死んでる彼女①
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飲み会の帰りに同じ部署の後輩の朝香祐介が、青い顔をして息を切らして走って追いかけてきた。
「光さん! 少し時間頂けませんか? 相談したい事があるんです」
すがるように両手を合わせてお願いされてしまったので……私は断れなかった。
「別にいいけど……そこのファミレスでもいい?」
私は目の前にあったファミリーレストランを指差して言った。
「ありがとうございます。話が出来ればどこでも良いです」
祐介は少しホッとした顔をして愛想笑いをしていた。
席についていざ向かい合うと、二人きりであまり話した事が無かったからなのか?……少し祐介は緊張しているようだった。
私はそれを見ていたら可笑しくなってきてついつい吹き出して笑ってしまった。
「ひどいなぁ! 光さんは…こっちは真面目に悩んでるのに」
膨れっ面をして怒りながらも祐介はやっと少し緊張がほぐれたようで、そのまま要件を話し出した。
「光さんは死んだ人が見えるんですよね? 順子さんに教えてもらいました」
あれだけ他人には話すなって念押ししていたのにあの馬鹿!
私の顔色が変わったのを察して、慌てて祐介は頭を下げていた。
「順子さんを怒らないであげて下さい。俺がすごく悩んでいたので仕方なく光さんのことを教えてくれたんです」
「聞いてしまったもんは仕方ないから別にええんやけど……あんまり過度に期待されると困るんよ」
確かにこの甘い顔した年下の可愛い部下が思い悩んだ顔をしていたら、あの順子なら放っておかないだろうと私は祐介の顔を見て大きな溜め息をついていた。
「わかってます。でも、話だけでも聞いてもらえませんか?お願いします!こんな話……光さんにしか話せないんです」
「わかったから、もうそんなにペコペコ頭下げんといてくれる? さっきから皆にジロジロ見られてるで!」
若い男女がこんな時間にファミレスで、男のほうがペコペコ頭下げてる場面をまわりの人間はきっと面白おかしく思って見ているに違いなかった。
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結局、渋々私は祐介の話を聞くことになってしまった。
「実は2ヶ月位前から、知らない女が毎晩のように夢に出てくるんです。最初は普通に夢だと思ってたんですが、ほぼ毎晩のように同じ女が出て来るなんてさすがに俺も気持ち悪くて……昨日夢の中でもう出てくるな!って言ったんです」
祐介はコップに入った水を一気に飲み干してから更に続けた。
「すると、朝起きたら姿見が粉々に割れてたんです。それを見て俺……急に怖くなってしまって」
話し終えると祐介が私に答えを求めるような目をしていた。
「その流れやと、お怒りになってしまったかもね。……彼女さん」
祐介は必死になって首を何度も左右に振って否定していた。
「彼女じゃないですよ!全然知らない女です!」
私は大きく溜め息を吐いて話を続けた。
「祐介くんがそう思っててもね。きっと相手はそう思ってないのよ」
私の答えに祐介の顔から血の気が引いていくのがわかる。
「彼女はきっと前に住んでた住人じゃないかな?」
「どうしたら良いんですか?本当にあの女が俺のこと彼氏とか思っていたら…めっちゃヤバイんじゃないですか?」
私を見る祐介の瞳が少し涙目になっていた。
「彼女と話せるかどうかやねんけど…かなり難しいかも…ここで別の女が出てきたら彼女さん怒り狂いそうやし」
生きてようが死んでようが色恋が絡むと女同士は何かと面倒なんよね。
「祐介くんは不動産屋さんに前の住人の事は何か聞いてた?」
私の質問に祐介は何かを確信したように頷いていた。
「俺が入居する前の前の住人が、男に捨てられて風呂場で手首切って自殺したって聞いてました。でも!ちゃんとお祓いをしたって言ってたし、めっちゃ家賃が安かったから住む事にしたんです」
祐介はかなりのチャレンジャーだった。
そして頭を掻きながら祐介は顔を赤くしてボソッと言った。
「あと……その女の人がめっちゃ可愛かったって聞いてたんで」
「それなら、もう一度夢の中で謝って付き合ったらどう?」
少し呆れたように冷たく言ってやったら祐介は泣きそうな顔をした。
「勘弁して下さい!死んでる女とはさすがに付き合えませんよ!」
確かに……冗談言ってる場合では無いねんけどね。




