表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

Fase.1-4 Atonement for Imaginal

お久しぶりです。

今回は会話多めです。

2021.05.10. 東京




「カノンはさ、魔法や超能力って信じてるか?」


遂に、今までの出来事や家族の出来事の説明がなされるようだった。

私に関する、大事な話。

家族に関する、大事な話。


私は若干緊張しながら、レイさんの質問に答える。


「元々はそこまで信じてなかったですけど……。さっきのレイさんやウェイティングドレスの女を見てたら、そういう世界もあるのかなって思いました」


「ほうほう、なかなか思考が柔軟だなぁ」


レイさんはニヤニヤしている。素直に気持ち悪いなぁ……。

せっかくの緊張感が途切れそうだった。


「と、何でこんな質問をしたかと言うとだがな。ぶっちゃけ、この世界に魔法や超能力は実在するんだ。もちろん幽霊や妖怪や、神様なんかもね」


「……な、なるほど……」


どういう反応をしていいのか分からなかった。

 実際は驚くべき事実なのかもしれないのだけど……。


「まぁ全部ひっくるめて“異能”と呼ぶことにするが、この異能にはある原点があったんだ」


「原点、ですか?」


「そう。とある事象が起きるときには、必ず何かしらの原因があるだろ? 例えばオーロラの元は太陽風に含まれるプラズマ粒子と大気中の原子や分子と衝突してできるという原因がある。この異能にもそういった原因があったのさ」


「科学的に証明されたってことですか?」


 レイさんは腕を組んで険しい顔をする。


「うぅん。難しいことを訊いてくるなぁ……。まだ科学的には完全に証明はできていないというのが正しいかな。ざっくりとしたメカニズムがわかっただけで、科学的に実証したりはできていない。まだ研究段階なんだよ」


「それでも大発見じゃないですか」


「まぁ、それは本当にそうだな。人類史に残る大発見だろうな」


 そもそも、この世に異能力が存在することを証明できている時点でも相当な大発見だろう。

 歴史的にも魔術や超能力の歴史は文献では存在したが、まさか本当にこの世界に実在していたとは思わなかった。ましてや自分が目の当たりにするなんて想像すらしていなかった。


「それでだな、この事実は、異能研究機関であるEVANA(エヴァーナ)っつー機関が発見したものなんだ。俺もそこに所属している」


「EVANA……どこかで聞いたことがあるような……」


「東京のど真ん中にでっかいビルが建ってるだろ?」


「あぁ、あのスカイツリーを超えたビルですか?」


「そうだ。あれがEVANAの本拠地だ」


「あのビル、そういう機関の建物だったんですね。なかなか派手なことをする機関ですね……」


 スカイツリーを超えたビルとして一躍有名になった超高層ビル。5年前に突如建てられたあの建物は、一気に日本の象徴となってしまった。

 世界でも指折りの高層ビルらしい。


「ま、まぁ所長が随分と派手な人だからなぁ……」

「それでだな、その異能のメカニズムについてだ。カノンは何が原点だと思う?」


「えっと、うーん。そういう量子があったとか……?」


「おっと、思った以上に強い答え……。頭いいんだなぁ」


「そ、そんなことは……」


 少し照れる。

 少し科学には興味があったから、知っていただけの話なのだが。


「まぁ実際には違う。もしかしたら量子まで関係してくるかもしれないが、今のところは関係ないと言っていい」


「じゃあ何なんですか?」


「“想像力”だよ」


「想像力……?」


 そこで私はふと、レイさんと出会った時に言っていた単語を思い出す。

 “イマジナル”。

 想像することを英語でイマジネーションというが、そこから来ているのだろうか。


「あぁ。自身が想像したものが、現実に発現できることがわかったんだ。俺たちはイマジナルと呼んでいる」


「で、でも、それじゃあ誰もが何でもできるんじゃ……?」


「それがそうはいかない。この想像に対して、想像を信じる心が必要なんだ」


「信じる心、ですか」


 怪しい宗教団体の心構えみたいで少し不気味だ。


「そう。自分の考えたことは現実に存在するんだ、と本気で認識すれば発現する。もちろん個人差はあるし、できない人がほとんどだがな」

「ただ、この世に存在する異能力者は全員、イマジナルで異能力を使っているんだ。魔法や超能力と、各々呼び名は違うがな」


「なるほど……」


「そして、このイマジナルには3つの分類がある。“共信型”と“伝統型”、そして“想創(そうそう)型”だ」

「共信型は至って単純だ。同じ想像を持つ人が集まれば、想像を発現できるというメカニズムだ。例えば黒い弥勒菩薩を一人で想像しても、そう簡単には現出できない。だから、同じ想像をする人を集めることで、黒い弥勒菩薩が発現しやすくなるんだ」


「何でも、ですか?」


「まぁ何でもだな。ただそう簡単にはいかない。これの難しいところは、イメージをほぼ確実に共有しなければならないってことだ。形や色、性質などを正確に共有すればするほど、発現したものは強度が増す」


