第97話 覚醒
なんであんなコギャルと同じ物をつけなきゃいけないんだろう。いや、同じ物とまでは言われてないけど、でもコギャルがイヤリングを着けてるのを見てその発言が出るなんて、私のこと舐めてない? 『アイツには似合わないけど、キミになら似合うと思うよ』だったらまあ、セーフかな? わざわざ人を下げるのって私的にはあんまり良くない褒め方だと思うけど、女子ウケはいい気がする。
「……ああいうのって……オシャレな子が……」
「オシャレ? もうしてるじゃん」
「……っ!?」
び、びっくりしたぁ……。褒め言葉だけでも未だに心臓バクバクするのに、急に手を取ってくるんだもん。
……なんか不思議だよね。手って別にエッチな部位ではないじゃん? それなのに異常なほどドキドキするよ。なんか昔エッチな漫画の広告が流れてきて、ヒロインの子と両手を繋ぎながらエッチしてるコマが見えたけど……アレの意味が分かった気がする。アレは相当興奮するに違いない。ま、まあ……さすがに鳩山君とそこまでいくことはないだろうけど……。
「あっ、嫌だった? ゴメン、もう金輪際、雨宮さんには触ら……」
「大丈夫、全然」
さっきまでパニック起こしてたのに、反射的に冷静な対応ができた。私、なんか必死すぎてキモくない? なんかこの言い方、もっと触れって言ってるみたいでキモくない? いや、触ってほしいんだけど……。
「本当にゴメン」
「大丈夫」
「もう二度と触らないから、安心し……」
「聞こえなかった? 大丈夫って言ったんだけど」
わ、私? 私ってば何を口走ってるの? なんだかまるで、モラハラ彼女みたいな喋り方しちゃってるけども……。
「でも、女子の手を触るのって……」
「何?」
どうしちゃったんだろう、私。コミュ障特有の威圧感もあるんだろうけど、それとは別に圧を出しちゃってる気がする。なんだろ、そんなに嫌なのかな? 鳩山君が自重して、私に触れなくなるのがそんなに嫌なのかな? 最近、自分のことがよく分からないよ。やっぱり恋しちゃってるのかな。誰なの? 『男はバカだから、ちょっと優しくされただけですぐ勘違いする』とか言い出したのは。女の子だって同じだよ!
「…………フォークダンスとかあるし、別に問題ないか」
私の圧に負けたらしく、前言撤回してくれた。
………………いや、待って。それは嬉しいんだけど、鳩山君の性格的に考えると他のズベ公の手も握る気がする。いや、相手によっては手だけじゃ済まないかもしれない。貞操観念終わってる女子だったら、『好きに触っていいよ』とか下品な誘惑してくるかもしれないよね。あんまり考えたくないけど、鳩山君がそれに乗る可能性もゼロじゃないよね。だって男の子だし……。
「でも……」
「でも?」
「女子に触るのは……基本的には良くないと思う……」
「……うん」
あれ、なんか鳩山君の元気なくなった気がする。もしかして、私が怒ってると勘違いしてるのかな? 全然怒ってないし、むしろ勝手に私の手を離したことの方が問題なんだけど。
「私は気にしないけど……」
「……そっか」
私いつの間にか強くなってない? 大人しさに定評がある女子だと思ってたんだけど、低評の間違いだったのかな。
あーあ、これ完全に痴女だよ。だってこれって、『他の子は触っちゃダメだけど、私なら触っても大丈夫だよ』って言ってるようなものだもん。
「それと……あんまり女子に可愛いって言わないほうがいいと思う」
「じゃあ雨宮さんにも……」
「私は全然気にしないけど」
も、もうこれ……告白じゃない? 女の子がこんなことを言ってきたら、それはもう好意あるの確定じゃん。むしろこんなこと言っておきながら『え? 別に好きじゃないけど、何を勝手に勘違いしてるの?』とかほざく女がいたら、それはもう殴っても許されるよ。だって詐欺だもん。
「それと……この前……その……私の首……」
「首……?」
……うー、さすがに言いづらいよぉ。こればっかりは、自分から言うのはキモすぎるよ(鳩山君から言い出すのも大概気持ち悪いけど……)。
「首のホクロが可愛いって話かい?」
「……っ」
鳩山君はなんでそういうことを平気で口にできるの? やっぱり私のこと、ガチで好きだよね? 本気で好きじゃなけりゃこんなこと言わないもん。だってナンパする時にそういう褒め方しないじゃん。
「男子同士ならいいと思うけど……女子にそういうこと言うのは……」
「ご、ごめん……。悪気は……」
「私は全然気にしないけど」
テンプレみたいなのものができてしまった。やっぱり人付き合いって、テンプレが一番強いんだよね。言葉に詰まって会話が止まるって事態を防げるし。
「えっとだね、俺も考えが甘かったというか……。無神経だったと思う」
「だから気にしてないって。……私は」
あくまでも自分だけというのを徹底的にアピールする私。鳩山君が毎日毎日熱心に口説いてきたせいで、一皮むけちゃったみたい。多分だけど、ふざけ半分で突き放そうとしてきたせいで覚醒した気がする。
「とにかく他の子には言わないほうがいいと思う。女子の間で変な噂が流れると、その内、全クラスに広まるよ」
「怖いなぁ、女の子って。あえて良く言えば、協調性というかネットワークが優れているってことなんだろうけど……」
「私は絶対に広めないけど」
「うん、忠告ありがとう。女子との接し方には細心の注意を払うよ」
「そうしたほうがいいよ。私には気を遣わなくてもいいけど」
……ふぅ、だいぶ攻めちゃったよ。これワンチャン席替え前に落としきれるんじゃない? だって完全に相思相愛で、お互い他の異性には言わないようなことを言ってるもん。もうお互いに『この人、私のこと好きなんじゃない?』って思ってる段階に違いない。
うぅ……なんで私なんだろう。どのタイミングで私に一目惚れしたんだろう。もしかしたら去年の段階で目をつけられてたり?




