51、討伐完了!
お待たせしました!
本日より一週間ほど、書けている分を投稿させていただきます。
その瞬間、シロアリの脳天に穴が空いた。
私に飛びかかってきたシロアリは、自分に起きたことが理解できないのか首を傾げ……そのまま崩れ落ちていく。周囲のシロアリたちも何が起きたのかが分からない。
エクスも何が起こったのか分からない、と言わんばかりに目を見開く。
静寂が辺りを支配する中、私は一人胸を撫で下ろした。
「成功して良かった〜!」
思った以上に能天気な調子の声が、空洞内に響き渡る。
その声に他のアリたちが私を攻撃しようと近づいてくるけれど、既に防御壁を張っているので、私が襲われることはない。エクスもそのことに気がついたらしく、私の方へ顔を向けている。
「本気で心配したんだぞ……」
その声は少し弱々しい。同時に大きくため息をついた彼は、私の近くへと寄ってくる。
「無事なのは良かったが……あの攻撃はなんだ?」
彼が指差したのは、私の魔法が脳天を貫いたために絶命しているシロアリたち。縦一直線にアリたちが倒れている。
「あれはどうやってやったんだ? あんな攻撃見たことない」
「あれは火魔法の応用かな」
私はエクスに説明する。火魔法を親指ほどの大きさに凝縮し、超高圧で噴射した、ということを。詳しく説明すれば、なんとなくではあるが理解してくれたようだ。彼は感心しながら私を褒める。
「よくできたな」
「エクスのお陰だよ。エクスがこれをくれたから」
そう言った私は、先ほどエクスから渡されたシロアリの足を、彼の目の前に置いた。初めてシロアリの足を触った時、こう思ったのだ。非常に硬く、表面がツルツルしていて冷たい、と。
つまりアリが硬いのは、金属でできているから。
……それなら高温の熱で焼き切るのはどうだろうか。
そう思った私は、一か八かで試したのだ。幸い目論見は当たり、問題なくシロアリを一撃で倒すことができた。
「実物に触れたから、倒し方が分かったんだよ。エクス、ありがとう」
微笑んで告げれば、エクスはいきなり私から顔を背けた。小さな声で「ああ」と言っていたので、聴こえていないわけではなさそうだ。彼の様子をじっと窺うと、耳が少し赤くなっているのが見えた。
もしかして照れているのだろうか……そう思ったのと同時に、エクスが声を上げた。
「さて、倒し方が分かったところで……マリ、終わらせるぞ」
「そうね、休憩したからいつでも行けるわ!」
私たちは顔を見合わせて微笑みあった。
そこからは私たちの独壇場だ。
私は魔法を使い、複数のアリを一度に倒していく。その間にエクスが防御壁を攻撃している周囲のアリの息の根を止める。幸い、先ほど現れたアリたちだけだったようで、恐れていた無限湧きではなかった。
「無限に現れたらどうしようかと思ったけど……そうじゃないみたいで良かった」
「まあ、忘れていると思うが、ここは三階層……まだダンジョンの浅瀬だからな?」
呆れて話すエクス。私は聴こえた言葉に一瞬耳を疑った。
三階層、え、これが三階層……?
「……あ、そうだったね! ここまで来たから深層まで潜った気分になってた」
「まあ、実際今回の戦闘は三階層ではあり得ないからな。そう思っても仕方ない」
エクスの話によれば、十階層以下に出てきても可笑しくないトラップだと話す。
「ホワイトアントの物量がおかしい。三階層であれば多くても十体が限度だろうが……見渡す限り、二百くらいはいてもおかしくないな……」
「そういえばこれ、どうする?」
アリの死骸がそこら中に落ちている。そう思っていたら、ポンポンとドロップ品に変換した。そこには大量の銀の板が落ちてる。
「これを拾うのか……」
どうみても板の方が大きいはずなのに、それはスイスイとポーチに入っていく。なんとなく日本で有名な猫型ロボットを思い出す。あの四次元ポケットも入れる物の大きさ関係なくはいっていたなぁ、と。
私は再度ジャックさんからもらったウエストポーチを見る。そういえば、彼はこうも言っていなかったか……。
『ポーチに、この山ひとつ分は軽々入るよ』
そんなに容量が大きいのであれば、全部入りそうだけど……いや、多過ぎてもどうなのか……と思う。
でも、このドロップ品、武器とかに色々使えそうな気がしなくもない。そう思ってエクスに聞いたのだけれど、これが何に使われるのかまでは知らないらしい。それなら少し多めに持って行ってもいいかも。
幸い、このポーチは頭の中で取り出す物を思い浮かべると出てくるようなので、整理する必要もなさそうなのが良い。
ただ、あまり市場に出す量が多いと、価値が下がってしまう。そう考えると、少しずつ市場に出した方がいいよね……なんて考えながら、無言で黙々とポーチに入れている私。それを見ているエクスは何故か眉間に皺を寄せた表情で私を凝視していた。
それに気づいた私が声をかける。
「エクス、どうしたの?」
「いや、もしかして全部をポーチに詰めるのか?」
「使えそうだから、念の為取っておこうと思って!」
そう告げて黙々と鞄へと入れる私を見たエクスの口角は、少し引き攣っていた。
「うん、これくらいかな?」
しばらくして、ドロップ品を拾うのに満足した私は顔を上げる。辺りを見回すと、あと数分もすれば全て回収できるくらいまでは拾い終える。
曲げていた腰を伸ばすと、遠くからエクスの声が聞こえた。
「よく拾ったな……」
「うん、頑張った!」
あとはこのドロップ品が何に使えるか、ギルドに聞いてみるだけだ。結構使い所が多いと思うんだけどなぁ……と思いながら、宝箱の前にある階段で座っているエクスの元へと歩いていく。
私の笑みを見たエクスは、大きく息を吐いたあと、宝箱を指差した。
「念の為、探知魔法をかけてくれないか?」
「いいよ! 罠がないか確認すればいいんだよね」
そう言いながら私は魔法を発動する。うん、どうやら周囲にも、宝箱にも罠はなさそうだ。
「問題ないよ」
「そうか、なら開けてみるか……マリ、開けていいぞ」
宝箱を開けるなんて、本当に冒険者みたい! と期待で胸を躍らせていた私。それにエクスが気づいたのかどうかは定かではないが、開ける役目を譲ってくれる。
「え? いいの?!」
「ああ、俺は何度も開けているからな。マリは今回の功労者だし、初めてのダンジョン宝箱だからな」
「わーい、ありがとう!」
嬉しさから胸の鼓動が速くなっていく。宝箱に手を伸ばすマリの頭の中は、どんな中身なのかという考察でいっぱいだった。
……何が出るんだろう? 武器?
でも武器は私もエクスも多分必要としていない。
ならよくゲームであるのは装飾品かな?
けど、この世界にも攻撃力が上がる腕輪、とか魔力量が増える指輪とか、幸運のネックレスとか……そんな物があるのかな?
そんな時、私の指は宝箱に触れた。
宝箱を開くため蓋を持ち上げようとした私だったが、その前に真っ白い光が宝箱を包み込んだ。
「マリ!」
発光した宝箱を見たエクスが、私を引っ張る。少し離れた場所で、自分の身体に変化があるかどうかを確認したが……うん、問題なさそうだ。
エクスも私が無事だとわかって胸を撫で下ろしている。
安否が確認できたところで、二人で宝箱へと視線を送る。いつのまにか光は止まっており、宝箱の蓋も空いていた。
私たちは顔を見合わせて宝箱を覗き込む。そしてそこに入っていたのは――




