91. 教えて族長様!
【本話はこの世界における生態や魔力、魔法について掘り下げのお話。「総まとめだけ知りたい」と言う方は、本話最後に情報を整理していますので、そちらをご参照いただけますと幸いです。】
※本話は会話のみの進行
族長:「そもそも魔力とは何なのか。それを説明するためにも、まず基礎的な事から勉強していこうか。生きた道はそれぞれ違い、世界に対する見え方もそれぞれ異なるのだ。一つ一つ、知識のすり合わせをしていこう」
レイ:「すみません、ありがとうございます。僕も何となくで世界を見てたので、こういう機会はとてもありがたいです!」
族長:「ほほほっ、勤勉な猫というのも新鮮で良いな。それとティナも。もし儂が誤った事を言うていたなら、遠慮せずに割って入っておくれな」
ティナ:「は、はい。私もうまく説明できるかわからないですけど、できるだけ……はい」
族長:「ではまず生物の基礎である、『種別』についての話をしようか」
レイ:「あー、『ステータス』で見れる項目の一つですね! 僕たち化猫は『魔物族〈モンスター〉』ってでますよね」
族長:「その通り。この世界の生物は、四つの種別に区分できると言われている。
一つは我々化猫族も属する種別『魔物種〈モンスター〉』。魔力の影響を多大に受け、進化の過程で特殊な変異を起こした生物。生まれつき『技能』を持っていれば、大方この種別に当たると考えてくれて構わない。
次に、人間や動物が分類される種別『純種〈ピュア〉』。生物的な純粋な進化を続けている、魔力により変異していない生物。ティナや普通の猫も、ここに属しておるな。
そして前二つの中間、獣人やエルフ族と言った、人間に近しいが魔力による変異が少なからず見られる種別『混魔種〈ミックス〉』。魔物種〈モンスター〉と純種〈ピュア〉の混血もここに属しておる。
そして最後…………これは厳密には生物ではないのだが、地下迷宮内の魔素によって生成される『魔物擬〈ノンスター〉』。
今あげた四種別は、名前だけでも頭に入れておいて欲しいかな」
レイ:「魔物種〈モンスター〉、純種〈ピュア〉、混魔種〈ミックス〉と、魔物擬〈ノンスター〉ですね。はい、何となくですけど、理解はできます」
族長:「それにしては納得していない顔をしておるな? 何か思うことがあるのなら、何でも言うてみぃ」
レイ:「……あの、細かい点で本当に申し訳ないんですけど。何をもって「純粋な進化」としてるのか、とか。どれぐらい魔力の影響を受けてたら「多大な影響を受けた」とするのか、あんまり判然としませんよね。
…………そもそも『ステータス』を使った時、『種別』や『種族』って誰が判定してるんですか? 僕が『ステータス』を使って自分のことを知ったのは、僕が一歳未満の時です。当然その頃はこんな区別なんて知らなかった。それなのに僕が表示させた『ステータス』には、確かに僕が『化猫』の『魔物種〈モンスター〉』だって記されてた。これっておかしくないです?」
族長:「そ、それはまぁ…………「世界」がそう判別しているから、そういうモノと理解する他ない、かのぉ? ティナはそのあたり、どうかな?」
ティナ:「…………「世界」が判別してるっていうのは、間違いではないと思います。えっと、『この世界全体に、生物を解析する天級魔法がかけられてる』、ってイメージをしてくれたら良いかも。『ステータス』はその魔法の一部を覗き見れる、みたいな。でも、そんな天級魔法をかけた誰かがいるのかとか。世界の意思? でかけられてるのかは、ごめんなさい私もよく分かってなくて」
レイ:「うんん! 僕こそ細かくてごめんね! そんな世界の真理みたいな話、普通に生きてたら気にしなくて良いものだからさ。とりあえず! 「種別」については分かりました! はい! 以上!」
族長:「……やはり、レイだからこそ見える世界があるものか。その感性は今後も、大切にすると良いよ。さてそれでは、早速『魔力』について話をしようと思うが――ティナは魔力について、どう認識しておるのかな?」
ティナ:「……そう、ですね。『魔素から作られる、魔法や技能や能力を使うための自然のチカラ』、かな。いやでも、本で読んだんですけど、絵本とかに出てくる『天族〈エンジェル〉』が授けてくれたチカラとか、『精霊』が授けてくれたチカラとか……本によって書いてる事も違くて、よく分かりませんでした……」
