劣
空中で絡み合う青と赤の光線は、まるで生き物のようだ。
一方、ファーリィサクトースとエンテレケイアαは生き物には見えない。
ならば何に見えるかといえば形容詞がない。
この世界に似たものが存在しないからだ。
蛇あるいは伝説の生き物の如き動きを見せ、絡まる光線たち。
やがて捻じれ、爆散する。
その余波を受け、ファーリィサクトースとエンテレケイアαが吹き飛ばされる。
ファーリィサクトースが山肌に身を打つけ、エンテレケイアαが態勢を崩し、岩肌を滑る。
が、すぐに立ち上がる。
互いに向き直り、再度目器から光線の応酬。
結果は同じで、やはり空中で打つかり、先には進めない。
二度目の爆散が起こる。
まだ慣れるには早く、今回も両者が吹き飛ばされる。
が、回復は早い。
次の攻撃は肉弾戦だ。
まず互いの指を掴み合う。
が、すぐに拮抗。
いや、力そのものはファーリィサクトースの方が強いようだ。
エンテレケイアαの両肘が引っ繰り返される。
辛うじてファーリィサクトースの腕力を躱すエンテレケイアα。
掴まれた指を振り払い、距離を置く。
そこで同時に三度目の光線攻撃。
最初の一瞬は、これまでの繰り返し。
が、エンテレケイアαの赤い二本の光線が異なる軌跡を進む。
ファーリィサクトースの青い光線が、どちらの光線を捕獲しようかと一瞬惑う。
その隙に赤い光線がぐるりとファーリィサクトースの後方に回り込み、背中を直撃。
ファーリィサクトースが、デュワッ、と低い悲鳴を上げる。
そのまま前方に倒れ込む。
すかさずエンテレケイアαが赤い光線をファーリィサクトースに放つ。
それが頭部に到達する直前、ファーリィサクトースが上空に飛び上がる。
青い光線をエンテレケイアαに向け、放つ。
それをエンテレケイアαが受けて立つ。
ファーリィサクトースよりも回数が多い、五度目の光線を発射する。
けれども今回、ファーリィサクトースの光線が異常だ。
空中で二手に分かれ、エンテレケイアαを襲う。
一本は回避したが、もう一本がエンテレケイアαの羽根に当たる。
すると右上の一部が燃え、爆散する。
が、飛翔に影響はないようだ。
大きく羽根を羽ばたかせ、エンテレケイアαが宙を舞う。
するとファーリィサクトースの頭部の下部が陥没する。
見た目も悍ましい白い口器が現れる。
鮫のような歯器が見えるが、取り敢えず、噛むつもりはないようだ。
代わりに大きく胸を膨らませ、辺りの空気をありったけ吸う。
ついでグワッと大きく口器を開け、何かを吐く。
目に見えない何かがファーリィサクトースからエンテレケイアαに向かう。
一瞬後、それが数十倍に膨らみ、硬い空気ボールに変わる。
『アレフ‐タヴ』中の記載により、エンテレケイアαはその攻撃法を知っている。
が、避けられない。
空中を上に逃げようとしたが、硬い空気ボールが更に膨らみ、エンテレケイアαを圧倒する。
けれども硬い空気ボール攻撃が背後に何も存在しない空で行われたため、大きなダメージとはならない。
逆に、これが地面方向だったら一部損壊を受けたかもしれない。
……と、その辺りで硬い空気ボールが激しく爆散。
エンテレケイアαは煽りを受けるが、どうにか耐える。
ついでファーリィサクトースと同じ攻撃を試みる。
闘いは互いの能力を測る探り合いとなっている。
「『アレフ‐タヴ』に記載変更がありました」
そのタイミングで解析室から山月に一報だ。
「どこが変わった」
「アレフ(第一節)すべてが消えました」
「なるほど、そう来たか」
ニヤリと山月がほくそ笑む。
「ああ、すぐに戻りました。内容に大きな変更はありません。いえ、……」
巨大スクリーン上ではエンテレケイアαが口器を見せ、硬空気ボールをファーリィサクトースに向け、射出する。
それをファーリィサクトースが、やはり硬空気ボールスを用い、無力化する。
またもや互いの攻撃手段の爆散で両者が吹き飛ぶ。
けれども今回は吹き飛ばされながら両者が指器と目器から光線を発射する。
エンテレケイアαからの赤い光線が身に届く直前、ファーリィサクトースがシールドを張る。
揺らめく空気の振動でそれが見える。
エンテレケイアαも、すぐに同じようなシールドを張る。
次の瞬間、ファーリィサクトースのシールドがエンテレケイアαの赤い光線を弾く。
が、エンテレケイアαのシールドはファーリィサクトースの青い光線を防ぎ切れない。
シールドが撓み、プルプルと震える。
するとファーリィサクトースが青い光線を太くする。
更に束のような形に変え、エンテレケイアαのシールドを歪める。
ファーリィサクトースが一気に勝利を掴もうとするかのようだ。




