第6話 初めての戦闘②
「・・・う、嘘・・・だろ。」
奴が立ち上がると同時に僕の心に絶望が生まれる。・・・プチとはいえ、龍のブレスだったんだぞ。それをまともに食らって動けるだなんて・・・。
「グルァァッッ!」
「うわっ!!」
僕が呆然と突っ立ているといつの間にか近づいてきていたブラックウルフが飛びかかって来た。
くっ!呆然としてる場合じゃなかった!!今はこの状況をなんとかしなければ!!まず、手負いのブラックウルフから距離を取り考える。
そもそも、相手だって無傷ってわけじゃない。どころか、所々焦げているし、血も無視することはできないレベルに出ている。どう考えても重傷だ。それでも、相手は引く気がないようだ。手負いだからって油断はできない。相手の方が30もレベルが高いし、手負いの獣には気を付けろとも言うし。よし、隠密を使ってから背後に回って奇襲をかけよう。その前にMPの残量の確認だ。
MP:400/800
さっきので半分も持ってかれてる。もう一度ブレスを放つのは危険だな。挑むなら接近戦か。幸い、向こうは重傷で動きが鈍ってるからいけるかもしれない。それじゃあ、『隠密』発動!!
ブラックウルフは急に僕が消えたからと惑っているみたいだ。これならいける!!すると、奴は鼻をスンスンさせてから、僕の方を向き、フラフラしていた足でしっかりと地面を踏みしめ、
「ガウッッ!!」
吠えた瞬間、石の槍がメキメキと音を立てて地面から現れ、僕に向かって射出された。
「くっ!?」
なんとか転がて回避することに成功する。今の魔法か!?そういえば、説明文に魔法を使える個体もいるって、書いてあったな!!となると、今のは土属性かな?なるほどね。石壁みたいのを作って、衝撃を防いだのか!くっ、子供の頃の僕なんかより、何倍も頭いいよ!?なんかショック!!自虐はここら辺にして、戦いに集中だ。それにしても、『隠密』を破るなんて・・・手負いの獣には気を付けろ、か。先人達の教えは尊いな。
ブラックウルフはいつでも飛びかかれるように、身を屈める。対して僕は瞬時に龍の鱗で鞘を作り、それに短刀を納め、腰を落とし、居合いの構えを取る。居合い切りを選んだ理由は訳は体を屈めて的を小さくしたいのと、その速度が技の中でも最高峰だからだ。片手打ちになり、威力は落ちるがその辺は龍の爪で作ってあるから、見た目を真似して刃を付けただけでも、相当な切れ味が保証せれている・・・はず。だから大丈夫!・・・かな?ともかく、『直感』が大丈夫だと言っているし、問題ない。うーん、このまま受け身でいいのだろうか?なんでも神夢想林崎流では「居合いの生命は電瞬にあり」だそうで、さらに「神速応変の出口(抜付)は一瞬の間に在り、敵意を感じさせない出口(抜付)は間の抜けた死太刀となり、武技にあらず。」だそう。敵意を隠すのは行けそうだ。いじめられていた時に敵意を悟られないようによく隠していたから。よし、やってみよう。
隠密は解かず、気配と殺気を押し殺しながら、普段通りに歩き、ブラックウルフに近づいていく。奴は今度こそ、僕を見失ったみたいで、辺りを見回している。少しずつ近づきながら、左手で鯉口を切り、物打ちあたりまで抜いたら、鞘を倒し、柄に右手を乗せる。そして、ついに奴を間合いに捉え、さらに右足を一歩踏み込み、重心を移動させ、抜刀する。ブラックウルフはその前に僕の接近に気が付き、左前足を振り上げたが、しかし、すでに遅く、
「フッッ!!!」
「ギャンッッ!!」
僕はその振り上げた左前足をSTR800に任せて骨を切り、両断。ブラックウルフは叫び声を上げつつも、右に跳躍し、その際、僕に向かって石の槍を作り出し飛ばしてきた。それを右足を軸に左に回転することで回避。それによって、僕とブラックウルフは正面から睨み合う形になる。
「グルァァッッ!!」
「チッ!!」
先に動いたのはブラックウルフ、左の前足が半分程の長さになり、左に体が傾き、地面に傷口が触れ、血も大量に出ているのにも関わらず、吠え、僕のいる場所に石の棘を無数に出現させた。僕はそれ上に飛んで、回避する。その際、何本か体をかすったが、キンッと音を立てて龍の鱗が弾いた。さらに、空中にいる間に翼を外套に穴を開け、出現させ、『飛行』を使用する。そのまま天井に向かい、ブラックウルフに向け、刀を上段に構え天井を蹴り突撃する。相手が魔法を使う前に精霊術を使い、目を潰す。
「『フラッシュ』ッ!」
「ギャインッッ!!!」
そして、間合いにあと少しで捉えられる所に来たら、空中で縦に回転し、遠心力を付け、そのままの勢いでブラックウルフの脳天に刀を叩きつける。
「ハアァァッッ!!」
「ギャンッッ!!」
刀は頭蓋骨と顎を砕き割り、頭を両断した。ブラックウルフはふら付きながら数歩後ろに下がり、倒れた。その体はしばらく、ピクピクと痙攣していたが、やがて動かなくなった。それを見届けた僕はようやく、
「シャアァァッッ!!!!」
勝利の雄叫びを上げた。