序文
初めまして。
私は転生者であり、生前の名前は雪峰千樹、この世界での名前はキュリオ。
現在の年齢は十歳。
この世界の黒色は神聖な意味があるということで、生前の黒髪黒目はそのままにして頂けたのだが、両親の容姿に影響を受けた、あまりにも前世の姿と懸け離れた美形に慣れ始めた今日この頃といったところだ。
前置きは程ほどにして、この事典は私が意図的に発動するか、二度目の命を失った際、その後の転移者や転生者の『スキル』として生成されるように出来ている。
ただし、私の故郷である地球のあった世界『メメンテ・ササラ』と、このファンタジーな世界『リヴァン』の他にも複数存在するという話であるため、同郷とは限らないだろうが。
さてと、私は色々と語りたいことがある。
自分語りは控えろと文句を言われかねないが、この感動や興奮を残しておきたい愚人の独白として許して欲しい。
何せ周囲の人々に話したところで苦笑されるか、引かれてしまうような話なのだから。
私は異世界にある地球という星の日本という国の出身であり、つい先日、事故によって三十歳で命を落としたが、黄泉の国で出会った女神を名乗る女性のご厚意により、新たな生命を得た。
初めは本来誕生する予定の赤子の命でも奪ってしまったのかと陰鬱とした心地だったが、子供の作れない身体の母に宿ったことを知った時は、心の底から安堵したものだ。
もちろん、父や母に転生者であることを告げることはなく、その必要はないだろう。
次にこの世界について。
ここはまさしく剣と魔法のファンタジーの世界であり、だからこそ、私の故郷である地球よりも遥かに文明が劣っている。
しかし、魔力で身体能力を強化し、魔法を用いる。
そのような世界だからこそ発展が遅いのは仕方のないことだ。
不便があるからこそ、人はより良いものを求め、より楽をできる道を模索するのだから。
ちなみに事典を活用する上で疑問に思うかもしれないため明記しておくが、私のスキルはあなた方よりも遥かに多いはずだ。
根本的にこの文章は同郷でなくとも読めるよう、文字や固有名詞は理解できるよう設定されているため、筆者たる私とは異なる世界からやって来たにも関わらず、自然にそれらの意味を読み取れている時点で不可思議だと思った読者もいるだろうが、その影響だ。
とにかく、私がこの世界の事典(自伝でもあるが)を作りたいという旨を説明したところ、女神だけではなく、多くの神々から膨大な量のスキルを授かった。
それは『悪用を禁ずる』、『世界の過度の発展を禁ずる』という条件付きだったが、神々も万能ではなく、何よりも彼らの世界にも法が存在するため、地道に世界の情報を収集して貰えることは助かるという話であった。
しかしながら、世界の時間は常に流れているわけであり、願わくば、私の死後にも同じ目的の誰かが現れ、この事典を追記してくれることを望むばかりだ。
まぁ、私が死ねば……の話ではあるが。
どちらにしても悪用も発展も程々にすべきだろう。
もちろん、過去の転移者や転生者についても調査するため、そういった行いをした結果、どうなったのかということもしっかりと伝えることが出来るだろう。
この世界は剣と魔法が存在し、危険な魔物も溢れ返っているため、皆がとにかく生きることに必死であり、魔物の生態も不明なものが多く、自然現象や事件、事故も謎に満ちていたり、権力者によって抹消されてしまう事柄も多い。
だからこそ、私は膨大なスキルを手に取り、多くの事象を調査して行こうと思う。
それでは長々と述べてしまったが、ここまで読んでくれたあなた方に感謝を。
せめて私が残すこのスキルがあなた方の役に立つことを祈っている。
さぁ、あなた方の新たな門出だ。
良い人生を。




