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ハリー・ウィンチェスター

*ハリー視点です(*^-^*)。時間が少し遡ります。

「ハリー、今日は何の用事だ?」


俺の親友のマクシミリアンが苛々した口調で告げる。


「別に~。どうしているかと様子を見にきただけだよ」


「今日はシルヴィが来るんだ。お前は邪魔だからとっとと帰れ!」


「お前は独占欲が強すぎる。そんなに束縛が強いと逃げられるぞ~。俺はまだちゃんと話をしたこともないんだ。ちゃんと紹介してくれてもいいだろう?」


「まさか!お前のような女にだらしない男と大切な婚約者を接触させるわけないだろう!彼女が来る前に早く帰れ!」


マクシミリアンが目を吊り上げて言う。


真剣マジだな、珍しい』と俺は思った。


こいつは何だかんだで俺のやることに甘い。


以前のマクシミリアンは恋愛に淡泊で付き合っている女性がいても、常に俺を優先してくれたのに、と子供っぽく拗ねた気分になる。


異常なほどモテるのに女には目もくれず俺と一緒に戦いに明け暮れていた日々を懐かしく思い出した。


魔王と共に戦ったのはもう四年近く前になる。


その後、魔王を封じ込めた人形ひとがたを森で捜索している間に、マクシミリアンはシルヴィア・クリフォード侯爵令嬢を見初めたらしい。


それまではどんな美女が寄ってきても軽い付き合い程度しかなかったくせに、シルヴィア嬢に対しては異常な執着を見せるようになった。


彼女について詳しい内容を話してくれないのも初めてで、俺は正直裏切られたような気持ちになった。


『俺たちは命を賭けた戦場でお互いの背中を預けられる仲じゃなかったのかよ!』


つい叫びたくなる。


人形ひとがたの捜索に集中すべき時も、あいつの頭はシルヴィア嬢のことで占められていた。


そして、シルヴィア嬢の一挙手一投足まで見逃さないように必死で情報収集をする。


「おい、お前・・・気をつけろよ?お前の執着はちょっと異常だぞ」


諫めたことも何度かあったが、奴は「あ、ああ。分かってる」と生返事するだけで俺の諫言を聞くことはなかった。


そして、最終的に人形ひとがた捜索にシルヴィア嬢を巻き込んで、人形の奪還とシルヴィア嬢との婚約を一気に成し遂げた。


マクシミリアンは異常なほどに頭が切れるのは分かっている。彼の作戦で失敗した経験はほとんどない。


しかし、俺は正直、いっそ失敗すればいい、そうすれば奴も学ぶだろう、と思っていた。


今考えると子供っぽい嫉妬というか独占欲だったのかもしれない。


幼馴染で、誰よりも大切な親友で、女なんかよりもずっと一緒に長い時間を過ごし、共に戦ってきたマクシミリアンが碌に会ったこともない女性に恋をして執着しているなんて、認めたくなかったんだ。


はぁ、と俺は溜息をついた。


子供っぽい感情を脇に置いて落ち着いて考えると、親友の幸せを祝ってやるのが自分の役割だと分かっている。


最初はようやくアイツにも真剣に恋愛することが出来る令嬢が現れて良かったと思っていた。


しかし、話があまりにスムーズに進みすぎて、逆に怪しいと思うようになった。俺は天邪鬼なんだ。


心配なのは、シルヴィア嬢がどれほど真剣にマクシミリアンのことを愛しているのか、ということだ。


マクシミリアンは、人形奪還のために婚約する必要があると半ば詐欺のように婚約を承諾させたと言っていた。


それでもいい、僕は好きになってもらえるよう努力するだけだ、という親友のいじらしさに涙が出そうになった。


その後シルヴィア嬢を呪っていた令嬢は逮捕され、もはやシルヴィア嬢への脅威は無い。


シルヴィア嬢も自分のことを好きだと言ってくれた、と子供のように頬を染めるマクシミリアンの気持ちは本物だ。


彼にとっては初恋と言ってもいいだろう。


根っこのところで純情なこの男が裏切られて傷つけられるのは見たくない。


だから、シルヴィア嬢の本性が知りたかった。


本当にマクシミリアンのことを好きなのか?


