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蓬莱島の工作箱  作者: 秋ぎつね
77/78

058 桜ジオラマ

仁「こんにちは、魔法工学師マギクラフト・マイスターの二堂仁です」

礼子「お父さまに作っていただいた自動人形(オートマタ)でアシスタントの礼子です」


仁「作者が実際に作ったあれやこれやを、俺の解説で紹介するっていう企画の第58弾です」

礼子「今回はジオラマですか」

仁「もう桜の季節だからな」

礼子「作者さん、桜好きですものね」

仁「うん。で、前回に引き続き10センチ角の台の上で完結する大きさだ」

礼子「本当に小さいですね……100分の1くらいでしょうか」

仁「ノンスケールだが、だいたいそんな感じだ。鉄道模型のNゲージに近いかな」

礼子「なるほど、わかりました」



*   *   *


挿絵(By みてみん)


仁「まずは完成した様子だ」今回からこうしてみます

礼子「これが出来上がるまでを解説いたします」




挿絵(By みてみん)


仁「まずはイメージを固める」

礼子「小高い丘の上にある一本桜、っていう感じにするわけですね」

仁「等高線を併用するとイメージが掴みやすいだろうな」




挿絵(By みてみん)


仁「次はイメージを3次元化する」

礼子「模造刀のときに使った油粘土ですね」

仁「固まらないからそのまんま残ってた」鞘の溝も

礼子「これを使ってイメージを形にするわけですね」

仁「これがあるとないとでは本番の作りやすさが違う……と思う」




挿絵(By みてみん)


仁「では、土台というのか基礎というのか、前回に引き続き10センチ(100ミリ)角のMDF上に作るための枠を作る」

礼子「はみ出さないように、ですね」

仁「この側板を作るためにもモデル化は大事なんだよな」




挿絵(By みてみん)


仁「ベースが100ミリ角で、その上にもう1枚、側板の厚み分(2.5ミリ)小さいMDFを用意する」

礼子「大きさでいうと95ミリ角になります」周囲を囲むわけなので2枚分の厚みだけ小さくするわけですね




挿絵(By みてみん)


仁「で、接着していく」

礼子「5分硬化型の2液型エポキシですね」

仁「いつもの2分型だと早すぎるからな」まだ全部に塗布しないうちに固まりそうだ

礼子「この後、いつものウレタンを含浸させるのでエポキシを使ってます」




挿絵(By みてみん)


仁「完成した」

礼子「なかなか渋いですね」

仁「ところどころにエポキシ接着剤が付着してしまったが、隠れてしまうので気にしない」




挿絵(By みてみん)


仁「いつものウレタン(木固◯エース)を含浸させる」

礼子「換気には十分ご注意ください」

仁「とにかくMDFはよく吸い込みます」耐水性を上げるためですのでクリアーラッカーでもいいと思います

礼子「湿気が多いところに放置したMDFがカビたことがありましたからね」

仁「あれはショックだったな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、外側と縁の上部を黒く塗る」

礼子「黒のサーフェイサーを3回ほど吹いて下地を調整してから黒いラッカーを吹き、半光沢のトップコートで仕上げています」

仁「意外とMDFはつるっとした平面になりにくいので注意です」




挿絵(By みてみん)


仁「完成した土台です」

礼子「ここに紙粘土を盛るんですね」

仁「待て待て、これから説明するから」




挿絵(By みてみん)


仁「まず注意が必要なのは、紙粘土・石粉粘土などは、乾燥すると縮むということだ」

礼子「前回のお雛様も縮みましたものね」

仁「そう。だからこれを防ぐには、紙もしくは石粉粘土の使用量を減らすことだな」

礼子「収縮率が5パーセントとしたら、100ミリだと5ミリも縮みますね」

仁「そうなんだ。これが10ミリなら0.5ミリで済む」

礼子「確かに」

仁「だから、芯には縮まない素材を使うんだよ」今回は発泡スチロールです




挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


仁「油粘土のイメージ模型を見ながら、発泡スチロールをブロック状にして貼り付けていくわけだ」

礼子「なるほど、こうしてみるとよくわかります」




挿絵(By みてみん)


仁「そしてその芯材の上に石粉粘土を盛り付けていく」お雛様でも使った石粉粘土です

礼子「100均の紙粘土や樹脂粘土、石粉粘土でも大丈夫です」

仁「とはいえ、接着性がいいものの方が丈夫だと思う」手にくっつかない、という謳い文句のものは人形にはいいかもですが土台に貼り付かないかも

礼子「まあそれを練って、芯材の上に盛っていくわけです」

仁「竹べらや木べらも使うと滑らかになります」

礼子「実際の小山とか丘は多少凸凹していますので、あまり綺麗にしすぎなくてもいいと思います」




挿絵(By みてみん)


