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33話 2人1組になって下さい

「は~い、午後の訓練の時間ですが~。始める前に、軽く「敵」に関して復習しましょ~」


 準備運動後、先生がそんなことを言い出した。


「では、そうですね~……巻さんっ。私達の「敵」とは、なんでしょうか~?」

「えっ、私っすか!? えっとっすね……魔神と魔獣っすかね」

「はい、その通りです~」



 ――魔神。

 この世界以外から侵略してきた天人てんじん。守護者と同じく、神話級精霊剣と契約し、不老となった超越者。


 ――魔獣。

 魔神がこの世界に放った不定形の謎の生物、通称「魔物」に取り込まれ、正気を失い無差別に生物を襲うようになった生物の総称。

 魔物は、RPGでいう所のスライムのようなゼリー状の生物。半透明でどこにでも潜り込めるので、全体数を把握出来ていない。

 つまり今現在も存在しており、時折魔獣が発生しており、定期的に見回り・駆除をする必要がある。



 簡単に説明するとこんな感じだ。このことはまあ、この国に住む者なら一般常識レベルで知っている。

 さらに詳しい事は、多分座学でやるだろう。


 ちなみに魔獣は、主に魔神の封印地付近で発生しやすく、封印地から一番近くにある村……僕の住んでいる村の事だけど。常に村の者が周囲を見回っており、咲様を筆頭に戦える者が発生次第駆除している。


 僕と姉さんも村にいる間は、魔獣駆除には結構な回数参加していたりする。実際にこの手で魔獣にトドメを刺した事も何度もある。


「魔獣への対策ですが〜……ここはやはり、経験者に聞くのが1番でしょうか〜」


 ……うん、まあ。話の流れ的に。


「水城 優輝さん。魔獣と戦う時の注意点を述べて下さい〜」


 だよね。クラスメイトが少しザワつくけど、当然の反応かな。ほとんどの人は、戦った事があるどころか生で見た事すらないだろうし。


「絶対に一人で戦おうとしない事。完全に活動停止するまで油断しない事。色が変わるまで目を離さない事、です」


 魔獣になった生物は、不自然な程真っ黒か真っ白になる。取り付いた魔物が離れるか死亡すると自然な色になるので、それがトドメの基準になる。


「はい、正解です〜。では次に、今挙がった答えですが。その理由を水城 瑞希さん、お願いします〜」

「1番目は、安全を確保するため。2番目は、魔獣はまともな生物ではないため。3番目は、魔物が生命活動を完全に停止したかを見逃さないため」

「はい、だいたいそんな感じです〜」


 うん、無難な解答だ。多少大雑把ではあるけど、必要最低限は答えている。


「魔獣に関しては、今はこのくらいにしまして〜……とりあえずみなさん、出席番号で、前後の人と2人1組になって下さい〜」


 言われた通り、みんなツーマンセルになり整列し直す。僕は番号的に姉さんとだ……魔獣駆除の時も姉さんと一緒だし、いつも通りだけど。


「天井君よろしくねー!」

「あ、ああ、よろしく頼む」

「よろ~。ん~と……名前なんだっけ?」

「北だよ……ああ、やっぱり俺はモブなんだなぁ……」

「うっほラッキー! 鯨井さんよろしくぅ!」

「よっよよよよろしくおねがいしままま」

「落ち着きなさいヒロ。大丈夫よ、ちょっとでも変な事しそうになったら息の根止めるつもりで叩き斬るから」

「それ俺が大丈夫じゃねえよ!」

「……あの、塩谷さんと組むの俺、だよな?」

「わかってるわよチェーン君、無視したわけじゃないから。ただ、コイツに一言釘刺しとかないと、絶対偶然を装って痴漢行為するだろうから」

「佐藤、お前……するつもりなのか?」

「しねぇよ! ……多分」

「ネネネネっネイ先生ぇ~……」

「ふふふ~、今日だけでも我慢しましょうね~」

「巻さん、よろしくな!」

「よろしくっす。でも私、戦闘より治癒術の方が得意なんで、間崎君の役に立つかわかんないっすけど」


 友達の声に聞き耳を立てていたけど、ヒロと佐藤君の組以外は問題なさそうかな。

 助けに行きたいけど、ネイ先生も今日だけ、といっているし。授業を妨げてまで助けに行くのは、色々とよろしくないだろう。


 頑張れヒロ。いつでも誰かが助けてくれるとは限らないのだから。


「さてさてみなさん。組になって頂いたのは、先程の注意点、「一人で戦わない」の実践です~。詳しくは座学でやりますが、とりあえず……飯屋峰君、ツーマンセルで動く利点の具体例を1つ、挙げてください~」


 ふむ……まあ、姉さんが言った「安全を確保する」は、抽象的で具体的ではない。姉さんは、面倒臭がってワザとそう言ったんだろうけど。


「うむ。我の素晴らしき力を喝采す」「違います」


 即行で否定された。


「ヌムッ!? 何が違うと言う」「違うとはいえ1つ挙げたので黙って下さい。それとも、黙らさせられたいですか?」

「む……ふん、まあ良い」


 笑顔で教育的指導はらパン予告をされて黙る飯屋峯君。ほんと、俺様系だなぁ。


「塩谷さん、挙げてください~」

「は、はい。一人が攻撃、もう一人がサポートに徹する事で、生存確率・討伐確率共に上げられます」

「はい、良い答えです~」


 唐突に振られたけど無難に答えられたからか、安堵した顔をするサチさん。


「今日はツーマンセルにしましたが、それが最低限の人数だと思って下さい~。理想はスリーマンセル、多くてもフォーマンセルですね~」


 理想とされるスリーマンセルの各人の役割は確か、1人が攻撃、1人が後方からの指揮と援護攻撃、1人が治癒術や防御結界などの補助だ。

 フォーマンセルの場合のもう1人は、攻撃役を増やすか、臨機応変に動けるオールラウンダーが理想、だったかな。


「戦闘隊形についてはこのくらいにしまして。いよいよ訓練開始ですよ〜」


 やっぱりイマイチ緊張感が出ない声だけど。ようやく、戦闘訓練開始となった。

説明会は難産。(言い訳)

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