族長:「ティナはとても勤勉だね。その年でそんな答えを言える子なんてそういないだろう。そう、魔力の解釈については、『天族信仰』か、『精霊信仰』かによって意見が分かれるところでもあるのは確か。しかしまぁこれは「起源」についての話ではあるから、今はそう難しく考えなくて良いよ」
レイ:「でも族長様。起源のことは抜いたら魔力って、ティナの言っていた「魔素から出来てる自然のチカラ」以上の解釈はないんじゃないです?」
族長:「いいやそんなことはないぞ。確かに自然界には魔素が満ちていて、その魔素を我々生物は取り込み、魔力を生成しているという仕組みは間違いではない。しかし重要な事は、魔力とは単に『魔法や技能や能力を使うためだけのチカラではない』ということ」
ティナ:「他にも役割がある、ってことでしょうか?」
族長:「そう。魔力とは『生命を維持するのにも用いられるチカラ』であり、『生命力のエネルギー』と言って良いものだ」
レイ:「ちょっ、ちょっと待ってください! え? じゃ、じゃあ魔法を使ったり技能を使ったり、能力を使ったりするのって、生命を削ってたって事ですか!?」
族長:「その通りではあるが、そんな深刻な話ではないよ。生命維持に直結する魔力は、『魂』という器に込められておるし、『魂』に内在する魔力はそう簡単に使う事はできん。それこそ、限界以上に魔力を使おうとでもしなければね。そこはよく理解して欲しい。レイ」
レイ:「な、何で僕名指しなんですか……? まぁでも、自重はします…………あれ? あの、今の説明なら、先に『種別』を説明した意味って何なんです? 関連があるから先に説明したんじゃないんです?」
族長:「魔力の性質を語るにあたって、種別の理解がないとややこしくての。実は、魔力の性質は『魔物種〈モンスター〉』と『純種〈ピュア〉』とで少々異なっておるのだよ」
レイ:「……うぁー、頭が痛くなりますね」
族長:「そう嫌な顔をせんでも良いよ。難しい話ではなく、お主の得意な感覚的な話となる。レイよ、お主は魔法を使ったことがある様だが、その際に『魔力の色』を意識はしなかったかな?」
レイ:「あーはい。ですです。火の魔法の時は、こうやって赤い魔力に変換したり、やっぱりそういうのあるんですね」
族長:「知識もなく感覚だけで魔力の色を変えるとは流石。普通はそう簡単にはできんものだし、実はその魔力の色は、お主の「上感覚」があるからこそ視認できているのだ。普通は魔力の色など見えん。相当な熟練の魔法使いの魔力ならともかくの」
ティナ:「あっ、あの。私も見えます。たぶん能力のおかげだと思うんですけど。レイの魔力、すごい赤くなってます」
族長:「……ははぁ、こればかりは流石としか言いようがないが、しかしそれならば話も早い。レイが体現している様に、『魔力は属性ごとに色を持っておる』。色の区分とは曖昧なものではあるが、八属性を認識してもらえれば良いかな。
火の魔力は赤色。水の魔力は青色。風の魔力は緑色。
雷の魔力は紫色。氷の魔力は空色。地の魔力は黄色。
光の魔力は白色で、闇の魔力は黒色。
そして認識してもらいたいのは、この魔力の色の変換について、『種別によって変換しやすい色、しずらい色が存在する』ということ」
レイ:「…………何だかややこしそうな話ですねぇー」
族長:「申し訳ない。もう少しだけ辛抱しておくれな。頭の片隅にでも置いておいて欲しい。まず、ここで知っておいて欲しいのは、『純種〈ピュア〉と魔物種〈モンスター〉では魔力の性質が真逆』ということ」
ティナ:「……性質が、真逆……?」
族長:「そう。魔物種〈モンスター〉は一般的に『氷〈空〉、雷〈紫〉、地〈黄〉』の三属性の色の魔力を基盤としておるが、純種〈ピュア〉はその真逆。『火〈赤〉、水〈青〉、風〈緑〉』の三属性を基盤としておるのだ」
ティナ:「それは……逆……? す、すみませんちょっと、メモしたいです」
レイ:「人は『赤青緑』を基盤としていて、魔物は『空紫黄』を基盤としている…………ん? もしかして、『光の三原色』と『色の三原色』の違いみたいなこと……? いやでもシアンマゼンダって少し色が違うか……それこそ性質の違いってこと……?」
族長:「シアンマゼ……ん? それはどう言うことかな?」