肩書や容姿や財力に惹かれているだけじゃないのか?


あいつを利用しようとしているんじゃないか?


俺の心は不安で締めつけられる。


もし、シルヴィア嬢のマクシミリアンに対する気持ちが純粋な愛ではなかった場合、俺は傷が深くなる前に彼女から親友を引き離す覚悟でいた。


どんなに恨まれてもいい。


マクシミリアンを大切にしない女が彼の隣に居るのが許せない。


だから、俺はシルヴィア嬢と何度も接触しようと試みたが、いつもマクシミリアンに邪魔をされる。


今日も本気で俺を追い出した親友の背中を寂しく眺めながら帰途に着いた。



***



親友に冷たく追い返された俺は王宮の騎士団に戻り、山と積まれた事務仕事を終え、久しぶりに体を動かそうと騎士団の演習場に顔を出した。


「団長!」


すぐに声を掛けてきたのは副団長や同期の仲の良い連中だ。


「久しぶりですね!今日は鍛錬して頂けますか?若い騎士も沢山いて、団長に指導してもらいたいと望んでいます」


副団長の言葉に俺は黙って頷いた。


親友を盗られたような悔しさや、一人取り残されたような寂しさを発散させるためにも思いっ切り鍛錬したかった。


**


数時間後。


ほとんど息を切らしていない俺の周囲には疲れ果てた若い騎士たちが床に転がっている。


「まったくこれくらいで。若いのにスタミナが足りないぞ!基礎体力作りをもっとメニューに加えろ!」


大声で副団長に指示を出した時、一人の若い騎士が立ち上がった。


「・・ま、まだまだ!どうかもっとご指導をお願いしますっ!!!」


何度も立ち向かってきたのを撃退したのでもうボロボロだが、この騎士はなかなか筋がイイ、将来有望だと感じていた。


何度負けても立ち向かってくる根性もある。


見込みがあるな。


俺は嬉しくなった。


「おい!君の名前はなんという?」

「はい!サミュエル・クリフォードです!」

「クリフォード?・・・クリフォード侯爵の?」

「は、はい?そうですが・・・」


突然俺の口調が変わったので若い騎士は戸惑ったように剣を下げた。


「君の妹君はシルヴィア嬢か?」


尋ねると、サミュエルの顔つきがハッと厳しくなった。


「はいっ!シルヴィアは我がクリフォード侯爵家の宝でございますっ!」


直立不動で敬礼する。


シルヴィア嬢は何かと悪評を立てられることが多かった。


サミュエルは大事な妹の悪評を聞く度に腹を立ててきたのだろう。


うちの妹?最高ですが?なにか?


という挑戦的な顔つきを見て、俺は少し笑ってしまった。


「団長閣下!何が可笑しいのでしょうか?我が妹は清く気高く美しく、誰に何ら恥じることのない清廉な生活を送ってきました!我が侯爵家の自慢の妹です!」


妹自慢に婚約者のマクシミリアンのことを入れないサミュエルに俺は好感を持った。


「いや、君の妹君を侮辱するつもりはこれっぽっちもない。ただ、シルヴィア嬢と一度ゆっくり話がしたいと思っていてね」


「は!?妹は婚約しています。婚約者以外の男と二人きりで話をしていたなんて悪い評判が立つかもしれない!」


「いや、サミュエルは近くに居てもらって構わない。ただ、俺はシルヴィア嬢の真意を聞きたいんだ!」


俺は正直にサミュエルに自分の懸念を打ち明けた。


サミュエルはしばらく考え込んでいたが、眉間に深い皺が寄っている。


「それは杞憂だと思いますが・・・一応妹に話をしてみます。それで彼女が応諾したら団長にご連絡致します。それで宜しいですか?」

「ああ、それで構わない。感謝する」


そんな会話をした翌日には「妹は構わないと言っています」という返答が伝えられ、その週末にシルヴィア嬢との面会が実現することになった。


部下のサミュエルに会いに行くというていで、クリフォード侯爵家を訪問する。その時にシルヴィア嬢と二人きりで話をする機会を貰えるという。


あまりにとんとん拍子で驚いた。


シルヴィア嬢というのは一体どんな令嬢なんだ?


