希望の証明
光が世界を埋め尽くした。
オメガが解放した究極術式。
管理者最終奥義。
《エンド・コード》
数万の法陣。
数億の演算。
数兆の可能性。
全てを収束させた世界改変術式だった。
その威圧感だけで空間が崩壊する。
世界樹アルファへ続く光の階段が砕け散る。
天空が裂ける。
時間が歪む。
ルナリア達は思わず息を呑んだ。
これが最後の管理者。
五百回の世界を観測し続けた存在。
絶望を知り尽くした男の力だった。
オメガは静かに言う。
「これが私の答えだ」
銀色の瞳が揺れる。
「終わらせることでしか救えない」
「苦しみをなくすには」
「存在そのものを終わらせるしかない」
純白の光が収束する。
巨大な球体が空に現れる。
それは小さな世界だった。
いや。
終わりそのものだった。
創造主の顔色が変わる。
「まずい……」
クロノも絶句する。
「あれは……!」
アーカイヴが静かに呟く。
「世界消去術式」
静寂。
管理者達が禁忌とした力。
存在そのものを消し去る最終術式。
オメガはそれを発動していた。
ルナリアが叫ぶ。
「シオン!!」
だが。
シオンは動かなかった。
ただ前を見ている。
蒼い瞳で。
真っ直ぐに。
オメガを見る。
終焉を見る。
創造主を見る。
仲間達を見る。
そして。
静かに目を閉じた。
ドクン――。
黒星晶が脈打つ。
五百回分の記憶。
五百回分の希望。
五百回分の人生。
全てが流れ込む。
ゼロ。
第四百九十九世界の黒星王。
名も無き英雄達。
全員の声が聞こえる。
『託した』
『頼んだ』
『未来を』
『希望を』
『生きろ』
シオンはゆっくり目を開く。
蒼い瞳が輝いていた。
今までで最も強く。
今までで最も優しく。
「オメガ」
静かな声。
オメガが顔を上げる。
「お前は間違ってない」
その言葉に全員が驚いた。
ルナリアも。
クロノも。
創造主も。
終焉でさえ。
オメガだけが静かに聞いていた。
シオンは続ける。
「苦しかったんだろ」
「何万年も」
「何万回も」
「失敗を見続けて」
蒼い瞳が細くなる。
「だから終わらせたかった」
オメガは何も言わない。
否定できない。
それが事実だったから。
「でも」
シオンが笑う。
優しく。
真っ直ぐに。
「俺達はまだ諦めてない」
黒星晶が光る。
世界が共鳴する。
「一人なら無理だった」
「二人でも無理だった」
「五百回全部無理だった」
静寂。
「だから今度は違う」
ルナリアを見る。
クロノを見る。
創造主を見る。
終焉を見る。
アーカイヴを見る。
「みんなでやる」
その瞬間だった。
黒星晶が爆発的な光を放つ。
ゴォォォォォォォォォォォン!!
五百人の黒星王達の光。
世界中の人々の想い。
仲間達の願い。
全てがシオンへ集まる。
創造主が微笑む。
終焉が目を見開く。
アーカイヴの瞳が揺れる。
そして。
シオンは剣を掲げた。
《エクリプス・ブレイド》。
黒き剣。
だが。
今は違う。
黒だけではない。
銀色。
蒼色。
金色。
赤色。
無数の光が宿っている。
五百回分の希望そのものだった。
「これが」
シオンが呟く。
「五百回目の答えだ」
剣が輝く。
そして。
振り下ろされた。
《REBIRTH》
その瞬間。
世界が止まった。
純白の世界消去術式。
黒星王の希望。
二つの力が激突する。
轟音。
閃光。
そして。
奇跡が起きた。
オメガの術式が消えていく。
破壊されたのではない。
浄化された。
絶望が。
希望へ変わっていく。
オメガの瞳が見開かれる。
銀色の瞳から涙が零れた。
「……ああ」
震える声。
何万年ぶりだったのか。
自分でも分からない。
「そうか」
涙が止まらない。
「まだ終わらなくていいのか」
シオンは笑う。
「ああ」
短い返事。
だが。
それだけで十分だった。
オメガは静かに膝をつく。
純白の法陣が消えていく。
絶望の管理者。
最後の管理者。
その戦いは終わった。
そして。
世界樹アルファ最上層への道が開く。
創造主が空を見上げる。
終焉も同じ方向を見る。
そこには。
巨大な光の柱が立っていた。
世界核。
エンド・リライトの中心。
全ての始まりであり。
全ての終わり。
創造主は静かに告げる。
「次が最後だ」
世界が震える。
空が悲鳴を上げる。
大地が崩れ始める。
世界終了まで残り四日。
REBIRTH最終章。
世界再生編。
ついに最終決戦の舞台。
世界樹アルファ最上層へ――。




