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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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始まりの大地

『……ようやく。』


風に乗って届いた声は、すぐに静寂へ溶けていった。


シオン達は立ち止まり、辺りを見回す。


誰の姿もない。


それでも確かに、誰かが自分達を迎えた。


ルナリアは胸へ手を当てる。


「敵意は感じない。」


「うん。」


シオンも静かに頷く。


「どこか……安心する。」


《第零世界》の空気は不思議だった。


吸い込むたびに身体が軽くなる。


疲労も傷も、ゆっくり癒えていく。


ヴォルグは腕を回しながら笑った。


「何だここ。」


「肩まで軽くなってきやがった。」


「あなたにも肩こりがあったの?」


アリアが呆れたように笑う。


「毎日大剣振ってりゃなるわ!」


「知らなかった。」


「興味なかっただけでしょ。」


「……否定はしない。」


一同から小さな笑いが漏れる。


その穏やかな空気の中、原初生命達は嬉しそうにシオン達の周りを飛び回っていた。


手を伸ばせば近寄り、驚かせれば逃げる。


まるで好奇心旺盛な子ども達だった。


ステラは一匹を両手で包む。


小さな光は逃げることなく、手の中で優しく瞬いている。


「かわいい。」


その声に反応するように、周囲の光も一斉に集まり始めた。


「あっ……!」


数百の原初生命がステラの周りを飛び交う。


リシアが微笑む。


「好かれたみたいね。」


「なんで?」


ノアは少し考え、静かに答えた。


「第零世界では。」


「命に嘘はありません。」


「優しい心へ自然と集まる。」


ステラは照れ臭そうに笑った。


「そっか。」


その時だった。


ゴォォォォ……


地面が小さく震える。


シオン達の前に広がる白い草原が、左右へ静かに割れていく。


一本道が現れた。


黄金色に輝く石畳。


どこまでも原初世界樹へ続いている。


ルクスは静かに息を吐く。


「導かれている。」


「歓迎されてるってこと?」


ルナリアが尋ねる。


「おそらく。」


「第零世界そのものが。」


「シオンを継承者と認めた。」


シオンは少し困ったように笑う。


「まだ何もしてないのにな。」


その言葉へ答えるように、一匹の原初生命がシオンの額へ軽く触れた。


次の瞬間。


視界が白く染まる。


「……!」


景色が変わる。


そこは同じ場所だった。


しかし今より遥か昔。


原初世界樹の周囲では、無数の光が踊っている。


その中心で、一人の青年が静かに座っていた。


銀色の髪。


白い外套。


優しい笑顔。


「始祖……。」


若き日のエインだった。


だが、今まで見てきた姿より幼い。


二十歳にも満たない青年が、原初生命達と楽しそうに笑い合っている。


『逃げるなって。』


『ほら。』


『ちゃんと戻っておいで。』


光の粒は嬉しそうにエインの肩へ集まり、頭へ止まり、まるで親へ甘える子どものように遊んでいた。


『世界を創る前から。』


『君達は変わらないな。』


その笑顔を見たシオンは思わず笑みを浮かべる。


「……本当に。」


「普通の兄ちゃんだったんだな。」


映像はさらに続く。


エインが立ち上がる。


そして一本の小さな芽へ優しく手を添えた。


芽はゆっくり成長し、一本の若木になる。


『大きくなれ。』


『みんなを守れる樹になるんだ。』


ルナリアが息を呑む。


「あれ……。」


若木は少しずつ成長し、見覚えのある姿になっていく。


枝。


幹。


葉。


「世界樹……。」


ノアは震える声で呟いた。


「あれが。」


「最初の世界樹。」


映像が途切れる。


シオンはゆっくり目を開いた。


原初生命は何事もなかったように肩へ止まっている。


「今のは。」


ルクスが静かに頷いた。


「第零世界へ残された記憶。」


「ここでは。」


「過去は消えない。」


「命の記憶そのものが世界へ刻まれている。」


シオンは原初世界樹を見つめた。


始祖が植えた一本の芽。


それが今、空を覆うほど巨大な樹へ育っている。


「だからエインは。」


「世界樹を家族みたいに大事にしてたんだ。」


その時。


原初世界樹の方向から、再び穏やかな風が吹く。


今度は風だけではない。


コツ……


コツ……


誰かが石畳を歩く足音。


ゆっくりと。


確実に。


こちらへ近付いてくる。


全員が自然と身構えた。


石畳の先。


柔らかな光の中から、一人の女性が姿を現す。


腰まで届く純白の髪。


翡翠色の瞳。


白と金を基調とした長衣。


その周囲には原初生命達が無数に舞い、まるで彼女を守るように寄り添っていた。


女性はシオンを見ると、どこか懐かしそうに微笑む。


「初めまして。」


「……いいえ。」


「ようやく会えましたね。」


その一言で、《創世の継承印》が今までにないほど強く輝き始める。


ノアは驚愕の表情で膝をついた。


ルクスも静かに頭を垂れる。


「まさか……。」


「あなたが。」


女性は静かに頷く。


「私はリーヴァ。」


「この第零世界で、世界が生まれる前から原初世界樹を見守り続けてきた者。」


「最後の《原初の巫女》です。」

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