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【完結】竜杖球 ~騎手になれなかった少年が栄光を手にするまで~  作者: 敷知遠江守
最終章 飛翔 ~代表時代(後編)~

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第53話 組合せ抽選会

 日付が変わって夜の一時。

 竜杖球の放送局が国際竜杖球連盟の大催事室からの中継を開始した。


 国際竜杖球連盟の本部は、中央大陸西部の国、ブリタニスの首都ロンデニオンにある。何年か前にロンデニオン市は民衆反乱で滅茶苦茶になってしまったのだが、その後、多額の復興予算が投じられ、中心街は完全に復興が終わっている。


 大催事室には丸机と椅子がいくつも設置されており、そこに各国の連盟の関係者と監督が腰かけて談笑している。その中の一つ、瑞穂の席が映し出された。連盟の武田会長が連盟の部長と歓談しており、相変わらず大沢監督が椅子にふんぞり返って連盟の職員を睨みつけている。


 しばらくそんな光景を映していると、急に映像が催事室の奥、台を敷き詰めて少し高くなっている舞台を移し出した。


 拍手と共に国際竜杖球連盟のダニエル・ウィルミントン会長が姿を現す。手を広げて拍手を止めてから、ウィルミントンはブリタニス語で演説を始めた。


 ウィルミントンは中々に低く通る声をしている。中継ではそれを通訳が同時通訳しているのだが、通訳が女性なせいで非常に違和感がある。

 演説の内容は実に月並みで、この日無事迎えられて嬉しい的な事を長々と喋っているだけであった。


 長々としたウィルミントンの話が終わると、舞台の上に透明な器が運び込まれて来た。その中には黒塗りの球がいくつも入れられており、器の前に「Pot A」という札が置かれている。

 さらにもう一つ器が運ばれてくる。そちらには「Pot B」という札が置かれている。

 さらに後方に大きな壁のような白い板が、数人の職員の手によって運び込まれてきた。板には大きな四角の枠が六つ描かれており、それぞれ「Group A」「Group B」「Group C」「Group D」「Group E」「Group F」の枠名が付けられている。


 全二十四か国を、これからこの六つの枠に振り分けて行く事になる。


 二十四か国の内訳は太平洋・瓢箪大陸、斧刃大陸、中央大陸中部、中央大陸西部東地区、中央大陸西部西地区が各四か国。中央大陸東部が二か国、それと前回優勝国と開催国。なお、前回優勝国は中央大陸西部西地区のゴール帝国。今回の開催国は同じく中央大陸西部西地区のライン共和国連邦。


 まず開催国である「ユニオン・オブ・ライン・リパブリクス」と書かれた札が「Group A」の一番上に貼られた。続けて前回優勝国「ゴール・エンパイア」と書かれた札が「Group B」の一番上に貼られる。


 残りの二十二か国の名前が黒い球の中に入っており、これからそれをウィルミントンが拾い上げて、順番に白い板に貼っていく事になる。


 ウィルミントンが「Pot A」という札の置かれた器に手を入れると、各国の報道が一斉に発光器を焚いて写真を撮影した。


 ウィルミントンが最初に引いた国はテエウェルチェ共和国。

 会場から「おお!」という歓声があがる。係員が「テエウェルチェ共和国」の札を「Group C」に貼り付ける。


 「Pot A」に入っている球の数は十個。これは今回の本戦出場国の上位十か国を、国際竜杖球連盟が発表する国際順位によって抽出したもの。残りの十二か国は「Pot B」に入っている。二十四か国中、瑞穂皇国の国際順位は堂々の最下位。当然入っているのは「Pot B」。


 立て続けに三個の球が開けられ、「Group F」までの一か国目が埋まった。次いで二巡目に入る。


 二巡目の「Group E」で会場からどよめきが起きた。「Group E」の一巡目は「マラジョ連邦共和国」であった。マラジョは今回予選を圧倒的な強さで勝ち上がっており、優勝候補筆頭と目されている。

 そのマラジョと同じ組に入ったのが、同じく優勝候補と目されている「ポンティフィシオ法国」だった。

 班別戦を抜けられるのはその組の上位二か国のみ。他の二か国が可哀そう、そんな声が聞こえてくる。


 「Pot A」の器が片付けられて、一旦ここまでの結果を中継に流してもらってから「Pot B」の抽選に入った。


 残りの十二か国の内、最初に引かれたのは中央大陸東部の国「ボルジギン・ウルス」。

 中央大陸東部はこれまで大金社会主義人民共和国という大国が一枠を確保していた。何年か前にその大金が崩壊して十一の国に別れている。ボルジギンはその一つである。


 中央大陸東部はそもそも国の数も少ないという事で、これまで二枠しかなかったのだが、崩壊後も枠の数に変更が加えられず、突然出場が厳しくなるという事態になった。その中にあってボルジギンは連続出場を果たしている。ただ、前回大会は一勝もできずに敗退してしまっている。


 その後順々に球が引かれ三巡目が終了。残念ながら、この時点でまだ瑞穂は引かれていない。いよいよ球は残り六個。

 三巡した事で、各組に片寄のようなものが少し発生している。いわゆる「死の組」というのが出始めている。一つは「Group B」。ここは一か国は必ず前回優勝国なのだから当たり前と言えば当たり前。もう一つがマラジョとポンティフィシオの入った「Group E」。


 ウィルミントンが十九個目の球を引く。球の中の紙に書かれていた名前は「キーウ共和国」。中央大陸西部東地区に所属している国である。


 二十個目、二十一個目、二十二個目と引いていく。だが、まだ瑞穂が出てこない。


 この時点で残りは二つ。まだ出ていないのは、瑞穂皇国と斧刃大陸のカネム=ボルヌ連合王国だけ。どちらかが「Group E」に入る事になる。


 ウィルミントンが二十三個目の球を割る。

 武田会長たちが両手を合わせ、目をぎゅっと瞑って拝んでいる。


 球の中に入っていた紙に書かれていた国名、それは無常にも「瑞穂皇国」であった。

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