レイ:「す、すみません気にしないでください。えっと要は、人の魔力の色は『光』みたいな性質を持っていて、魔物の魔力の色は『絵の具』みたいな性質を持っているみたいな感じ、って理解で合ってます?」
族長:「合ってはおるが…………まぁ良い。その通りではある。人は『赤青緑』をベースとして魔力の色を変える。
例えとして、雷〈紫〉の魔力にするためには『火〈赤〉と水〈青〉の魔力』を組み合わせたり、な。
逆に魔物は、紫色が基礎にあるため混色の意識をせずとも雷〈紫〉の魔力を行使できる。そして、魔物が火〈赤〉の魔力を再現するためには、『雷〈紫〉と地〈黄〉の魔力』の組み合わせをら意識せねばならん」
ティナ:「……複雑ですね。でも、それじゃあレイのさっきやってた赤い魔力の変換は、難しいことをやってたって事なんですね…………あれ、でもちょっと、おかしいかもしれないです。それ」
族長:「……おかしい、とは?」
ティナ:「私、レイの基盤になってる魔力の色を見てみたんですけど、レイから『二色』の魔力が漂ってる気がするんです『風〈緑〉』の魔力と『雷〈紫〉』の魔力、です。
さっきの話だと、『雷〈紫〉』の魔力については説明の通りだと思うんですけど、『風〈緑〉』の魔力は組み合わせないとできないんじゃないかなって……」
レイ:「! …………族長様。魔力の色って、『魂』と関わってたり、しますか?」
族長:「…………『魂』に内在する魔力は、生まれつき色を持っておる。と言っても、生まれ持った色の属性のみしか生涯使えない、と言うわけではなく、努力次第で魔力の色の変換は可能ではある。得意不得意は、大きく関連はするがね。
そしてティナの認識してくれている通り、生まれつきの魔力の色は、基盤となる三色のいずれかである。人なら『火水風』、魔物なら『雷氷地』。つまりティナの疑問の通り、魔物であるレイが風の魔力を基盤としているのは、少々特殊な事ではあるかな」
レイ:「………………あれ? そう言えばティナの魔力って、虹色をしてるよね。それって能力の影響とかなのかな?」
ティナ:「…………うん。たぶんね。『魔導者』には魔法を補助する能力もあるみたいだから、それのおかげなんだと思う。レイの魔力も『上感覚』で人に化けられる様になったから二色ある、のかな……」
レイ:「……たぶんね。確実な事はよくわからないかも」
族長:「そうよの。確実な事はわからない。今すぐ答えを出す必要はない。だがきっと、そう遠くないうちにわかるのかも、しれんな」
レイ:「……すみません。ありがとうございます」
ティナ:「……えっと、その。気になることがもう一つあるんですけど良いですか?」
族長:「もちろん。何でも言うてみぃ」
ティナ:「あの、さっきあげてもらった属性の『光』と『闇』なんですけど、魔法の知識だけでも、すごい難しい魔法なんだってわかります。
それでさっきの話に当てはめて考えようとしたんですけど、魔物は光属性の魔法を使えない、であってますか? 魔物の魔力を『絵の具』って例えると、白い絵の具は混ぜてもできない気がするんです」
族長:「良い質問だね。その通り。結論から言えば、『人は闇属性を扱えんし、魔物は光属性を扱えん』、基本的にはな。ティナの理解の通り魔力の性質上、仕方がないことではあるが…………実はその性質を変える手段はいくつか存在はしている。その内の一つは、ティナも知っているかもしれんな」
ティナ:「…………覚級上位の魔法『魔力変換〈リバーサルマジック〉』、ですか……?」
レイ:「……???」
族長様:「その通り。きっとこれまで魔力の性質もわからんかったから、この魔法が何なのかもよくわからんかっただろう。
この魔法を使えば、一時的ではあるが魔力の性質を反転させることができる。しかし反転させた魔力をうまく使える魔法使いなど、この世界に一握り程度しかおらんがね。現状この魔法も、魔力研究の分野でしか使われんと聞くしな」
レイ:「まぁ、ティナに闇魔法なんて危険そうなもの使わせる気はないですけどね!」
ティナ:「うん。私も闇の魔法は使う気はないよ。でも、レイも闇の魔法は使っちゃダメだよ」
レイ:「もちろん! 僕は健全な猫だからね」
族長:「そうよの。儂も魔法に関して向き合う事は大切とは思うが、光魔法、闇魔法の領域にまで踏み込む必要はないとは思うとる。さて、魔力に関しては一通り説明したわけではあるが、もう一つ個人的にティナに聞きたいことがあったのだ」
ティナ:「? はい、何でしょうか?」
