第100話 警告
鳩山君は明らかに動揺している。二号さんを作り損ねて残念がってるような雰囲気じゃないし、そこだけはしっかりと汲み取ってあげよう。うんうん、鳩山君的にもあのズベ公は迷惑だったんだね。それは本当に良かった。それはそれとして、ヤキは入れさせてもらうけど。
「やっぱり誰にでも可愛いとか言うんだね」
「ハハハ、前にも言ったかもしれないけど、本当に可愛い子にしか言わないって」
うん? この状況でよくそんなことが言えるねぇ。
「そうなんだ、あの子は本当に可愛い子なんだ。ふーん……」
様子見がてら『私、怒ってますけど? 何か申し開きはあります?』という態度で威圧してみた。うーん……あんまり響いてないなぁ。もしかして自覚ないの? 悪いことしたっていう自覚がないの?
「それに、女の子に触らないほうがいいって言ったのに、触ろうとしてたよね?」
「だって、あっちが触ってもいいって……」
「録音したの? 言質取ったの?」
口約束も法律上は契約にカウントされるみたいだけど、結局証明できないからトラブルが起きた時に弱いんだよ。今回は私という第三者がいるけど、訴えられた時は普通に負けるんじゃないかな。グルだって言われたらそれまでだし。
「女の子ってのは、自分から迫っておいて後から被害者面する生き物なんだよ」
「え……?」
『え……?』じゃないよ! 女ってのは何故か、有事の際は周りが味方をしてくれるという前提で動く生き物なんだよ。自分に同情しないヤツは悪だという空気を作る生き物なんだよ。どうしてそれが分からないの?
「いわゆる二毛作だね。自分の意思で売っておいて、売れなくなった瞬間に『私達は買われた』とか、わめきちらす生き物なんだよ」
親に強要されたとかならまだしも、自分からグラビアアイドルになったくせに売れなくなった途端に二毛作だもんね。普通の主婦だってそうじゃん、仕事を免除されてるのに都合が悪くなったら『家事を押し付けられた! 職を失った! 職歴が空白になってしまった!』って喚くじゃん。仕事が嫌だから結婚したくせにねぇ。
「証拠がなくても女の子の証言は力を持つんだよ。男の子は無実を証明するには証拠が必要なんだ。それが世論だよ、この国だよ」
痴漢の冤罪とか司法のバグだよね。まあ、女性側に証拠を求めると泣き寝入りになるケースも出てくるから難しいところではあるんだろうけど……。
「軽率だったよ。ありがとう、教えてくれて」
うーん……。そうやって素直に頭を下げられると、私も強く出れないなぁ。というか鳩山君ってやっぱり良い男だね。普通の男って絶対『いやっ、ちがっ……』から始まるでしょ? 大人の対応されると、口頭注意で手打ちにせざるをえないね。本来なら落とし前つけさせなきゃいけないんだけど。
「……とにかく、何も考えずに褒めるのはやめたほうがいいよ。本気にするから」
まったく、今回は未遂だったからよかったものの……。
「う、うん……。じゃあ……」
「私は気にしないけど」
危ない、危ない。私が止めなきゃ『じゃあ雨宮さんも褒めないほうがいいよね』とか言い出すところだったよ。
「それと……本気にした人は、その現場を目撃したら疑うから」
「……? ええっと?」
「『誰にでもこういうこと言ってるんだ』とか『遊びだったんだ』とか」
マジで気をつけたほうがいいよ? 面倒くさい女っていっぱいいるからね? 少し他の女と喋っただけで、すぐにメンヘラムーブかましてくるから。鳩山君ってそういう厄介な女に好かれやすそうだし、私が守ってあげないとね。
「肝に銘じておくよ、ありがとう」
「うん、気を付けてね」
どーせまた同じことするんだろうなぁ。私達、もうさっさと付き合ったほうがよくない? 公認カップルになれば、棒泥棒も少しは減るでしょ。こういうのはゼロにならなきゃ無意味って考える人もいるけど、本当にアホだと思う。減るに越したことはないんだから。