仁「横道にそれるけれど、余った粘土の保管方法だ」

礼子「少し水を加えて軟らかくしておいてからチャック付きポリ袋を2重にして梱包します」

仁「それでも1年くらいが限度かもな」

礼子「ときどき上から押してみて固くなっていたら水を加えて練り直すのがいいんでしょうけど」

仁「忘れ去っていて、2年後くらいに使おうとしたら固まっていた、というのがあるあるすぎるなあ」




挿絵(By みてみん)


仁「で、小山ができた」

礼子「収縮して隙間ができていたら、同じ粘土を水で柔らかめに練ってパテ代わりにするといいです」




挿絵(By みてみん)


仁「では、着色準備をする」

礼子「今回はアクリル絵の具を使います」

仁「もちろんプラモデル用塗料でもいいですし、ラッカーでも水彩絵の具でもいいです」

礼子「とはいえ、水溶性のものは多少使いづらいかもしれません」芝生をくっつける糊が水性なので、塗った時に色が溶けてしまうからです

仁「アクリルなら、乾くと耐水性になるからいいよな」

礼子「ということで、100均のアクリル塗料(白、黒、茶2種)と……との粉ですか?」

仁「との粉はホームセンターで買った。黄色もしくは茶色がいいと思う」絵具に混ぜると土の雰囲気が出ます

礼子「アクリル絵の具はツヤが出ますからね」

仁「そうなんだ。それから白と黒を混ぜるのは、茶色の彩度(色鮮やかさ)を抑えるためです」

礼子「どういうことですか?」

仁「現実の土とか木って、絵の具みたいに鮮やかな色をしていないんだよ」つまり彩度が低いのです

礼子「ああ、彩度を落とすために無彩色(白、グレー、黒など)を混ぜるわけですね」

仁「そういうことだな」




挿絵(By みてみん)


仁「というわけで、白と黒を適量混ぜてグレーを作る」

礼子「グレーの明るさは、土の明るさと同じくらいにします」大体でいいです




挿絵(By みてみん)


仁「で、茶色を混ぜる」今回はやや乾いた感じの茶にしてみました

礼子「ちなみに、容器は一口サイズの豆腐の容れ物です」洗わずに捨てても惜しくないものです




挿絵(By みてみん)


仁「で、との粉を混ぜる」これにより、仕上がりが粉っぽくなります

礼子「量は適当ですが、多すぎるとボソボソになります」

仁「との粉に水分を取られますので、少し水を足すといいでしょう」




挿絵(By みてみん)


仁「で、塗ります」

礼子「水性ですので、何度も刷毛や筆を往復させると石粉粘土が溶けますので要注意です」




挿絵(By みてみん)


仁「乾くと色が薄くなる」この時点で気に入らない場合は調整できます

礼子「作者さんは土にしては薄すぎると判断してもう少し濃くしましたね」

仁「うん。それも、全部同じ色というも不自然なのであえてムラを残したな」




挿絵(By みてみん)


仁「塗装が終わった小山だな」

礼子「乾きかけた土の感じが出ていますね」




挿絵(By みてみん)


仁「さてここに、ジオラマ用の『草』を生やすわけだ」

礼子「今回は『KAT◯』の『日本◯草はら』シリーズの『萌黄もえぎ色』を使いました」

仁「桜のジオラマなので、青々とした草ではなく、まだ枯れた色が残る草原をイメージしているわけだな」

礼子「ただ、草原も全部が同じ色ということはないはずなので工夫するんですよね」

仁「そうだ。下地、つまり地面の色が変わると見た目も少し変わるというのでテストピースを作ってみた」

礼子「草の部分だけを取り出したのが上の画像です」

仁「多少変わっている気がするな」下地が茶色だと茶色っぽい




挿絵(By みてみん)


仁「ということで、緑色と茶色をわざとムラになるよう塗り重ねます」

礼子「そのままな部分は、多分人が歩きそうな部分です」

仁「踏まれるために草(芝生?)が少し剥げかけた感じになるかも」




挿絵(By みてみん)


