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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
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061 チタンの陽極酸化(プラス緋銅)

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第61弾です」

礼子「今回はチタンの陽極酸化ですか」

仁「うん。作中で軽銀(=アルス世界でのチタン)は酸化被膜によって色を変えられると言っているから、実際にやってみたわけだ」

礼子「チタンなんて一般に手に入るんですか?」

仁「アマゾ◯とか楽◯なんかで買えるぞ」

礼子「加工は難しくないんですか?」

仁「純チタンは軟らかいから大丈夫だ(TA1と呼ばれてます)」

礼子「JIS規格および中国規格における『純チタン(工業用純チタン)』のグレード1、ということのようです


仁「TA4というのは64チタン(作中では64軽銀)なので、こっちを買ってしまうと素人ではまず加工できないから要注意だな」

礼子「純チタンなら大丈夫ですね」

仁「0.5ミリなら金切りバサミで切れるし、1ミリは糸鋸やバンドソーで切れる。ドリルでの穴あけも問題ない」

礼子「わかりました」



*   *   *


挿絵(By みてみん)


仁「では、まず……」

礼子「なんですか、この設備は」

仁「陽極酸化のための装置だ」

サキ「おっと、ここはボクに説明させておくれ」

仁「来ると思ったよ」

サキ「くふふ、チタンは、空気中の酸素との反応性がよくて、すぐに表面に薄い酸化膜を作るんだ」アルミもそうだね

仁「まあ、薄すぎてほぼ無色なんだけどな」

サキ「それを人工的に促進してやろうというのが『陽極酸化』だね」

仁「そういうことだな。だから電源が用意されているんだ」

サキ「そして、電気を通す(電流を通じる)ために、導電性の水溶液を用意する必要があるんだよ」

仁「作者は『リン酸水溶液』と『重曹水溶液』『メタケイ酸ナトリウム』の3種類で予備実験を行ったんだ」


礼子「ポリエチレン製の容器に水溶液を入れ、陰極(マイナス側)はステンレスの金網です」

仁「高電圧が欲しいから昇圧コンバーターをネットで買った」右側の液晶表示のある装置です

サキ「30ボルトまで昇圧できるようだね」できれば100ボルトがほしいところ(ただし短絡(ショート)すると大変危険です)


仁「ネットで調べるといくつか記事が出てくるな」リン酸は『ラストリムーバ◯』を4倍に希釈した(精製水で)ものです

サキ「この構成で電気を流すと、陽極(プラス側)では酸素が発生するんだ」

礼子「その発生した酸素(発生期の酸素といい、非常に酸化力が強い)がチタンと反応して酸化被膜を作るわけですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、予備実験の結果だ」

礼子「きれいに色がつきますね」

サキ「これは酸化被膜の厚みによって光が干渉をおこす(構造色)から出る色だね」

仁「そうなんだよな。だから保護のために透明なコーティングをすると色が消える」

礼子「あれ? 30ボルトまでしか出せないコンバーターなのに35ボルトがありますが?」

仁「いいところに気が付いたな。これは006P電池(9V)をさらに直列に繋いだんだ」

礼子「なるほど」理論上は39Vまで出せるわけですね


サキ「色もそうだけど、リン酸でもメタケイ酸でも発色は変わらないようだね」

仁「載せなかったけれど重曹でもほぼ同じだったから、作者はこれ以降『重曹1パーセント溶液』を使うことにしたようだ」

礼子「なんといっても安全ですものね」重曹は食品にも使いますから




挿絵(By みてみん)


仁「では、試しに作ってみよう、ということでアイデアスケッチだ」

礼子「作者さんは和風寄りのデザインがお好きですよね」

仁「今回は右下の方にある長方形のペンダントヘッドと、左上にある桜の花びら風のペンダントヘッドを作るようだ」




挿絵(By みてみん)


仁「まずは0.8ミリ厚のチタンをバンドソーで1センチ幅にカット」

礼子「やや粘りがある感じでしたね」真鍮よりも切りにくいみたいです




挿絵(By みてみん)


仁「さらに4センチの長さにカットして、端面をヤスリがけ」

礼子「4隅も丸めましたし、上方は全体に丸みを付けました」

仁「このあたりは普通にヤスリがけやペーパーがけが出来たな」




挿絵(By みてみん)


仁「溝彫りのため、ガイドとなるマスキングテープを貼っておく」

礼子「ガイドとなる線は三角ヤスリで彫りました」これがあると丸ヤスリがブレにくくなります



挿絵(By みてみん)


