第30話 退路爆破
いやぁ、俺ってヤツはつくづく果報者だなぁ。美少女二人と手を繋ぎながら下校できるなんてさ、刺されてもおかしくないよ。
うん、凄く歩きにくい。というか横に広がるのって迷惑だから、やめたほうがいいと思う。あと単純に恥ずかしい、幼稚園児みたいで。
「ねぇ? 手を繋ぐのはいいんだけど、なんで俺が真ん中なの?」
「善吉君以外と繋ぎたくないからだよ」
「奇遇だね、私も同じことを考えてるよ」
ははは、考えがシンクロするなんて、似た者同士だなぁ。是非、俺のことなんか無視して仲良くしてくれたまえ。
「雨宮さん、キミは勉強会とやらに行くべきじゃないか?」
そうだよ、せっかく友達ができたのに、約束を反故にするのはよくないよ。まあ、俺を優先してくれるのは嬉しいんだけどさ。
「私の勝手だと思うんだけど、違うかな?」
「自宅に帰るのは勝手だが、私達についてくるのは身勝手じゃないかな」
「違うクラスになったのに、いつまでも執着するのは身勝手じゃないの? 貴女が男の子だったら、危険人物扱いだよ」
あれ、喧嘩始まってない? どこでスイッチ入ったんだ?
喧嘩の原因はわからないが、俺を間に挟まないでほしい。電車でカップルに挟まれた時のような鬱陶しさがあるよ。
「……晴家さんって、背が大きいよね」
「む? 平均よりは上だと思うが、それがどうかしたのかい?」
「手も大きそうだね」
「少なくともキミよりは大きいだろうね」
急になんの話をしているのだろうか。晴家さんは雨宮さんと比べて大人っぽい雰囲気なわけだが、羨ましいのかな? 小さいのもそれはそれで魅力だと思うし、持ち味を活かしたほうがいいんじゃない? 隣の芝は青いってヤツかな。
「鳩山君は小さいほうがいいよね? 私の手のほうが女の子らしくて可愛いよね?」
え? そこで俺に話を振る?
「まぁ、そりゃ可愛らしさで言えば……」
「だよね? 小さくて柔らかいほうがいいよね?」
よくこのタイミングで聞けるよなぁ。悪気はないんだろうけど、晴家さん的にはあまり面白くないだろ? 説教を垂れる気はないけど、もう少し他人を気遣ったほうがいいんじゃないか? 二人の関係は知らないけど、適当に人付き合いしてると後々酷い目に遭うこともあるよ? 過去が刺してくるってヤツだね。
「私の手はちょうどいいサイズだが?」
「何がちょうどなの? バスケでもするの?」
「ふふっ、どちらかと言えば野球かな。下品な話は好まないが」
……? 晴家さんってスポーツなんかやってたっけ? っていうか野球って下品なのか? そりゃ上品ではないだろうけど、別に下品でもなくないか?
「ちょうど善吉君のサイズに合ってるのさ。ああ、キミは握ることはおろか、見たことさえないんだったね」
……もしかしてだけど股間の話してる? 野球ってそういうこと? この人、こんなに下品だったっけ? 雨宮さんは上品な人だから、こういう話をしないであげてほしい。俺のイメージだけど、なんとなく性交を汚い行為だと捉えてそう。
「たまたま私より早く出会っただけだよね? もしも去年同じクラスだったら、私だって今頃……鳩山君と……その……ね?」
なんで俺を見るんです? 晴家さんとの情事は場の空気に流されたがゆえのことであって、別に雨宮さんとヤる予定はないよ? そりゃまあ、嫌じゃないけどね? あれ? 雨宮さんはノリ気なの? 意外だなぁ、恋愛とか性欲と縁遠そうなのに。
「もしもの話なんて、なんとでも言えるさ。そもそもキミは限度を超えているね。相手が孤立するように誘ど……」
「わー!? わー! わー! ストップ!」
どうした!? い、今の声、雨宮さんから出たのか? 普段の様子からは想像もできない程の大声を出しながら、晴家さんにチョークスリーパーをかけてるんだが?
「わ、わかった……何も言わ……ない……」
身長差のせいで逆にダメージが大きいらしく、必死にタップしている。そっか、身長低い側がチョークスリーパーをかけたら、体重がモロにかかるのか。実用性はともかく、意外な発見だな。
「晴家さん、今のは反則だよ?」
晴家さんがなんの反則を犯したかは知らないけど、チョークスリーパーも大概じゃない? なんで急にプロレスごっこを始めたの?
「だが事実だろう? キミの奸計のほうがよほど反則だと思うのだが」
「晴家さんも恩恵を得てるからいいじゃん……」
「ふふっ、それもそうだね。このままタダ乗りさせてもらおうかな」
「別にいいよ? どうせ最後に笑うのは私だから」
あっ、よくわからないけど仲良くなってる。女子も拳で語り合うと仲良くなるんだなぁ。てっきり男の特権だとばかり……。
まあ、なんでもいいや。仲良きことは美しきかなって言うもんね、どこの誰の言葉か知らんけども。
「ドバイ(のお土産)楽しみだなぁ」
ドバイって何があるんだろう。なんとなくだけど、チョコレートのイメージが強いかな。金でできたアクセサリーとかのイメージもあるけど、友達からもらうようなものじゃないよね。
「……! 選ぶ気はないということかい?」
「ん? (選べるほど特産品に詳しくないし)キミ達に任せるよ」
「待って、鳩山君。それはつまり、私達の選択に文句を言わないってこと?」
「えっ? そりゃそうでしょ」
友達からのお土産に文句言う人いる? ネタで意図的に変なのを選ばない限り、文句は出ないでしょ。
「選ばないのは腹立たしいけど、責任を取る意思があることが確認できてよかった」
「そこに関しては同意かな。まあ、最後には選んでくれるって信じてるよ、鳩山君」
あれ、ひょっとして俺がおかしいのかな? お土産って普通、貰い手側は選ばないよね? わざわざリクエストなんてしないだろ? あー、あれかな、男女差ってヤツかな? 俺は送り手の気持ちを受け取るタイプなんだけど、女子的には好みじゃないお土産はもらわないほうがマシなのかな。どうも分かり合えんなぁ。




