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幻想い足跡  作者: うさぎ
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『ィアナ』

『力』とは?ィアナは知らない……でもそれが守るためだけに存在するのなら、『力』は『力』であり、それ以外の何ものでもない。

 ......

 ......

「エラさん、本当に大丈夫?少し休んだ方がいいんじゃない?」ラナは星に支えられながら歩くエラを見て、心配そうに尋ねた。


「ありがとう……でも、大丈夫、わたしは傷ついてなんかいないから……。」エラは苦笑を浮かべながら答えた、星晶犬の力の欠片が最後に放った一撃――それは『絶対虚無』の衝撃だった、あらゆる概念も、定義も、属性も、設定も含まない、どれほど超越していようと、どれほど捉えどころがなかろうと、どれほど言葉で表せず、暗示さえもできず、ただ白紙を差し出すことでしかその不可知性を示せないような、沈黙以外に表現のしようのない『非在』そのものだった。


 衝撃そのものはエラに傷を負わせたわけではない。だが、虚無の衝撃は彼女の『元素』そのものにわずかな影響を及ぼしていた。深刻なものではないにせよ、やはりどこか嫌悪感を覚える感覚が残っていた。


 ふたりは再び沈黙に包まれた。周りには、ただ無限に広がる闇だけがあった。


 ィアナは隊列の先頭を進んでいた、無限の偵察人形が、大小様々な潜在的な脅威を排除しながら、進むべき時空間座標を探査していた、万が一に備え、幾体かの戦闘人形がエラの周囲を旋回している。


 普段から無口な星は、エラが『傷ついて』以降、完全に黙り込んでしまった、彼女は小心翼翼とエラを支えながら、うつむいたまま、長い前髪で顔を隠していた、しかし右手には冷たく鋭い短刀をしっかりと握りしめ、峻烈な光を放っていた。


 長く、果てしなく、そして寂寥とした薄暗い通路、「天穹」には星晶石が星々のようにきらめき、脈打つように輝いていた……重苦しい静寂が漂っている。


「あのね……。」エラは意図的に沈黙を破った「さっきの星晶犬、確かに強かったけど、『番犬』レベルには達してなかったわ、たぶんその子孫か何かでしょう……。」エラの声には笑いが滲んでいた。


「そうね!きっとそうなんだわ……。」ラナは無理やり笑顔を作りながら、前方を見つめた「あれ?また『気配』の違う新しい時空間座標かしら?『幽暗の間』はやっぱり思ったより簡単には進めないわね……。」

『幽暗の間』の核心会議場に到達するため、ィアナたちは無限の座標節点を探索してきた、だが、罠か敵かのどちらかでしかなかった。


 これまでの無限の座標節点に見られた、番犬のいる荒廃した時空間とは違って、この『無限の時空間』では、虚空の上に八つの精巧に彫られた石棺が整然と円を描くように並んでいた、「天穹」には星々のように輝く星晶石はなく、代わりに八つの石棺の中央には巨大な青白い光球が浮かんでいた。


 光球の前には、一人の少女の後姿があった、細く、で強情な後ろ姿……。


「ィアナ?」エラは星の支えを振り切り、ゆっくりと光球の前に立つ少女へ歩み寄った「どうしたの、ィアナ?この光球は……。」少女の背中は微かに震え、まるで何か大きな苦痛に耐えているようだった。


 エラの声を聞いて、少女は振り向いた、そこにはィアナと瓜二つの顔、同じ瞳、同じ黒い長い髪があった……ただ、いつも口元に浮かべていた陽だまりのような笑顔はなく、琥珀色の目にはきらめく涙が浮かんでいた。


「ねえ……エラお姉ちゃん……。」ィアナはエラに向き直り、必死にいつもの笑顔を作ろうとした、だが、目に浮かんだ涙が先にこぼれ落ちた「もし人が『記憶』によって生きているのなら……その『記憶』に裏切られたら……ィアナはどうすればいいの……。」


 青白い光はまるで呼吸をするように、明滅を繰り返していた。無音の時空の粒子が揺らめく中、ィアナの瞳から悲しみの涙がこぼれ落ちた「どうして……おかしいわ……涙が……涙が勝手に出てくる……あは……おかしい……あは……涙が……止まらない!」


 青白い光球が突然暗紫色に変わり、激しく明滅し始めた「ィアナ!危ない!!」エラは驚き、心の源が爆発しかけたが、誰かが彼女より速かった。


 虚空を切り裂くように紫の長髪が踊り、ラナはィアナの手を掴んだ、両手が触れ合った瞬間、紫色の光球が爆発し、眩い紫光が二人の姿を飲み込んでいった……。


 瞬く間に紫光が散り、エラの眼前にはもはや誰もいなかった。


「『拡張閉鎖』の時空魔法よ。」いつの間にかエラの傍らに立っていた星は、元の冷たい表情と口調に戻っていた「それに……記憶の匂いがする、追う?」


 エラは一瞬呆然とした後、目を閉じて首を振った「いいわ、ィアナは……たぶん答えを探しているの、彼女自身の答えを……。」目を開けると、周囲にはまだィアナが作った人形たちが旋回していた。

「行きましょう、星、ィアナを信じましょう。」

 ......

 ......

「ねえ……ィアナ姉さん……起きてよ……。」


 とある封印された『墓室』の中で、ラナは考えつく限りの方法で昏睡状態のィアナを起こそうとしていた、だが、容赦ない頬叩きから非道なほどに頬を揉み上げるまで、どれも効果がないようだった。


「ねえ……ィアナ姉さん……これでも起きないなら、ラナは……。」ラナは両手をィアナの胸の前で止め、揉む仕草を見せた、その顔には真剣さと焦りが刻まれていた。


「ィアナ姉さん!!」

 ラナは半狂乱でィアナの胸を揉み続けた、本当に起こすつもりなのか、それとも別の目的があるのか、もし前者だとしたら、明らかに目的は達成できていないようだった。そして……「んっ……」ラナの乱暴すぎる動作に、ィアナはかすかに喘ぎ声を漏らした。


「!ィアナ姉さん、早く起きてよ!!」ラナは顔を真っ赤に染めながら、ィアナの胸を強く叩きつけた。


 どうやら動作が大きすぎたようで......無限の星晶犬が引き寄せられてきた鈴のような目が辺りを見回すと、すぐにラナとィアナを見つけ、その眼差しは鋭く血を求めるようなものに変わった……。


 狂暴な気配が次々と伝わってくるのを感じながら、ラナはため息をついた「やれやれ……少し声が大きすぎたわね。」

 ゆっくりと振り向くと、紫水晶のように輝いていた瞳は次第に色を失い、死物のように空虚な眼へと変わっていった。


 ラナの声は機械のように冷たく響いた「マスターを傷つけるなら……このラナの屍を越えていきなさい。」

 心の源が渦を巻くように歪み、ラナの髪留めは消え、長い紫髪が乱れ散った、この時のラナを描写できる言葉はなく、ただ彼女自身だけが新たな『単位』として己を計り得る存在となっていた。

 ......

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