仁「草をくっつける糊を塗って、その上から『草はら』をふりかけるようにして蒔きます」

礼子「『KAT◯』からはボトル状の道具が出ていまして、それに入れてふりかけると草が『立つ』のでリアルさが増します」

仁「立つとはいっても、真っ直ぐ立つわけではなく、寝ていない、くらいなので萌黄色の草原にはちょうどいいと思う」

礼子「『はじめて◯草はら』とか『はじめて◯深雪』というキットもありますし、ボトル単独でも売っています」鉄道模型関連の通販でも手に入るかと

仁「なんだか製造中止になったのかもしれなくて、手に入りにくいんだよな」作者は甲府のヨドと渋谷のIM◯Nで買いました

礼子「とりあえずそれらしくなりました」

仁「目の細かい金網や茶こしを使っても行けると思う」茶こしは100均で十分

礼子「とりあえず土地はこれで完成です」




挿絵(By みてみん)


仁「次は桜の木を作る」

礼子「作り方はネットにいろいろ載っています」

仁「素材は銅の針金だな」はんだ付けをするのでエネメル線はおすすめできません

礼子「あとはラジオペンチとニッパーです」ずいぶん年季の入ったラジペンですね

仁「作者が高校生くらいの頃から使っているものらしい」だから刃の部分はもう切れない

礼子「そして100均で買った逆ピンセットです」セ◯アでした




挿絵(By みてみん)


仁「まずは銅の針金(0.45ミリ)を21本切る」長さは14から15センチくらい

礼子「長い場合はあとで切れますが短いと足せませんので要注意です」

仁「21本というのは、このあと2つ折りにしてよじっていく際、枝を作るのに下から9ー9ー9ー6ー6ー3、つまり42本を使いたいから」




挿絵(By みてみん)


仁「木の幹を作るわけだ」

礼子「1、束ねた銅線を2つ折りにして竹串に絡めます」

仁「2、さらによじっていく」右巻き、左巻きはお好みで。ただし全部同じ方向によじります

礼子「3、枝を出します。まず9本を引き出してよじり、再び幹をよじり、適当な場所からまた9本を引き出していきます」

仁「4、下から9、9、9と出し、次は少し細い枝にするので6、6として最後は3本をよじるわけだ」

礼子「9本を出した枝は、途中で3本を引き出し、残った6本を少しよじってまた3本を引き出します」

仁「その3本はよじって1本を出し、残った2本をよじって1本ずつ出すわけだ」互い違いに枝が出る感じです。桜の木は『互生』(互い違いに枝が出る)なので

礼子「7以降は全体の形を整えています」

仁「上から見て枝の出方が偏らないように気をつけること」

礼子「そして最後はニッパで選定して枝先の長さを整えます」




挿絵(By みてみん)


仁「根っこを作る」

礼子「1で、ニッパをつかって輪になっていた部分を切ります」結構力がいります

仁「2と3 3つに分けてねじる」この大きさだと3つでいいでしょう

礼子「4と5 幹の芯に針金(作者はステンレス)を差し込んではんだ付けします」

仁「この芯を小山に穴を空けて取り付ければ安定するわけだな」




挿絵(By みてみん)


仁「幹の塗装準備だ」

礼子「ジェッソというのはアクリル塗料用の下地用塗料です」剥がれにくくなります

仁「プラモ用塗料なら『メタルプライマー』というのがあるな」




挿絵(By みてみん)


仁「ジェッソは白い」

礼子「桜の幹はこげ茶色なのでその色の絵の具も用意しました」こっちは100均ではないです

仁「そういう意味で、ジェッソではなくメタルプライマーとプラモデル用塗料の組み合わせでもいいと思う」

礼子「わざわざアクリル絵の具を買う必要もないですからね」




挿絵(By みてみん)


仁「幹ができたら桜の花の準備だ」

礼子「綿ですか?」きれいな色です

仁「蒔絵のときにも使った『真綿』だな」つまり蚕のまゆをほぐした綿です

礼子「それを染めたんですか?」

仁「そう。染料としては、漆塗りにも使う『ローダミン』だな」お湯に溶かしたあと、クエン酸を少量入れて酸性にすると真綿がよく染まります

礼子「ローダミンは塩基性染料なので、タンパク質である真綿を染めるには酸性にするといいのだとか」

仁「ごくごく薄くていい」ローダミン耳かき一杯で100ミリリットルくらいの染め水ができそうです

礼子「インクジェットプリンタのインク(マゼンタ)や赤インクでもよさそうです」




挿絵(By みてみん)


仁「染めた真綿の比較も載せてみた」

礼子「濃いものがありますね」

仁「すごくよく染まったな」

礼子「染めた真綿を水洗いして乾かしてます」ちゃんと染まっていると水洗いしても落ちません

仁「クエン酸を混ぜて酸性にしているので水洗いは必須です」

礼子「脱脂綿はセルロースなのであまり染まりませんでしたね」

仁「うん。……後でネットで調べたところ、アルコール(エタノール)を混ぜるといいらしい」まだ試してはいません

礼子「その他、手芸用の『ポリエステル綿』というものも使えそうですが、非常に染まりにくいです」ぬいぐるみの中身に使うやつです




挿絵(By みてみん)