仁「溝完成だ」

礼子「幅を少しずつ変えてます」

仁「ちょっと左右にぶれたな……」反省




挿絵(By みてみん)


仁「で、ペンダントヘッドなので取り付け穴というか、フックを通す穴を空ける」

礼子「鉄鋼用ドリルで大丈夫でした」

仁「ただし、センターポンチでちゃんと印をつけないとドリルの刃先が滑るな」要注意です




挿絵(By みてみん)


仁「今度は花びらを作る」

礼子「0.5ミリの銅板と、先程使った0.8ミリのチタン板、両方にカットの目安を描き込みます」油性フエルトペンで描きました




挿絵(By みてみん)


仁「カット後、穴を空け、端面を研磨し、表面も磨いておく」

礼子「手を切らないようご注意ください」




挿絵(By みてみん)


仁「併せて銅の指輪も緋銅にしようと思う」

礼子「いつ作ったんですか?」

仁「ネットで10セントの銅パイプが買えたんで、それを切って指輪にしてみたようだ」いずれ工程をご紹介したいです




挿絵(By みてみん)


仁「では、陽極酸化を行う」水溶液はメタケイ酸ナトリウム水溶液

礼子「電圧は27ボルトです」予備実験によれば、きれいな青になります




挿絵(By みてみん)


仁「緋銅も行う」

礼子「以前ご紹介した手順です」




挿絵(By みてみん)


仁「完成した」

礼子「青もいいですね」

サキ「くふ、緋銅の赤も渋くていいねえ」




挿絵(By みてみん)


仁「チタンの青って綺麗だよな」

礼子「見る角度で変わるんですよね」

サキ「溝はヤスリ目が残っているから反射率が低くて濃い青に見えるね」

仁「チタンって、鏡面仕上げがものすごく難しいんだよな」作者は途中であきらめました




挿絵(By みてみん)


仁「緋銅の濃い赤もいいな」

サキ「こちらは構造色じゃないからコーティングできるんだよね」




挿絵(By みてみん)


仁「さて、ここまでいろいろやって来た作者は、ちゃんとした電源が欲しくなって、遂に購入した」

礼子「表示がおかしいですね」

仁「LEDって、エレメントを順番に点灯させているから(省エネ)シャッタースピードが速いとこうなるらしい」

礼子「直流0Vから120Vまで出せるんですね」最大3Aで

仁「うん。本当は10Aくらい欲しかったようだが、120Vで10A出せる電源は見つからなかったようだ」値段の問題もあって

礼子「電流制限があるのが嬉しいですね」万が一ショートしても壊れません




挿絵(By みてみん)


仁「で、改めて色見本実験をしたのがこれ」重曹1パーセント溶液です

礼子「黄色からオレンジになって、20Vで紫、そして青ですね」

サキ「水色からどんどん薄くなって、45Vくらいから黄緑色を帯びるんだね」

仁「そして黄色、オレンジ色(銅色)、70V付近できれいな赤紫色マゼンタになった」

礼子「また紫、青を経て、85V付近で青緑色ですね」

サキ「さらに電圧を上げるとピンク色っぽくなるんだねえ」

仁「100Vになるとなんとなく危険な雰囲気が漂っていたな」水がジュージューいうし

礼子「こうして色見本があると今後が楽ですね」

仁「そうそう」




挿絵(By みてみん)


仁「で、少し大物(?)を作ろうと思う」

礼子「模様が付いてますね」

仁「これは『結晶化チタン』といって、表面だけにチタンの結晶を析出もしくは成長させたものらしい」だから削ると模様が消えます

サキ「細かな熱処理が必要らしいね」

仁「結晶化チタン で検索するときれいな製品が出てきます」

礼子「こんな素材も買えるんですね」

仁「うん。ただ、厚さは0.5ミリだけなんだ」サイズは100x100と100x200の2種類あります(単位はミリ)

礼子「1ミリがあったらよかったですね」

仁「ないものはしょうがない」




挿絵(By みてみん)


仁「で、茶さじを作ろうと思う」

礼子「例によって型紙ですね」

サキ「お茶菓子は?」

仁「お茶菓子どころかお茶の支度もまだしてないぞ」

サキ「」(´・ω・`)




挿絵(By みてみん)


仁「切るためのアタリを付ける」フエルトペンです

礼子「型紙があると便利ですね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、カット」バンドソーで切りました