「結構難しそうですね……」


「あぁ。だが二つ目の“伝統型”は比較的簡単な分類だな。自身の家系などから受け継いで、自動的に発現できるようになる。おそらくこの世の異能力者はほとんどそうだろうな」


「そうなんですか?」


「あぁ。家系だけじゃなくても、物や修行などで受け継ぐこともできる。例えば魔法使いの家系の子供だったら魔法が使えるし、杖を買うことでその杖特有の魔法が継承される。色んな魔法を勉強すれば会得できる場合もある。確定じゃねぇけどな」


「じゃあその家系にいなかったり環境がなかったら、異能力は使えない、ということですか」


「それがそうでもない。ごくごく少数だが、何の影響も受けず、純粋に自身の想像したものを発現する異能力者もいる。それが“想創型”だ」


「想創型……」


「異能力の元祖や、特殊な異能力を使うやつに見られる型だな」


「そうなんですね……」

「あの、ひとつ質問、良いですか?」


「おうなんだ、なんでも質問してくれ」


「あのウェディングドレスの女を残霊と言ってましたけど……」


「あぁ、あいつかぁ。あれは共信型から生まれた生物を指す名前だ。意図的に出したかどうかは関係なくな」


「意図的?」


「共信型は基本的には意図的に発現するものだが、無意識に発生する可能性もあるんだ。例えばトイレの花子さんの噂が広がったとする。そのディテールが細かければ細かいほど、花子さんは現実に生まれやすくなるんだよ」


「都市伝説とかが現実に現れるってことですか……?」


「まぁ噂や都市伝説は懐疑心のおかげで完全に顕現はできないがな。見える人と見えない人がいるのも、それが原因だ。まぁあのウェディングドレスの女も、都市伝説なんかで生まれたものだろう」


「そうだったんですね……」


 私は少しの疑問を抱く。

 あんなウェディングドレスの女の噂や都市伝説は聞いたことがない。私が知らないだけかもしれないが、なぜ私の家族を襲ったのだろうか。

もしかしたら意図的に生み出されたものなのだろうか……?


「さて、イマジナルの話はこんなところだ。次はお前に関する話だ」


「は、はい……」


「まぁさっき説明した通り、イマジナルには3種類の分類があるわけだが。お前は、想創型のイマジナルが使えるんだ」


「え……」


 私が……?

 さっきの魔法や超能力を使えるという事……?

 しかも、少数と言われている想創型?


「ちょ、ちょっと待ってください、そもそも私はイマジナルが使えるんですか?」


「あぁ。それもとびっきり強力なな」


「……」


 信じられない。

 さっきまでの話は半分人事だと聞いていた部分があったが、私自身もそうだったとは……。


「何を呆けた顔してんだ。話す前に言ったろ、お前のことについて話すって」


「そ、そうでしたね、すみません、ちょっと現実味がなくて……」


「まぁいい。それでだ。さっきも言ったように、お前の両親は一年前に死んでいる。お前の住んでいる町もその時に崩壊した。だがお前はその町で、死んだ両親と暮らしていた。あとはどういうことかわかるな」


「……」


 どういうことかわかるな。

 レイさんは、私にこう言いたいのだろう。


 あの家族は、私の妄想が作り出したものだ、と。


 到底信じられない。

 今まで過ごしてきた日常が、私の作り出したものだったなんて。

 “本当の”、家族じゃなかったなんて。


 だが、少しの心当たりはあった。

 一年前のことを覚えているわけではないが、家族との生活に、いくつか違和感がなかったわけではなかったのだ。

 朝食や夕食には私の好物が出やすかったし、お父さんも私が休んでほしいときに仕事が休みになっていた。


「あと、お前は重罪人だ」


「――え、えぇっ!?」


 さらっと重要なことを言われた!?

 一年間私が妄想で作った家族と過ごしていたという事実よりも、衝撃的だった。


「まぁ知らずにやったことだから仕方ないが、人をイマジナルで想創することは禁止されてるんだ」


「ほ、法律とかでですか……?」


「んーまぁ司法の法律には書いてないが、EVANAの規則には書いてある。これをすれば死罪だ」


「ええぇ!?」


 重要なワードの応酬だった。

 驚きすぎて疲れてきた……。

 いきなり私は死刑囚になってしまったのだろうか……?