サミュエルは包み隠さず俺の懸念を彼女に伝えたそうだ。


婚約者の親友が『お前の本性を会って確かめたい』なんて言ったら、怒って追っ払われるのが普通だろう。


サミュエルは悔しさを滲ませて、物凄く不本意な顔つきだった。


「妹に一度会えば、団長の心配が杞憂だということが明らかになるでしょうが、まったく・・・シルヴィアは人がよすぎる。俺はお二人が面会するラウンジのすぐ外にいますからね、妹に何かしたらすぐに取り押さえますよ!」


しかし、今、自分の目の前に座るシルヴィアは穏やかな笑顔を浮かべているだけだ。気分を害したような表情は全くない。


「ハリー様のご懸念は尤もですわ。私は悪評が高かったですし、ほぼ初対面で婚約したのですから親友のことが心配なのは当然です。それだけマクシミリアン様のことを大切になさっておいでなのですね」


確かにシルヴィア嬢を悪く言う人間はいたが、それは人形の呪いのせいで根拠のない噂だと聞いている。だから、それについては訂正した。


「いや、君の悪評はデマだったのだろう?それは信じていない。俺が心配しているのは、君がマクシミリアンのことを真剣に好きなのかということだ。最初は人形ひとがたを奪還するための戦略として婚約したと聞いている。マクシミリアンはいい奴だ。だが、彼が君に執着して勝手に情報を探っていたことを知って、それでも彼のことを好きだと思えるか?君の気持ちは純粋なものなのか?彼を利用しようなどと考えてはいないか?そこまでいかなくても、彼の真剣な愛情に応えられるだけの覚悟が君にはあるのか?・・・そういったことを確認したいと思ったんだ。親友が傷つくのは見たくないからな」


思ったことをハッキリ伝えた。俺は彼女が気を悪くするのではないかと思ったが、彼女は「ごもっとも!」というように深く頷いた。


「よく分かりますわ。私がハリー様の立場でしたら、同じように心配すると思います」


彼女の率直な返事に俺は呆気に取られた。


怒らないのか?


こんな失礼なことを面と向かって言われて?


「ハリー様はとても優しい方ですね。私の悪評をデマだと言って下さって、有難い限りです。今でもその噂を信じている方がいらっしゃいますので。私の不徳の致すところですが・・・」

「いや、そんなこと・・・」


なんだ、イイ子ぶりっこなのか?と疑いたくなるが、彼女の表情は真剣そのものに見えた。


「ただ、ハリー様のご懸念は無用ですわ。私はマックスのことを心からお慕い申し上げております。心をお見せすることが出来ないので、そこは信じて頂くしかないのですが・・・」


へぇ、マクシミリアンのことを気安くマックスなんて呼んでんのか?


軽く嫉妬が湧いてくる。


「それは、マクシミリアンの顔がイイからか?」


「いいえ」


「頭がいいからか?」


「いいえ」


「強いからか?」


「いいえ」


「地位や名誉があるからか?」


「いいえ」


「家柄のせいか」?


「いいえ」


「金があるからか?」


「いいえ」


「じゃあ、どうしてあいつが好きなんだ?」


世の令嬢方がマクシミリアンに惹かれる理由すべてに首を振ったシルヴィアが、ぽっと頬を染めた。


くそぅ、可愛いじゃないか!


でも、純真ぶったって、俺の目は節穴じゃないぞ!


俺は試すように彼女の顔を見据えた。


「・・・あの、マックスは私をとても愛してくれています」


「それはまぁ、その通りだな。でも、気持ち悪くないか?何年もコッソリと君のことを調べていたんだぞ?」


「私のことをそれだけ知りたいと思って下さったんです。嬉しい以外の何もありません。マックスは私の好きな本や音楽や食べ物、好きな色、モーニング・ルーティンやドレスのローテーションまで知っていてくれるんですよ!」


頬をぽっと上気させながらシルヴィアが叫ぶ。


えーっと、それは嬉しいのか?


