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 エンテレケイアαの両指の先から放たれた真っ赤な光線がファーリィサクトースであるところのスティミアテリコースまたはファラレッギーの顔面を直撃。

 ファーリィサクトースの目器は既に仕舞われていたが、まるでもう一度それを燻り出すかのように顔面に纏わりつく。

 粘着性を持った赤い光線がメラメラと蠢く。

 溜まらずファーリィサクトースが悲鳴を上げる。

 ヒャーッ、ケルヒャーッ、と悲鳴が続く。

 が、その間にもファーリィサクトースがエンテレケイアαを補足。

 エンテレケイアα同様、両手の指先から青色の光線を放つ。

 エンテレケイアαの顔面に向け……。

 接近する青光を避けるエンテレケイアα。

 が、青光がまわり込み、背中を直撃。

 背骨をせり出すような形で身を歪め、ヒュキッ、と鋭い唸りを漏らす。

 落下はしないが、空中でフラフラと揺れるエンテレケイアα。

 そこにファーリィサクトースからの第二光弾。

 今回も直撃を避けるが、青光がエンテレケイアαの背後に回り込む。

 そのときエンテレケイアαの両掌に虹色の光が走る。

 瞬時に両手が輝く銀に装甲される。

 装甲されたその手でファーリィサクトースから放たれた青光をエンテレケイアαが掴み、引き千切る。

 引き千切られた青光が小さく破裂し、この世界から消えてなくなる。

 その余韻が影のようにエンテレケイアαを包んでいる。

 ファーリィサクトースとエンテレケイアαが空中で対峙する。

 互いに目器のない顔部で睨み合う。

 多色が蠢く黒と装甲された白の対峙。

 そのまま両者がゆっくりと地上に降りる。

 その様子を小さな四角い物体が観察している。

 星太と空子が拾った緑色の宝石が、またも空間跳躍スペースリープしたのだ。

 その目的は……。

 足許の定まらない雲取山頂近傍に降り立った二体の異形が静かに相手を牽制する。

 数秒はそのままだが、ファーリィサクトースに動きが現れる。

 球形顔部の中央が陥没し、そこに目器が現れたのだ。

 ……と同時にエンテレケイアαの楕円球頭部中央も陥没する。

 同様に目器が現れる。

 ただし、こちらは二つ。

 けれどもエンテレケイアαの二つの目器が完全に独立した存在のように、それぞれ勝手に動く。

 その様子を、破壊を免れた自衛隊の攻撃ヘリコプターが中継する。

 映像を目の当たりにした沼田幕僚長が僅かに気分を悪くする。

 なまじ外観がヒトと似ているだけに気色の悪さを感じたからだ。

(あれを操ってるのが生きている死者だと……。儂には訳がわからん)

 それが沼田幕僚長の偽らざる気持ちか。

(アレ以外に頼る術がないのか……)

 気分の悪さが吐き気に変わる。

 沼田幕僚長は単なるエリートではなく、海外での実戦経験を持つつわものだ。

 そんな幕僚長にさえ吐き気を催させる異形たち。

 アルファ‐オメガの地下作戦室にも同じ状態のものが多い。

 吐き気を感じないのはスティミアテリコースとエンテレケイアのすべてを知る山月と海城だけかもしれない。

「もう一分は睨み合いが続く。『アレフ‐タヴ』が書き換わらなければだが……」

 山月が言う。

「改変自体は続いていますが、その報告はないようです」

 海城が答える。

「ファーリィサクトースはエンテレケイアを初めて見て戸惑ったと思うか。己の紛い物の姿を目の当たりにして……」

「さあ、わたくしには何とも……」

「『アレフ‐タヴ』には生死人(いきしびと/デッドライファー)の記載がない」

「我々の活動で記載されているのはエンテレケイアからの攻撃と逃げ惑う市井の人々の姿だけです。それに燃える建物……。『アレフ‐タヴ』はスティミアテリコースの視点ですから」

「だが、違う部分もあるぞ」

「あの部分は謎ですが、後世に付け加えられたものかもしれません」

「ならば何故、改変で消さない。必要ないだろう」

「『アレフ‐タヴ』の作者が望まなかったからでしょう」

「『アレフ‐タヴ』には本当に作者がいるのかな。真の作者という意味だが……」

「わたくしにお尋ねになられても、お答えできません」

「わたしにはいない気がするよ。『アレフ‐タヴ』すべてがシステムなんだ。欠けた部分があるので全貌はわからんが、そんな気がする」

「あるいは、そうかもしれません」

「一分経ったな」

 山月が言うと巨大スクリーンに動きが現れる。

 ファーリィサクトースとエンテレケイアαが対峙を解き、再び戦闘態勢に入る。 

 百メートル強というそれぞれの大きさからは想像もできない素早い身の動きを繰り返す。

 腕と肩で数度接触後、距離が測られ、互いの目器から光線が放たれる。

 ファーリィサクトースから一本、エンテレケイアαから二本。

 ファーリィサクトースの光線は青色、一方エンテレケイアαは赤色。

 どちらもキラキラとした耀色だ。

 それらが蠢き、空中で打つかり、絡み合う。


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