第83話 ボマー
「雨宮さんって普段何をしてるんだい?」
うー……こっちはまだドキドキしてるのに、普通に話しかけてくるよぉ。それだけでも辛いのに、陰キャが聞かれたくない質問ランキング上位の質問が飛んできたよ。
「えっと……」
適当にテレビを見たりスマホを弄ったりと常にダラダラしてるんだけど、そんなこと言えるはずがないよね。テレビを見てるって言っても、毎週楽しみにしてる番組があるわけじゃなくて、点けた時にやってるのを見るだけ。だから『そっか、テレビ見てるんだ。どんな番組見てるの?』って聞かれたくないし、尚更正直に答えるわけにはいかないよね。そもそもダラダラしてるってのが印象悪いというか……。
「読書とか好きそうだよね」
私が答えに詰まってるのを悟ったのか、気を遣ってくれた。その気遣い、陰キャには凄く辛いんだよね。他の陰キャと喋らないから、実際のところは分からないけど。
「あはは……そうでもないかな……」
「あっ、そうなんだ。まあ、今は無理に本読まなくても、スマホで知識がつく時代だもんね。今の子供はスマホのせいでダメになってるみたいな意見もあるけど、結局は使い方次第だよ。そもそも若者の文化、生活というのはいつの時代も難癖をつけられるものなんだよね。きっと自分の時代になかった物、自分に使いこなせない物を若者が使いこなしていることが腹立たしいんだろうね。若さに嫉妬する気持ちは分からないでもないんだけど、ああはなりたくないね」
めっちゃ喋る、この人。私が口下手だから気を遣ってくれてるのかな? さっき私に言ったこと……かっ……可愛いってのも……気遣いなのかな? いやいやいや、今のおかしいって。〝なのかな?〟じゃないよ、確定なんだから。このクラスで私よりもブスな子なんて、数える程だもん。基本的に皆可愛いし……。
「ところでさっきの話に戻るけど、やっぱり目を出してみない?」
「えっ?」
「オシャレも大事だと思うんだけど、やっぱり勿体ないよ。あんなに可愛い顔をしてるのに」
「っ!? ご、ごめん、お手洗い行ってくるね」
も、もー! なんなの、この人はー! 何目的のお世辞なの!? もしかして女子全員にこれやってるの? もー……いつか刺されるよ? そういうことやってると、厄介な女の子達に懐かれて修羅場になっちゃうよ? 鳩山君って優しそうだし、執着心強そうな女の子に好かれそうなんだよね。
「雨宮さんって部活とか入ってるの?」
休み時間の度に話しかけてくるじゃん、この人。友達多いだろうに、なんで私にばかり話しかけてくるんだろ。やっぱり罰ゲームなのかな? それとも空気が読めないタイプの優しい人みたいな感じで、私みたいな陰キャに対して『あの子は馴染めていないみたいだし、俺がきっかけになってあげよう』ってなってるのかな? 陰キャはそっとしておいてほしい生き物なんだよ? 髪の毛で分かるでしょ? 社交的な子はこんな不気味な髪型にしないって。というか私が部活やってるように見えるの?
「……ううん」
「そっか、奇遇だね」
「……うん」
あー、ダメだ、全然返せないよ。せっかく話しかけてくれてるのに、全く気の利いた返答ができないよ。
「マネージャーとかやってみたらどうだい? どっかの」
「え?」
「面接でも有利になると思うんだよね。マネージャーって結構大変だろうけど、自分が運動するよりはマシだと思うよ。頭のおかしい人達が男尊女卑とか騒ぐからあんまり言えないけど、マネージャーって人間的にも成長すると思うんだよね」
「……あはは」
ダメだ、鳩山君みたいにベラベラ喋れない。えっと、なんだっけ、マネージャーになってみろって? 私が? 無理無理無理! 女の子と話すのも緊張するのに、男の子のお世話なんて死んじゃうって! それにマネージャーって運動部でしょ? 鳩山君みたいな紳士はほとんどいないって、運動部の男子なんてガサツで下品で性欲に支配されてる子多いじゃん。
「今の御時世にこんなこと言うのもなんだけど、雨宮さんみたいに可愛い子がいれば男子も頑張れると思うんだよね」
「っ! お、お手洗い行ってくるね、ごめん」
「うん。行ってらっしゃい」
もー! なんで毎回そういうこと言ってくるの! ノルマでもあるの? 休み時間が来る度に〝可愛い〟って言うノルマあるの? 一人でワードウルフの類でもやってるの? それともボマーなの? そのうち『可愛いに気をつけろ』って言いながら肩を触ってくるの? っていうかこのタイミングで離席したら、セクハラされて逃げたみたいな感じになるじゃん! 私は全然今の発言セクハラだと思わないし、男尊女卑だと思わないよ。でもSNSだと騒ぐ人いるよね? ああいう変な人達と同レベルの女子だと思われそうで嫌なんだけど! いや、見た目で言えばああいう人達とそこまで大差ないのかもしれないけど……。というかそろそろ頻尿だと思われそうで困るよ。




