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自己肯定感の低い女子を褒め続けたら人気者になったので距離を置くことにした  作者: シゲ ノゴローZZ
鳩山視点

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9/10

第9話 初めて

 俺、知らなかったよ。雨宮さんってさ、結構強かなんだよ。

 山中やまなか……あっ、深雪ちゃんのことね。山中からネイルを外した件を言及されたんだけど、『大事な物だから、特別な日につけたい』って返答したんだよ。結果的に好感度を稼ぎながら、ネイルをつけない理由を確立できたっていう。

 まっこと恐ろしい女ぜよ……。山中が立ち去った瞬間、笑顔が解除されたのも含めてさ……。


「鳩山君、ちょっといいかな?」

「え? 何?」

「ちょっと待ってね」


 まだ了承していないのだが、お構いなしに靴下を脱ぎ始める。え、何が始まるんですか? 教室だよ? 後ろの席とはいえ、他に生徒がいるんだよ?

 それはさておき……。


「雨宮さん、見えちゃうよ」


 忠告しつつ、体ごと目を反らす。俺って紳士だろ?


「そうだよね、見たくないよね。ゴメンね、こんな汚い……」

「いや、見たいけど……傷つけちゃうかなって」

「じゃあ見ても別にいいよ? 見せたいのはそれじゃないんだけど」


 いいの? いや、見ないけども。

 おかしい……こんな性格じゃなかったはずだ。いや、性格を変えようとしておいて何を言ってんだって話だけど、違うんだ。こういう性格にしようとした覚えはないんだよ。清楚でありながら社交的ってのが理想形であって、友達を無下にするビッチを育成しようなんてこれっぽっちも……。


「見せたい物だけ見せてよ。もう準備いい?」

「そう……。うん、いいよ」


 なんで残念そうなの? そんなにパンツを見せたいの? はは、まさかね。

 とりあえず雨宮さんの言葉を信じて、ゆっくりと振り返った。


「マニキュア……?」


 ゴメン、無知で申し訳ないんだけど、足の爪にマニキュアってするもんなの? サンダルを履くならまだしも、学校なんて常に靴下履いてるだろ?


「うん、厳密にはペディキュアっていうんだけど」

「ウィキペディア? テディベア? え、なんて?」

「ペディキュアだよ、もう。ふふふ」


 へー、手と足で名称が違うんだ。そんなことより……良い笑顔だねぇ! 山中に見せた笑顔よりも遥かに良い笑顔だねぇ! 笑顔を見せてくれるのは嬉しいけど、同性の友達にこそ見せてあげなよ。ネイルをしてくれた恩人だろう? 夢を応援してるんじゃなかったのか?


「こっちも飾り気がない感じにしたんだけど、どうかな?」

「可愛いよ。足の小ささも含めて」

「も……もー……。鳩山君は本当に……もー」

「男なんて皆こんなもんだよ。足の裏とか好きだし」


 距離を置くためにも、ちょっと気持ち悪い発言をしてみた。この際、ちょっとぐらいなら変な噂が流れてもいいや。


「足の裏……? それはいつものヤツ?」

「いつもの……?」

「ほら、可愛い子に限るみたいな」


 俺ってそんなルッキズムの塊みたいな印象なの? 基本的に平等だよ?


「そりゃ誰彼構わず欲情はしないよ。相手によっては、コイツのは見たくないって思うだろうし」

「じゃあ私のは見たいんだよね? だっていっつも可愛いって言ってくるし……」


 俺の返事も待たず、足の裏を見せてきた。自分の可愛さを自覚し始めたのは良いことなんだが、これはちょっと絵面が……。


「だ、だから、見えちゃうって」

「この席なら鳩山君以外には見えないよ」


 そりゃ位置関係で言えばそうかもしれんけど、俺になら見られてもいいってわけでもないだろ? というかパンツが見えずとも、この光景を見られるのが嫌だよ。幸いにも、他の生徒からは注目されてないけど。


「……どっちも見たくないんだ。へぇ、やっぱり可愛いってのは嘘だったんだ。心にもないことを言って、遊んでたんだ。嘘告のノリだったんだ」


 嘘告の意味はわからんけど、俺が畜生扱いされてることはわかった。でも誤解を解くには直視しなきゃいけないわけで……よし。


「放課後、放課後に見せてよ。他の人がいない場所なら……」

「今日、家に誰もいないんだけど」


 ………………まずいですよ。


「雨宮さん、さすがに……」

「そうだよね。ドブスの家に上がるなんて、耐えられないよね」


 出会った頃のような卑下じゃなくて、外交手段としてこういうマイナス発言をしてるよ。強くなったなぁ……。


「……可愛いよ、雨宮さんは」

「じゃあ家に来てくれるよね?」

「……お邪魔させていただきます」


 完全に押し切られたよ。こんな暴走機関車みたいな女性だったとは、思いもよらなかったぞ。

 女子の家に上がるのは初めてじゃないし、なんなら最近上がったばっかりだけど、絶対言わないほうがいいんだろうな。

 なんか他の男子と俺で、扱いに差がありすぎるんだけど……どういうことだ? グイグイいきすぎたせいで、嫌われてる可能性を危惧していたのだが、杞憂だったらしい。代わりに別の可能性を危惧するハメになったけど。


「変なことしないでね……?」

「ああ、勿論だとも。足だけ見たらすぐ帰るよ」


 最高に意味不明な訪問理由だけど、他に用事がないから仕方ない。まあ、下手に学校で見せてもらうより安全だよな。誰に見られてるかわかったもんじゃないし。


「ふふ、楽しみにしとくよ」

「えっと……? 俺の方こそ……?」


 何が嬉しいんだろう。何が楽しいんだろう。何がしたいんだろう。

 ひょっとしてなんだけど、距離を置くタイミングをミスった? 遅すぎた? 引くに引けない関係性まで来てしまったのでは?

 わっかんねぇ……。一体俺に何を求めてるんだ? なんで俺好みのマニキュアをしてるんだ? 全てがわからん。ただ隣の席ってだけなのに、他の男子と何が違うんだろうか? 席替えしたら別の男子がターゲットになるのか?


「あっ、そうそう」


 出た。これもきっと頭語だ。俺にとって良くないことを言い出すときの頭語だ。


「私……男子を家に上げるの初めてなんだ」

「そっか……」


 だろうよ。だって最近まで、友達と遊んだこと自体なかったんだろ? そりゃ男が家に上がるシチュエーションなんて訪れないよ。


「他の男子が上がるなんてことは、これまでもこれからもないんだ」

「ハハハ、これからはわからないだろう?」

「……わかるよ?」


 ……私、怖いです。

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