仁「真綿を引っ張り伸ばして幹にそっと被せる」

礼子「これだけでもう桜っぽいですね」




挿絵(By みてみん)


仁「さらに桜の花びらを追加する」

礼子「これも鉄道ジオラマ用の『KAT◯』の『日本のさくら◯花びら』というものです」




挿絵(By みてみん)


仁「真綿に『ボンド水』を吹き付けて、そこにばらまいていく」

礼子「あ、ボンド水の作り方は、水性の木工用ボンドなどを水で薄めたものです」そこに界面活性剤として台所用洗剤を数滴混ぜます

仁「スプレーは『エア◯タッチ』を使った」




挿絵(By みてみん)


仁「これで、木が完成」

礼子「華やかですねー」

仁「ボンド水を吹いたら真綿のふんわり感がなくなってしまったのが残念だ」

礼子「この上にもう一度被せるといいかもしれません」まだ未検証ですが




挿絵(By みてみん)


仁「いよいよ組み立てだ。まずは小山の上に、木を立てる穴をあける」ピンバイスでもいいでしょう

礼子「幹の下にはんだ付けした針金と同径もしくは0.1みりか0.2ミリ大きな穴にします」

仁「試しに差し込んでみた」いい感じ

礼子「なんとなく物足りないですね」

仁「うん、だから小物を足す」




挿絵(By みてみん)


仁「さて、木だけでは寂しいので、ベンチとか木の柵とか作ろうと思う」

礼子「バルサを細く切ったり、細い竹ひごを切ったものを用意し、茶色く染めました」

仁「染める、というのがきもで、塗装すると不自然になりやすいんだよな」

礼子「なので作者さんは『草木染』用の『やしゃ』で染めましたね」なんでそんなものを持ってるんですかね

仁「木工品の下地を茶色くする時に使うからだとさ」手芸系の店で『やしゃ玉』(ハンノキやヤシャブシの実)を売っているので、それを煮出すと茶色の汁ができます

礼子「この液はタンニンなので、鉄に触れると真っ黒になるから要注意ですね」

仁「そうだな。鉄鍋を使ってはいけない」




挿絵(By みてみん)


仁「ということで、竹ひごの径の穴を空けていく」

礼子「柵の柱ですね」




挿絵(By みてみん)


仁「柱を立てた」

礼子「まっすぐ穴をあけるのがコツですね」

仁「定規などで下書きをしておきたいな」




挿絵(By みてみん)


仁「で、接着」

礼子「2分タイプのエポキシ接着剤ですね」

仁「作業性はちょうどいいと思う」

礼子「で、制作過程を省かれてしまいましたが、染めたバルサでベンチを2個作って貼っています」

仁「それから石碑。熱帯魚用の砂利から厳選して、ダイヤモンドヤスリで削って整形し、エポキシ接着剤で貼りました」

礼子「かなり凝ってますね」




挿絵(By みてみん)


仁「で、仕上げとしてアクリル絵の具の黄色を爪楊枝の先でチョンチョン、と散らしてたんぽぽっぽく」

礼子「赤紫もちょっと使ってアクセントを」アカツメクサのイメージですね




挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


仁「で、完成した」

礼子「雰囲気はいいんですが、やはり本物と比べてしまうと……」

仁「それはしょうがないな」作者もジオラマは初めてだったそうだし

礼子「100分の1ですしね……」

仁「遠目で見ると悪くないんだけどな」




挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


仁「で、こっちはソフトフィルタを掛けてみた」

礼子「多少いいかも」


*   *   *


仁「こうしてみると、桜の枝がもう少し細いといいかもな」

礼子「針金ではなく、電線をばらすといいかもですね」

仁「素線径が細いからな」次があったらやってみよう




*   *   *



仁「ということで今回は『桜のジオラマ』でした」

礼子「お疲れ様でした」

仁「作業時の怪我にはご注意ください」

礼子「塗装や接着時には換気にもご注意くださいね」マスクもあったほうがいいです

仁「手を切ったら流水で洗い流しましょう」

礼子「汚れが傷口に残らないよう注意です」

仁「シンナーの取り扱いにもご注意ください」

礼子「あやまって飲み込まないように」

仁「趣味は楽しく、安全に」



仁・礼子「「それでは皆様、ごきげんよう」」

 ごらんいただきありがとうございました。

 これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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