動を利用したからだろう。

 しかし、己の力を過信しているものは実にわかりやすい。

 自分の技を自慢するように見せ付けてくれる。だから非常にありがたかった。

 何度か見たお陰でいくつかその魔法の特徴がわかったことがある。

 きっと次も奴は魔法を使ってくるだろう。甚振ると言っていたのだ。惜しんで使うことはないだろう。

 ならば次の行動は決まった。


「まぁ精々簡単に倒れてくれるなよ!」


 大きく斧を振りかぶって竜人は一歩手前にでた。

 同時にレイナも足に強化魔法をかけて動く。


 目の前の竜人の足元に目掛けて全力で走った。


「っ!」


 一瞬竜人が目を見開いたが次の瞬間には竜人は消えていた。

 そうして先程までレイナがいた場所に斧が突き刺さる。

 当然そこにはレイナはいない。



「空間移動も初心者程度で自慢されてもね」



 そんな言葉と共にレイナが振りかぶった斧上に足を置いた。

 先程竜人の足元へと走り出していたレイナは元の場所へと戻ってきていたのだ。

 理由は簡単。竜人と共に空間移動したからだ。

 竜人は顔を歪めて舌打ちをする。


「空間移動は空間同士を繋げて移動する魔法。術者本人の移動じゃないわ。自分の周りの空間を歪めて別の場所に繋げて移動する。だから自分が動かなければ空間は移動できない」


 なので発動は必ず動き出してからになる。そうでなければ「消えた」ように見えないからだ。


「何度も見せてくれてありがたかったわ。おかげでアンタが初心者だってよくわかったから」


 この空間移動、空間を繋げるという行為自体が相当難しい。故に遠ければ遠いほど、範囲が広ければ広いほど精密なコントロールが要求される。

 その為、覚えたての頃は大体ある一定の法則でしか発動しない。

 数メートル先の空間同士しか繋ぎ合わせることが出来ないのだ。

 右から前へ、上から左へ、という曲がった方向に繋ぐことは出来ない。真っ直ぐ前の空間しか繋げられない。

 先程、レイナの横に出てきたのは竜人が横に動いたことで体の向きを僅かに変えて、真っ直ぐ進む軸を斜めに変えてレイナを通り過ぎた後ろ、斜めに角度が変わっているからまるで横から出てきたように見えたということだ。

 つまり全て向かい合ったレイナの後ろから現れている。初心者がそれしか出来ないから。


 どこに出てくるのかわかっていれば、攻撃をかわすのは容易い。

 しかし避けるだけでは何の意味もない。取りあえずあの武器を無効化したい。此方の武器が折れてしまった以上、向こうも是非同じ条件になってもらいたいものだ。

 そう思ったからレイナは空間移動しようとした竜人の足元へと潜り込んだ。

 自分も一緒に空間移動する為に。

 共に空間移動できれば竜人の側を離れる必要はない。こいつが攻撃後の隙を狙えるというわけだ。

 そうして出来た隙にレイナは斧に足をかけた。

 何をするつもりだ、と思うだろう。

 さて、ここで思い出すのはレイナの特性と属性。


「知ってるか? 土属性と火特性で何が出来るか」


 口の端を上げてニヤリ、とレイナが笑う。

 それこそ悪役のような笑い方で。

 斧の上においているレイナの靴底から煙が立ち上がる。

 竜人が斧を振りかぶろうとしたが、まったく動かなかった。竜人が己の斧をみて目を見開く。

 斧が床と同化していたのだ。


「土属性の特徴は当然土を操ること。その土に鉱物が含まれている」


 そして武器の殆どは鉱物で出来ている。

 さらにそこへ火特性の魔法が加えられると



溶岩構築ラーヴァファーレ



 その言葉と共に斧はドロリとした赤い溶解物質へと姿を変えた。


 レイナの足元から徐々に溶け出し竜人の手元まで迫ってくると竜人は慌てて手を離し飛び退いた。

 竜人は悔しげに奥歯を噛み締めたが、直ぐにまた口元を歪めて笑う。


「は、これで条件は同じってか。だが武器がなくてお前になにが出来る? 剣ですら俺の体に傷をつけることも出来なかったくせによぉ」


 そういって鼻で笑えば、レイナもまったく同じ仕草をして鼻で笑った。


「誰が、同じ条件だって?」


 私が、いつ、自分の武器を溶かしてなくした、なんてことをしただろうか。

 そうしてレイナは折れた剣を構えた。

 その姿に竜人は馬鹿にしたように笑う。


「おいおい、頭でもおかしくなったのかよ! それが武器だって?」

「そういえば」


 竜人の笑い声なんて聞こえないようにレイナが言葉を発する。


「言い忘れてたけど」


 一歩、前に出た。



「私は騎士じゃない」



 二歩、前に出る。






「国王専属魔導騎士だ」






 その声は竜人の真上からした。

 ダンッ、と音を響かせながらレイナが地面へ着地する。

 ぐらりと竜人の体が揺らぐ。その体には上から下まで真っ直ぐな線が引かれ、次の瞬間には一気に血が噴出していた。

 ドサリと竜人は倒れる。


「折角目の前で見せてやったのに」


 振り返りレイナが倒れた竜人を見下ろす。

 そして折れていた剣を握っていた手の中のものを逆の手でコツンと叩いた。

 折れていたはずの刀身が光り輝き完全な姿でそこにはあった。


「鉱物生成かつ鉱物変更。土に返す事も出来れば土から作ることも出来る」


 レイナはその刀身をもう一度叩いた。キン、と綺麗な鋭い音が響く。


「オリハルコンなら竜の鱗は切れるのよ」


 そうして光り輝く刀身を持った剣を鞘へとしまう。

 勝負はこうして決着を迎えた。


●1

◎5、6、7

15

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