「とは言いつつも、まぁほぼ確実に死罪にはならんだろう。ある程度自由はきかなくなるだろうが」


 し、死刑にはならないのか……。

 とりあえずは安心する。


「か、監禁とかされるんですか……?」


「そこまではしねぇよ。とりあえずお前にはEVANA専用の寮に入ってもらって、イマジナルについて正しく学んでもらう。EVANA学園でな」


「EVANA学園……」


「関係者たちは“学園”と呼んでいる。今はそこに向かってる途中なんだ」

「ちなみに、お前の頭についてある装置が、イマジナルを制限する装置だ」


 私は後頭部ついている半円状の機械に手を当てる。


「イマジナルが発動しそうな脳の反応時に、強制的なノイズを発生させるんだ」


「なるほど……」


 レイさんはふぅと、小さい溜息をついた。

 随分と長く話し続けていたから、随分と疲れているのだろう。


「お疲れ、なかなかわかりやすい説明だったわ」


 レイさんの通信機から声が聴こえてきた。結白さんの声だ。

 本当にずっとレイさんの説明を聞いていたらしい。


「高みの見物とは、良いご身分なこって」


「見物ではないけれどね。上から通達が来たわ。その子は死罪にはならないって」


「おぉ、やっぱりな」


「よ、よかったぁ……」


 私は大きなため息を吐きながら胸をなでおろす。

 さすがに突然車に乗せられて、処刑場に連れていかれたんじゃたまったものじゃない。


 レイさんが結白さんと何やら専門用語で色々話している間、私はもう一度、過去の生活を振り返っていた。

 両親は本当に死んでしまっていたのだろうか。

 これからも会うことはできないのだろうか。

 

 突然、家族がいなくなる。


 こんなこと、考えてすらいなかった。

 おそらく一年前の私もそう思って現実逃避し、幸せな生活を想像したのだろう。

 その想像で、本当の現実から目をそらし続けていたのだろう。


 だが、今はこの装置のせいで、それすらもできない。


 家族も、家も、生まれた町も失った私には、もう居場所がなくなっていた。


 しばらくすると、車は次第にスピードが緩まり、ゆっくりと止まった。

 それと同時レイさんがドアのロックと私の手錠を外す。


「よし、とりあえず着いたな。出るぞ」


 レイさんはそう言いながら外した手錠をそこらへんにポイと投げ捨て、ドアを開けた。

 あまり手錠には意味がなかったようだった。


 私はレイさんに招かれるままに外に出る。ずっと光が遮断され車内だったせいか、随分と太陽の光が眩しく、思わず目をギュッと閉じる。


「見ろ、あれがこれからお前が過ごす場所だ」


 目を開けると、目の前には大きな円盤状の建物があった。支柱一つだけで円盤が支えられている、不思議な建物。

 昔よく見たSF映画の建物を連想させる。


「え……、ここ、どこですか……!?」


 その光景を見て、私は唖然とする。

 明らかに日本ではない。


 さっき車の中でどれだけ気を失っていたかはわからないが、日本を出るまで移動しているわけではないだろう。


 しかしこんな建物は一切見たことがなかった。


「んーまぁ、詳しいことは言えねぇな。お前に言えるのは、これからのお前の住む居場所だってことくらいだ」


「居場所……」


「あぁ。お前は家族を失った。それは紛れもない事実だ」


「……」


「それにすぐに向き合って切り替えろとは言わねぇ。あんな想創をするくらいだから、よっぽど家族のことが好きなんだろうな」


「……はい……」


 私は再び今日までの家族との生活を思い返す。

 温かい記憶。心地よい光景。

 それを思い浮かべ、涙が零れそうになる。


「だが、お前は失ったからと言って、ずっと0になるわけじゃねぇ。家族がいなければ一生孤独だ、なんてことはない」


「……」


 レイさんは涙ぐむ私の頭にポンと手を置いた。

 優しく、大きな手のひらだった。

 そして私の目線にまでかがんで、優しく語りかけてくれた。


「これから増やしていこうぜ。お前の居場所。俺も、お前の居場所だ」


「レイさんも……」


「あれ、ちょっとハズイこと言っちまったかもな」


 レイさんは咄嗟に手を私の頭から離し、頭をぐしゃぐしゃと掻く。


「ま、まぁこれからこのEVANA学園が新しい居場所ってことだ。言っとくが何も甘やかす場所じゃないから、気を抜くんじゃねぇぞ」


「イマジナルを学ぶだけじゃ、ないんですか……?」


「まぁ学ぶっつっても、今俺が話したことが大半だし、あとは歴史くらいしか学ぶことはねぇ。どちらかっつーと実践が多めかもな」


「実践ですか……。戦ったりするんですか」


「まぁ、それはまたおいおい話すさ。まだ初心者のお前を前線に出すわけにもいかないしな」

「まずはお前のイマジナルの力をしっかりと制御しなきゃならん。おそらく俺がお前の専任教師になると思うから、覚悟しておけ」


「……はい……!」


 こうして、私の新たな居場所が見つかった。

 家族のような温かく、心地よい場所じゃないかもしれない。

 これまでの平穏な生活は過ごせないかもしれない。


 でも、ずっと0になるわけじゃない。

 これから私がどうなるかはわからないけれど、少しの不安と期待を持って、私は車から降りた。

さて、今作の設定をもりもりに盛り込みまくりましたw

少し強引だったなぁとも思いますが、今後の話の都合上、ここでまとめて紹介しておく必要がありました。

あまり会話文を多用するのは苦手なため、少し拙い文になっている可能性があります。もっと成長していきたいですね。


今回でFase.1の過去編は終了します。

次回からもお楽しみください!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