礼子「曲線が多いので金切りバサミでは辛いかもです」その場合は糸鋸がいいと思います

サキ「くふ、手を切らないよう注意、だね」




挿絵(By みてみん)


仁「切った断面にはカエリが出ているので端面研磨だ」

礼子「リューターやスポンジヤスリがおすすめです」

サキ「結晶の出ている表面は削らないようにしましょう」




挿絵(By みてみん)


仁「柄の端に穴あけする」

礼子「センターポンチを使ってくださいね」

サキ「この穴にチタンの針金を通して陽極につなぐんだよね」

仁「そうしないと全体が色付かないからな」

サキ「針金もチタンを使わないと、酸化被膜がうまく出来ません」




挿絵(By みてみん)


仁「鍛金の準備だな」

礼子「ケヤキの木台に凹みを作ったんですね」

仁「そうだ。そして叩くための雄型もな」これがあればきれいな形に凹ませられます




挿絵(By みてみん)


仁「で、叩いていく」

礼子「純チタンはアルミより伸びませんね」

仁「そうだな。だから、あまり大きくは凹ませられそうもない」縁がクシャッとならないよう注意して叩いていってください




挿絵(By みてみん)


仁「完了」

礼子「凹みにピッタリの形になりましたね」

仁「 ケ とか ク というのは凹み(雌型)と雄型のペア関係をわかりやすくしています」




挿絵(By みてみん)


仁「で、取っ手部分も曲げて、全体の形を整える」

礼子「いい感じですね」

サキ「でも0.5ミリだから、なんとなく心もとないね」

仁「だから茶さじなんだ」

礼子「お茶の葉なら重くも固くもないですものね」

サキ「くふ、納得だよ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、陽極酸化させる」

礼子「いい色ですね」

サキ「若草色、かな」

仁「だいたい85Vでこの色になる」




挿絵(By みてみん)


仁「茶さじ完成だ」

礼子「お茶の色っぽくて素敵です」茶さじだけに

サキ「うんうん、いいねえ」




挿絵(By みてみん)


仁「ではこれでお茶を淹れようか」

サキ「待ってました」

礼子「お茶菓子は……羊羹ようかんがあったかと」




挿絵(By みてみん)


仁「おまけとして、結晶化チタンを陽極酸化させたときの色見本だ」

礼子「きれいですね」

サキ「結晶が乱反射するからキラキラしてるねえ」

仁「こうしてみると、同じ紫でも16.5Vと65Vでは65Vの方が明るいな」

礼子「20Vと70Vの青、25Vと75Vの水色も、電圧が高いほうが明るい気がします」

サキ「そのへんは、酸化被膜の厚みに関係するんだろうね」物理学に詳しい人なら理解できそうです

仁「40Vの薄い緑と85Vから90Vの緑の関係もそうかもな」

礼子「60Vと100Vの赤紫もそうでしょうね」高電圧の方が明るい色になるからピンクっぽいです

サキ「多分、55V(橙)と60V(赤紫)の間、どこかに『赤』もあるんだろうね」

仁「残念なのは『黒』は出せないことかな」黒染めにはどうやらマンガンを必要とするらしいです



*   *   *



仁「ということで今回は『チタンの陽極酸化』(プラス緋銅)でした」

礼子「お疲れ様でした」

仁「作業時の怪我にはご注意ください」

礼子「金属で指を切らないように」

仁「手を切ったら流水で洗い流しましょう」

礼子「それから、薬品を目に入れないようにご注意です」

仁「趣味は楽しく、安全に」



仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。

 これからもどうぞよろしくお願いいたします。


 20260630 修正

(誤)仁「うん。。作中で軽銀(=アルス世界でのチタン)は

(正)仁「うん。作中で軽銀(=アルス世界でのチタン)は


 20260701 修正

(誤)仁「で、陽極参加させる」

(正)仁「で、陽極酸化させる」

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― 新着の感想 ―
チタンだから アルマイトならぬチタマイト?
>>チタンの 鍛造? >>ネットで買った トランスの自作までは・・・・? >>重曹は食品にも 重曹ちゃん? >>茶さじ ボーリングのピンじゃ無かった! >>羊羹が よう噛んで食べんと・・・ …
今回は科学実験と工作のハイブリッド回でしたね、理科の実験レベルでも綺麗な色になるのが非常に興味深かったです。 チタン製のキーホルダーと匙、欲しいな〜(笑)
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