064 シースナイフの柄
仁「こんにちは、魔法工学師の二堂仁です」
礼子「お父さまに作っていただいた自動人形でアシスタントの礼子です」
仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第64弾です」
礼子「今回はシースナイフの柄ですか?」なぜに柄だけ?
仁「うん。実は数年前、一時自作ナイフに凝っていた時に作ってそのままになっていたものなんだ」
礼子「作者さん刃物好きですものね」
仁「その言い方だと危ない人みたいだぞ」
礼子「で、中途半端はいけないということで柄を作ることにしたんですね」
仁「そうなんだが、もう1つ理由があるらしい」
礼子「それは?」
仁「ほら先日竹細工をしただろう?」
礼子「はい」
仁「自作刃物で竹を削ったらどのくらい切れるかやってみたくなったようだ」
礼子「なるほど?」
仁「まあ市販品よりは劣るだろうけどな」いずれ報告します(まだ竹を削ってません)
* * *
仁「で、これが作りかけのナイフだ」鋼種はATSー34
礼子「ステンレス系でナイフメイキングの定番ですね」
仁「そうなんだが、実はもう製造をしていないらしい」
礼子「どうしてですか?」
仁「そのへんはメーカー(◯立金属)(◯には日)が米国投資ファンドのベインキャピタ◯に売却されたからとか言われてるな」
礼子「まだ手に入るようですが高騰しているみたいですね」
仁「うん……」ここではその辺の事情や将来について多くを語ることはしません
礼子「で、どうしてこの形状に?」
仁「材料取りの関係だったと思う」
礼子「片刃みたいな形状ですね」
仁「裏が平面(斜めになってますが)で表が鎬付きで、作者はこれはいい断面形状だと(当時は)自画自賛していたらしい」痛いよな
礼子「・・・・・・」
仁「で、金属製の柄を延長することで使いよくする設計だったらしい」
礼子「そういえば熱処理は?」
仁「以前電気炉を使ったろう?」
礼子「あ、はい」
仁「あれで999℃まで上げて水冷している」
礼子「ちょっと低くないですか?」
仁「ああ、ATSー34はもう少し……1050℃くらいまで上げたいんだが、個人では無理だった」
礼子「なんですか、『焼刃土』を塗ったとか」
仁「うん。焼入れ性を上げるため、陶芸用の土を薄く塗ったようだ」実際に日本刀の焼入れでも焼刃土を塗ります
礼子「で、ざっと研いだところで飽きたんですね」
仁「飽きたって……まあそのとおりだろうな」油を塗って保管していいました
仁「で、このナイフの厚みは2.5ミリ」
礼子「柄を延長する関係で、きちんと測りました」
仁「柄にはアルミニウムを使います」以前買ったA6061ーT651
礼子「2.5ミリ厚がないので1ミリと1.5ミリを組み合わせます」
仁「柄の型紙を作ります」
礼子「それらしくなりますね」
仁「型紙に合わせてアルミを切る」バンドソーを使いました
礼子「あとで削るので心持ち大きめにカットします」
仁「実はナイフの取り付け用の穴にはM3のネジが切ってあるんだ」
礼子「ネジ止めできるんですね」
仁「うん。そのための穴を空けるため、印をつけている」
仁「穴を空けた」大きさは3.1ミリ
礼子「ほんの少し大きめです」
仁「仮止めしてみる」
礼子「ちゃんとネジで止められましたね」
仁「残りのパーツだ」
礼子「反対側のパーツのネジ穴も一緒に空けました」
仁「で、スペーサー部分は接着するんで、そのための接着剤だ」
礼子「エポキシ接着剤じゃないんですね」
仁「うん。最終的にはカシメる予定なのでな」あと、使ってみたかったのもある
礼子「こういう時に使ってみることで使い勝手がわかりますものね」
仁「そういうことだな。『耐衝撃』なのに『ガッチリ固まる』というのはどういうことなのか、知りたかった」
礼子「結局、やや弾力性のある固体になる、ということのようです」
仁「接着準備だ」
礼子「接着面を400番くらいのサンドペーパーで軽く荒らし、脱脂しました」
仁「で、接着剤を塗って貼り合わせた」
礼子「その後、万力で圧力をかけておきます」
仁「まる1日放置して固まらせたら、縁をヤスリで綺麗に削って組み立てだ」
仁「ネジはM3のステンレスですね」
仁「保護用の青いビニールを剥がして、カシメ用の穴をあける準備をする」3ミリです
礼子「柄の先には紐を通せるよう少し大きい穴を空けました」5ミリです
仁「カシメの準備をする」
礼子「アルミの丸棒(径3ミリ)を柄の厚みより2ミリぐらい長めに切ります」
仁「丸棒の材質はA5052だと思う」
仁「それを穴に入れて金槌(玄翁)で叩く」これがカシメです
礼子「両側から叩いてます」
仁「頭が出っ張っているので、柄と同面になるまで削った」
礼子「作者さんはベルトサンダーを使いましたけど、ヤスリとサンドペーパーでも可能です」
仁「あまりカシメピンが出っ張りすぎていると大変ですが」
仁「仕上げとして1000番くらいまでのサンドペーパーやスポンジヤスリで磨く」
礼子「鏡面までやろうとすると大変ですのでお好みで止めてください」
仁「美術品じゃないので、作者はそこそこにしたみたいだな」
仁「完成した」
礼子「ナイフですねー」
仁「実用的だな。柄は総アルミなので水に強い」
仁「ちゃんと刃を付けてみる」
礼子「ATSー34は難削材なのでダイヤモンド砥石で研ぐと楽です」
仁「作者は400番(写真には写っていません)、1000番、3000番で研いで、仕上げに6000番の極小砥石で仕上げてます」
仁「商品レベルにするなら鏡面まで持っていくんだろうけど、そこまでする気はなかった」
礼子「ヘアラインが残ってますね」
仁「このくらいで十分だからな」
仁「試し切りだ」
礼子「チラシの紙とか新聞紙を斜めにスパッと」
仁「まずまずの切れ味だな」トマトの皮とか桃の皮のように軟らかいものを切るのでなければ十分です
* * *
仁「ということで今回は『シースナイフの柄』でした」
礼子「お疲れ様でした」
仁「作業時の怪我にはご注意ください」
礼子「怪我をしたら流水で洗って傷口を清潔に」
仁「それから、刃物については『銃刀法』にお気をつけください」
礼子「携帯と所持は違います」
仁「理由なく持ち歩くと、今度は『軽犯罪法』に抵触します」
礼子「自衛のため、は理由になりません」ご注意ください
仁「趣味は楽しく、安全に」
仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」
ごらんいただきありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。




