第106話 確定祭り
あんまり詳しいことは分からないけど、宝くじって高額当選すると振込まで時間がかかるらしいね。きっと今の私は、その人達と同じ心境だと思う。いや、それ以上にソワソワしてるんじゃないかな。
ふぅ……。とりあえず状況を整理しようか。ええっとまず結論から言うと、現時点で私と鳩山君は交際することが確定しています。その根拠として、私と鳩山君は両思いが確定しています。んふふ……結構前から分かりきってたことなのに、根拠という名のピースが日に日に埋まっていくおかげで、未だにニヤニヤが収まらないよ。株価が右肩上がりになってる時って、こういう心境になるのかな?
っとと、話が逸れそうになったね。で、昨日ついに鳩山君が私の家に上がったんだよね。私が誘った時、鳩山君は心の中でガッツポーズしてたんじゃないかな。平静を装ってはいたけど、興奮が漏れ出てた気がする。いやっ、〝気がする〟とかそういう次元じゃないね。確定でいいよ、興奮確定。具体的にどういう変化があったか聞かれたら『それは私にしか分からない』としか言えないんだけど、とにかく確定。
とまあ、この時点で既に交際が確定してるんだけど、私はダメ押しにもう一歩踏み込んだんだよね。自分のことを狙っている男の子の目の前で靴下を脱ぐっていう、襲われても文句を言えない挑発をしたんだよね。しかも……下着がチラ見えする角度でさ。その辺のビッチならまだしも、私みたいに奥手な女の子にそういうことをさせた以上、鳩山君は責任を取ることが確定したよね。
んで……鳩山君は耐えたの。日和ったわけじゃなくて、耐えたの。これってさ、私のことを大事にしてくれたってことでしょ? 貞操観念がしっかりしてる鳩山君と言えど、あの状況で耐えるっていうのは目から血の涙がこぼれるぐらい辛かったはずだよ。それでも私のことを大事にしてくれたんだ。こんなんもう結婚確定ですやん。
よしっ! もう一踏ん張りしないとね! 恋愛なんて何が起きてもおかしくないんだから、勝ち確定の状況でも油断しちゃいけないよ。勘違い女が鳩山君に襲いかかる可能性だってあるわけだし、私と鳩山君が実質交際してるってことをそれとなく周りにアピールしよう。
「おはよう、鳩山君」
大きな声を出すのは苦手だけど、頑張って鳩山君以外にも聞こえるくらいの声量で挨拶してみた。精一杯の笑顔をセットでね。
「おはよう、良い朝だね」
か、カッコいい……。昨日あんなことがあったのに、平静を保ててるよ。他のバカ男子だったら、エッチなことをしたいっていう欲が前面に押し出されて滑稽な様を晒すだろうに、鳩山君は紳士であり続けてるよ。職場恋愛してても、仕事の時は気持ちを切り替えられるタイプだね。私みたいな捻くれ女が、本当にこんな優良物件を手にしていいのかな?
「昨日見た物とどっちが良かった?」
紳士であろうとしている鳩山君にこんな意地悪な質問をするのは心苦しいけど、これも鳩山君のためなんだよ。ネジの外れた勘違いメンヘラ女に言い寄られないためにも、外堀をガッチリ埋めてあげなきゃ。
「あんなところ、男の人に見せたことなかったから……緊張したよ」
鳩山君の返答が遅かったから、追加でぶち込んでみた。少し際どい気もするけど、鈍い人もいるから仕方ないね。コギャル対策は大事だからね。
「あ、ああ……。足に塗るマニキュアなんて初めて見たよ!」
……うん? なんだろう、鳩山君の今の返答は。よく分からないけど、違和感があるね。なんか良くない物を感じたような……。
いや、違う! これは違う! むしろ逆な気がする! 小学生男子がクラスメイトに『お前、◯◯のこと好きなん?』って聞かれた時に、『はぁ!? あ、あんなブス全然興味ねーし! 好きじゃねーし!』って照れ隠しをするアレだよ! そう、つまりこれは私のことが好きだってのが更に確定しちゃったってわけだね。ふふっ、既に確定してる物が更に確定するっていうのは変な表現だけど、なんにせよ私にとって都合の良い展開だよ。冒頭に出てきた宝くじで例えるなら、当選番号をテレビと新聞、ネットの三つで確認したようなもんだね。クイズで言うなら、自分が想定している答えと、次々に追加されていくヒントがことごとく合ってるみたいな感じだね。




