第3話 努力
遅くなってすみません、今回は短いです。
良い感じで終われるところがここしか無かった。
次のキリの良いところまで書いたら長いかなと思ってここまでにしました。
そして多分次の話も短めに成るかと…。
大講義場に着くと既に他のクラスも結構集まっていた。
普通こう言った講演などはビデオチャットなどで行われる事が多いのだが今回の講演をするアスリート、何のスポーツだったかは興味がなかったので覚えてないが、そのアスリートは直接校舎に訪問しているということなので高等部の第2学年全クラスが一つの大きい講義場に集まっての授業になっている。
学園全クラスでは無いのは単純に人数が多すぎるからだ。
演説する側も何度もしなければいけない為に大変だろうに、わざわざ来るとは迷惑なことだ。
授業開始時刻は過ぎているが授業はまだ始まらないようだ、恐らくは準備に時間がかかっているのだろう。
指定の位置に着くとタクを含む周りの奴と雑談をして時間を潰す。
5分ほどすぎると一人のガチムチが入ってきて授業が始まる。
何かのアスリートだったけど、ボクシングかボディービルダーかそこら変だろうか?
ボディービルダーってアスリートだっけ?
そんなどうでも良いことを考えていると隣から、グガッ…グォン。とタクのイビキが聴こえる。
寝るの早いな、とも思うがこの手の授業で生徒が寝るのは別に珍しくも無いだろう、その点は今も昔も変わってはいない、現にタク以外にも寝ているであろう生徒は結構いるのだ。
生憎アバターの自分は寝ることはできないが…。
そのため、意識の半分ほどでボーッとしながら話を聞く。
プロになってどうたらこうたら…。
一番大変だったのがどうたらこうたら…。
環境の変化にどうたらこうたら…。
などなど岩いる、タメになるありがたい話。とやらが繰り広げられる。
そうやって適当に聞き流している中、一つの言葉で意識が話に向く。
「プロやタレント、表に出て成功している人間。
なぜ成功するのか?
それは『努力』したからだ。」
努力。
それは違う。
運が良かったからだ。
努力は前提でしかない。
プレゼントが応募しなければ当たらないように。
抽選は参加しなければ選ばれないように。
最低限の努力をしてなければそもそも何かを得る可能性が限りなくゼロに近くなるだけ、ただそれだけだ。
努力したから何かを得るわけではない。
「世の中で光を浴びている人間は常に努力している。
将来の夢を持つ少年少女の諸君!決して諦めるな、今が暗くても挫けさえしなければ必ず光は見える。
夢を叶えるのは夢を諦めないことだ!」
それでもままならないこともある。
夢を諦めた人間だって努力している、夢を諦めるのは悪だと言いたいのか?
「努力して、血反吐を吐いても諦めずやりきることこそが成功への道だ。
現に俺もサッカーが下手だった、学校のクラブではベンチにすら入れなかった、だけど俺は努力した、やめたくもなった、けどやり続けて今がある。
努力し続ければ必ず夢は叶う!」
サッカーの選手だったのかと思うがそれはどうでも良い。
だだ、努力すれば夢が叶う。
そんなのは努力して夢が叶った奴の言い分だ。
夢を叶えれなかった人間は努力していない、努力をやめたのが悪い、そう言いたいのか?
違うだろ、努力して努力して、それ以外のこと全部捨てて、誰にも負けないくらい努力しても夢が叶わないこともある。
それでも決して届かない壁も有る。
諦めずにやり続けてもチャンスすら来ないこともある。
確かに努力する事は大事なことだろう。
確かに光を浴びている人々は日々努力しているだろう。
だが。
努力だけじゃままならないものもある。
生活するため、家族のため、理由は様々あるだろうが努力を辞めなきゃいけない時もある。
世界はそういうものだ。
努力を否定はしない。
だが、努力は絶対じゃ無い。
結果が付いてくるとは限らない。
いつの日かネットで読んだライトノベルの会話でだって言っていた。
ーー努力は自分を裏切らない…ーー
ーー夢を裏切ることは有るけどな。
努力しても夢が叶うとは限らない。
むしろ叶わないことの方が多いだろう。
でも、頑張ったって事実がありゃ、慰めにもなる。ーー
その通りだ、努力とは結局は自己満足だ、自分が満足できるか、大事なのはそこなのだ。
そして何より、その努力を。
血のにじむ努力の結果を、涼しい顔で追いつき超えていく、悲しいくらいに絶対的な才能と言うものもこの世界には存在するのだ。
・・・僕は『努力』が嫌いだ。
絶対的な才能と言う物は、努力など無意味だと嘲笑い、そして努力することすら許さない。
他者の努力を蹴散らすことしか出来ずに、それが才能だと、呪いのように付き纏う。・・・
「もう一度言うが、少年少女よ。
努力しろ、決して諦めるな。
努力し続ければ夢は必ず叶う!」
名前も覚えていないアスリートの笑顔を見てアバターから現実の音声を遮断する。
名前は思い出そうと思えば思い出せるだろう、彼の頭脳はそういう風に出来ている。
だが思い出す気はさらさらなかった。
そんな事はどうでも良く、彼の輝かしいまでの正論を聴きたくは無かったのだ。
気付けばゲームにワクワクして、少し上がっていたテンションも下がりきっていた。
表情に出すことはない。
だが心の中は、そんな綺麗事聞き飽きたよ。とイライラしているのが自覚できる程に気分は沈んでいた。
抗議の時間は2時間。
この学園は午前3時間、午後2時間の合計5時間だ。
この講義が終われば昼休みが入る、講義の残り3分の1と昼休みも有れば十分リセット出来るだろうと思い、無音の世界で静かに心を空にする。
拙い文章で申し訳ないです。
読んでくださった方有難うございます。
読者様の感想や意見は作者の養分と成りますのでどんどん書いてくれるとありがたいです。