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94話 打ち上げと今後

 食後のティータイム時。ちなみに、中華デーなので、お茶は烏龍茶、お茶請けに桃饅頭を用意してみた。


「さて、武闘祭で話も9割方終わったし……後は最後の祝勝会兼打ち上げの時の話くらいかな。聞く?」

「聞くー」「お聞きします」「当然」


 ということで、武闘祭最終日の祝勝会の話をすることになった。


 まあ、あの時の会話のほとんどは、武闘祭とはあまり関係がなかったけど……





       ――――――――――





「一年生全戦全勝おめでとぉーーうっ!!」


 その日の夕食後にもまた、アキ主催の元、祝勝会兼打ち上げが開催された。


「にしても。加藤さんが捕まらなかったのが残念でならない!」


 アキの言う通り、今回は加藤さんは参加していない。夕食時に食堂では見かけたのだけど……


「今回は、萩さんの行動の方が早かったようですね」


 蒼月さんの話では、今日の加藤さんトリオは萩さんに押されてかなり早めに食堂に来て、早くに食事を済ませて出て行ってしまったらしい。


(んー……萩さんには、なんとなく避けられてる気がするんだよね)


 とはいえ、萩さんがあからさまに加藤さんの間に立って、彼女に近付くのを妨害しているという訳ではない。

 ただ、加藤さんと仲良くなりたいと思って近付こうと思うと、いつの間にか加藤さんトリオが見当たらない、という事が何度かあったので蒼月さんに聞いてみたところ、


「おそらくは萩さんが動いたのでしょう。彼女は、透華様のお目付役的な立ち位置にいるようですので……違和感なく加藤さんへ近付けないように、透華様含む周囲の人を誘導しているというか……そう行動している節がありますわ」

 

らしい。前回不覚にも?僕らに加藤さんを連れ去られたので、ガードを固くしたのだろう、とのこと。

 ようするに、加藤さんを連れ去りたいなら、前回のような突発的行動をしなければ難しいらしい。


 まあ、そんな訳で加藤さんは不参加な訳だけど。


「加藤さんを誘えなかったのは残念だけれど、祝勝会を止める理由にはならないわ」

「ですよねーパクパク」

「よね〜チュルン」


 気にせずスイーツざんまいするヒロとパフィンさん。可愛い。


 ちなみに今回のお茶会は、紅茶と水城家ベリージャムで作ったゼリーだ。


「とりあえず。今回も祝勝会を開いてくれて、ありがとね」

「ふっふーん当然っしょ!」

「俺の実力じゃあ絶対無理だからな、同じ一年生として友人として、誇らしいぜ!」


 元気よくふんぞり帰るアキと雅。仲良し。


「さてそれはそれとして。みんなが集まっていてアキが元気な今日の内に、話を進めたいんだけど」

「んみゅ?」


 唐突な話題変換に、不思議そうな顔になるアキ。


「多分アキ、明日にはお祭りテンション収まってるだろうから。今のテンションの内に次のお祭りの話を進めたいなって思ってね」

「あーそーね、多分明日にはテンション激下がりしてる自信あるねぇ」

「次……というと、学園祭かしら」

「ん、その通り」


 サチさんの答えに頷く。


「優輝のメイド喫茶の話か」

「豚角煮丼屋さんですね!」

「スイーツカフェの話ね〜」


 ……なんか前相談したのと違う答えが来た。それぞれの欲望ダダ漏れだった。


「……ライブクッキング……」

「それそれ」


 月影ちゃんが真面目に答えてくれる。


 前回決めたのは、調理室を使ってライブクッキング形式のお店にするという方向性と、大雑把な役割分担を決めただけだ。


「みんなの意見が聞きたいんだよ。全員が料理部じゃないし、各部活の出し物もあるしだろうしで、こうして友達全員が一堂に介してゆっくり話し合える機会が今後あるかわからないからね」

「なるほど、了解しました」


 僕のお願いに、料理部でないメンバーも快く了承してくれた。


 というわけで。


「まずは、どんな料理を提供するか、だけど」

「ぶt――」

「豚の角煮はダメ」

「ナンデ!?」

「ライブクッキングとして華がないからだな。煮物系は基本却下だ。ただでさえ時間のかかる豚角煮は論外だな」

「そんなー」


 姉さんの解説に、ションボリ顔で僕の方を見るヒロ。そんな同情を誘う顔してもダメだよ。可愛い。


「でもよ、肉料理は外せないよな! ステーキステーキ!」

「メインとして魚介類も一品あった方が良いよねぇ。ビーフorフィッシュ?」

「それって、飛行機の機内食のアレよね。あ、でも今はチキンも含めて3択じゃなかったかしら」

「んじゃめなぁ、メインはみっつでいんじゃな〜い? あとスイーツ〜」


 ん―……牛、鶏、魚を一品ずつか……メニュー的には良い案だとは思うけど、三品はさすがに手間的にも予算的にも……うん?


