彼氏奪還計画②
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「あれに気づかれる前に車に戻りましょうか」
師匠が私に声を掛けて、車へ戻ろうとした時だった。
すぐ真横で知らない男の声が聞こえてきた。
「光だ!! 白い光が見える…お願いだ! 助けてくれ!」
これはやばいと思いながらも、声のする方を見たら灰色がかった人の影の一つが現れた。
「静かにして、あれに気づかれたら助けてあげるにも助けられへんようになる。だから騒いだらあかん! もう少しだけ待ってて」
通じるかどうかは解らなかったが、とっさに小声で私は灰色の人影を説得していた。
「あの黒いのに今気づかれたら、助けてあげられなくなる!」
人影は私の言葉が通じたのか? 静かになった。
「あなたは内田雅人さんじゃないですか?」
「違います……私は、つい最近ここで事故にあった者です。事故の日からずっとあの黒い奴のせいでここから動けないんです」
影に向かって、内田さんかどうかを確認したが、違うようだった。わかったのは、やっぱり黒い奴のせいで沢山の魂がこの場所に留まっているということだ。
あれは間違いなく、夜刀の言う通り悪霊って奴なのだ。
きっと内田さんの魂もどこかにいるはずなんだけど、ここに居る魂の数は多すぎるから探し出すのに苦労しそうだった。
「もう少し待っていて下さいね。あの黒い奴を地獄に葬ってくれる方がこっちへ向かってますから」
私が触れたことで、若い男の姿に戻った魂は黙って頷いて姿を消した。
悪霊に気付かれるといけないので、師匠が結界を張っている車の中で、私は真澄さんが来るのを待つことにした。
相変わらず祐介は、青い顔をしたままひたすら怯えていた。
辺りが暗くなりかけた頃に車の窓を叩く音がして、外を見たら真澄さんが満面の笑みを浮かべて立っていた。
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悪霊を目の前にしてるというのにも関わらず、真澄さんは私に向かって満面の笑顔を向けていた。
「遅くなって申し訳ありませんでした。私の大切な光さんが無事で何よりです。待っていて下さって良かったです」
急いで、後部座席のドアを開けると…私は、いきなり真澄さんにハグされていた。
(真澄さん?……いつから私はあなたの所有物になったのでしょうか?)
口に出すと何かと面倒なので心の中で突っ込みを入れていた。
「あれは……かなりの年数あの場所に居着いて、事故を起こして人の魂を縛り付けて恐怖や悲しみや怒りや絶望を喰らって力を得て大きく育ってますね」
黒い渦を見て真澄さんは真面目な顔で師匠に言った。
「ここはあまり通らなかったから気付きませんでしたね。依頼人も居なかったし、道路は特に普通に事故で処理されますからね。これ以上大きくなられると本当に厄介ですよ」
師匠の言葉に真澄さんも深く頷いていた。
「では、早速あれを片付けましょうかね。光さんはお守りをそのまま持っていて下さい。そして、心の中であの魂たちに話しかけて…こちらへ誘導しておいて頂けますか? 光さんになら、必ず出来るはずです」
真澄さんは私にそう話すと、にっこり笑って師匠とあの真っ黒い奴の方へ向かった。
「祐介は車の中から出たらアカンよ!」
私は祐介にそう言い残して車を降りた。
私は真澄さんに言われた通りに心を落ち着かせ…目を閉じて、心の中で魂たちに必死に呼びかけた。
「お願いします! 白い光の方へ! 白い光に向かってこちらへ来て下さい! 黒い奴から早く離れてこちらへ来て下さい!」
すると…沢山の魂が、私の側の白い光の方へ集まって来ていた。
「光! 一人ずつ向こう側へ渡してあげながら内田さんを探すんだ」
私の目の前に夜刀が猫の姿になって現れて叫んでいた。
「向こう側へって? どうやって渡してあげるの?」
「大丈夫! 光が手を握ってあそこに見える白い大きい光まで誘導してあげればいいんだ」
「うん、見える! すっごく大きな白い光……これでみんな向こう側へ渡れるんやね!」
本当に凄い数だったが私は内田さんを探しながら一人ずつ向こう側へ渡していった。
その頃……師匠と真澄さんは、いつもの如く絶妙な連携プレイで黒い奴をしっかりと地獄へ葬っていた。