族長:「ティナは魔法を使う時『詠唱』をせんが、それは必要ないからしない、と言う認識で良いかな?」
ティナ:「あっ、はい。『詠唱』は知ってます。魔法を使うためイメージを整わせるためにするものですよね。私はその、使いたい魔法は覚級中位でおさまってるので使う必要もないのと、後、なんて言うか…………これまで使わないで魔法を使ってたから、ちょっと恥ずかしくて…………」
族長:「はははっ、可愛らしいのぉ。良い良い。詠唱は結局のところイメージの補い。詠唱をせずともその感覚が掴めているのなら、無詠唱で魔法を使っても何ら問題はない。
ただし『無詠唱で使える魔法でも、詠唱を加えればその魔法効果は上がる』。無詠唱は即時発動可能と言うメリットはあれど、詠唱した魔法と比べるとどうしても効果は下がってしまう。まぁ『魔導者』であれば、そのデメリットすら打ち消してしまうかもしれんが…………もしももっと強力な魔法を使いたいと願うのなら、詠唱も一つの手であることは頭において欲しい」
ティナ:「はい……わかり、ました」
族長:「どうしても人前での詠唱が恥ずかしいと言うのならば、覚級中位の魔法『即応魔法〈ストック〉』を使うのも良いかもしれんな」
ティナ:「あっ、確かにそうですね。
あっ、えっと、ね。『即応魔法〈ストック〉』って言うのは、『事前に詠唱を済ませることで、即時に魔法を使える様にする魔法』なの。でも、いくらでも溜め込んでおけるわけじゃなくて、蓄えられる魔法は三つまで。そんなに長い間は保存はしておけないんだ」
レイ:「へぇー、それは便利だね! なるほど、それなら僕もなんか魔法でも覚えて、溜め込んでみようかな」
族長:「それが良いだろう。さて、最後にもう一つ老猫の思いつきなのではあるのだが、詠唱は先に言った通りイメージの補いに過ぎん。つまり『感覚的』な問題となる。どうしても詠唱に対して慣れない言うのならば、君の隣にいる『感覚』に特化した猫がこの上なく頼りになることだろう。儂からお主らに言えることはここまでかな」
ティナ:「……! すみません。色々知らないこともあったので、すごい助かりました。ありがとうございます」
レイ「(とりあえず忘れない内に、あとで振り返っておこう……)」
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◆種別◆
・純種〈ピュア〉:人間、動物
・混魔種〈ミックス〉:長耳族、獣人族.etc
・魔物種〈モンスター〉:化猫族、小鬼族.etc
・魔物擬〈ノンスター〉:地下迷宮によって生成される生物の形をしたモノ。厳密には非生物。
◆魔力の属性と色◆
魔力:生命力のエネルギー。
生命を維持するのにも用いられるチカラ
火〔赤〕 / 水〔青〕 / 風〔緑〕
地〔黄〕 / 氷〔空〕 / 雷〔紫〕
光〔白〕 / 闇〔黒〕
基本的に常人は魔力の色を見分けることはできない。
感覚特化の「上感覚」や魔法特化の「魔導者」だからこそ、魔力の色を視認する事ができる。
更に例外として、魔法を極めた魔法使いの魔力は色が濃く、常人でも色を視認できるとされる。
◆魔法の難度順(純種)◆
赤/緑/青を原色とした性質を持つ。
〔火〕〔風〕〔水〕<〔地〕〔雷〕〔氷〕<<〔光〕
◆魔法の難度(魔物種)◆
空/紫/黄を原色とした性質を持つ。
〔氷〕〔雷〕〔地〕<〔水〕〔風〕〔火〕<<〔闇〕
◆得意属性◆
生物は生まれつき魔力に色を持っている。
生まれもった魔力の色は、原色である三色のうちの一つのみである。
全属性満遍なく扱える生物は稀である。
ティナ:全属性(能力「魔導者」による恩恵)
レイ:雷属性、風属性(転生による恩恵(?))
◆魔力変換〈リバーサルマジック〉◆
魔力の性質上、純種は『闇属性』を扱えない。
同様に魔物種は『光属性』は扱えない。
しかし本魔法を使用する事で、その魔力の性質を反転させることが出来る。尚、実戦で実用出来るほど容易な魔法ではなく、変換した魔力を扱う難度も高いため、現代において魔法研究以外の分野では全く使用されない。
◆即応魔法〈ストック〉◆
事前に詠唱を済ませておくことで、即時魔法を発動できる様にする魔法。魔法を三つ溜め込むことはできるが、長期での保存は不可能。
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