「月影ちゃん、どうぞ」

「(こくり)」


 小さく手を挙げていた月影ちゃんの意見を聞く。


「……魚……秋は、シロダイ……が、質も価格も良い、かと……」


 低予算で済む美味しい魚の提案だった。牛と鶏は僕でもすぐ思いついたけど、魚はすぐには思いつかなかった。


「シロダイね。さすが知識の宝庫月影ちゃん、ありがとね」

「……ん」


 感謝を述べると、頬を赤らめ俯く。可愛い。


「後はサラダとか、パンかライスとかだけれど……どっちもライブだと、華としては地味よね」

「ご飯モノなら、大きな鍋で炒めれば美味しそうで良いと思います!」

「それな〜、あとスイーツ〜」

「何らかのスープは欲しいですわね。ライブには向いていませんが」

「でもまあ、汁物はあった方が良いよね。スープ作りは裏方さんに任せて、現場でよそえばライブとしては十分なんじゃないかな」

「スイーツ!!」

「それは最後に考えるからね」

「ほ〜い」


 こうして、様々な意見が交わされ――





「メニューの発表をします。


 ご飯物は白米と、キノコ・玉葱・パプリカのパエリア風炒飯の二種。

 サラダは、豆苗とコーンのサラダ。

 汁物は、卵豆腐とカイワレのスープ。

 メインは二種。牛モモ肉のステーキ・赤ワインソースがけ、シロダイのポワレガリトマソースがけ。

 スイーツはクレープで、生クリーム&ミックスベリージャムがけ。

 ドリンクはアイスティー。


となりました。これを部長に提案します」

『はーい』


 僕の読み上げに、パチパチと拍手と共に賛同してくれるみんな。

 出来るだけ食材費を抑えつつコースメニューとして成立させつつ、ライブで映える料理をと話し合った結果、こうなったのだけど……うん、良い感じじゃないかな。

 ちなみに、スイーツのみコースから除外する事も可能で、単品購入も可能にする予定。甘いの苦手な人もいるだろうしね。


(というか、水城家ジャム大活躍だなあ……今日のゼリーもそうだし。なんか嬉しい)

 

 で。後は、出来るだけ安価で購入出来るように、月影ちゃんの知識・情報量に頼るくらいだ。定期的にチョコ菓子を作って差し入れてあげよう。


 さて、料理に関してはとりあえずここまでにして。次は、各人の役割のおさらい。


「料理の分担は、炒飯とメインの魚が僕で、アキは牛、サブ料理人として月影ちゃん。スイーツはパフィンさん。接客のメインはヒロと姉さん、サブでパフィンさん。集客担当はヒロと月影ちゃん、サブでアキ。サラダとスープは、裏方の部長さん副部長さん……こんな感じで良いかな」

『はーい』


 役割分担に感しては前に大雑把に決めていたので、わりとすんなり決まった。


 ちなみにパフィンさんは最初、自分で食べるわけではないクレープを作るなんてヤダヤダ〜と駄々をこねていたけど、本番までの生地焼き練習で作った奴は全部食べて良いと言ったら即OKしてくれた。チョロい。


 さて……次は服装の話だけど。


「食事処の華といえば女給、女給の花形といえばメイド服が喫茶にて最強」

「わかりますわ! 私も……いえ! 服飾部も、全力でサポートさせていただきますわ!」

「うむ、元よりそのつもりだ」

「えー」


 ということになってしまった。接客係ならまだしも、調理メインの僕までメイド服になる理由はないと思うので渋ったのだけど、


「服飾部の宣伝にもなりますので、是非に!」


と蒼月さんに熱烈に迫られたので、仕方なくOKした。あれ絶対蒼月さんがみんなのメイド服作りたいだけだよね。


 他には、調理室の壁をレンガ風の貼って剥がせるシール壁紙にしようだとか、調理姿を余すところなく魅せるためにキッチン周りをクリアなアクリル板で囲おう等、内装の話で終わった。


 うん、予想以上に話がまとまった。持つべきものは友達だね。ふふふ、満足満足。

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