女性にとっては嬉しいのか?


キモイとか、そういう発想にはならないのか?


「マックスは私の家族の好みまで知ってくれています。初めて正式な婚約の挨拶に来てくれた時に、両親だけでなく兄や弟の好む贈り物まで持って来てくれました。私にとって家族はとても大切な存在です。その家族を大事に扱ってくれる人はそれだけで好感が持てます!」

「な、なるほど・・・」


マクシミリアンがそこまで考えていたとは知らなかった。


「私はクリストファー王太子との婚約で酷い経験をしました。ですから家族は、幸せにならない結婚を私に無理強いすることはないでしょう。むしろ、求婚者に対して厳しい視線を向けると思います。マックスはそんな状況でも私の家族と仲良くなる努力をしてくれました。私は大切な家族を大事にしてくれるマックスを心から大事にしたいと思っています」


きっぱりと言い切るシルヴィアの表情には嘘や偽りは感じられなかった。



「こんな風に大切にされたことは生まれて初めてです。私も同じようにマックスを大切にするとお約束します。もし、私が彼を裏切ったらハリー様に喉首掻き切られても構いません」


おいおいおいおい!


なんか怖い!


突然物騒なことを言い出したシルヴィア嬢に俺は慌てふためいた。


「いやいや、まさかそんな野蛮なことはしません。それに・・・シルヴィア嬢の真剣な思いは伝わりました。失礼な疑いをかけて大変申し訳なかった。お詫び申し上げます。どうかマクシミリアンのことを宜しくお願い致しますっ!」


潔く頭を下げると、シルヴィアは笑顔で優雅なお辞儀を返す。


「最善の努力を致します。こちらこそどうか宜しくお願い申し上げます」


しかし、その後シルヴィアの口角が上がり、口調が変わった。


「ところで。わたくしもハリー様とお話ししたいことがございます。ハリー様は友人には傷つかないように心を砕くことが出来るのですね?それなのにどうして女性の気持ちを踏みにじって平気なのでしょうか?」


突然話が変わり、俺は混乱して頭が真っ白になった。


シルヴィアの顔は笑みを浮かべているが、その笑みがなんか怖い!


そして、目は笑っていない。


なんだ!?


イキナリなんの話?


パニックになった俺を追い詰めるかのように、シルヴィアはゆっくりと語りかけた。


「セーラ様にきちんとお返事なさいませ」

「は!?誰!?なに?なに?怖い!」


並みの令嬢では出せない迫力に、さすがマクシミリアンと釣り合う器だと妙なところで感心した。


「まぁ、お心を騒がせたご令嬢のことを覚えてもいらっしゃらないのですね。一体これまでどれだけの女性を泣かしてこられたのか・・・」


ふぅと溜息をついて、冷めた紅茶を口に含むシルヴィアから立ち昇る圧に俺は負けた。


「いや、すみません!俺が悪かったです!なんだかよく分からないけど、俺がすべて悪かった!だから、許して下さい!」


土下座せんばかりの勢いで叫ぶと「あら?」とシルヴィアは怪訝な表情を浮かべた。


「ハリー様は本当に覚えていらっしゃらないの?」

「覚えていない?なにを!?・・・ですか?」

「・・・・セーラ・ボールドウィン様のことを覚えておいでですか?」

「・・・・覚えています。辺境伯領で大変お世話になりました。才色兼備の素晴らしいご令嬢で、武の心得もある方でした。彼女がなにか・・・・?」


よく分からないがセーラ嬢のことはよく覚えている。するとシルヴィアの顔色がみるみる青ざめた。


「あの、実はセーラ様から頼まれたのです」


シルヴィアの説明を聞いて、俺は呆然とした。


セーラ嬢は俺が辺境伯領を離れる時に、俺に恋文を渡したらしい。


そして、俺の返事を四年近く待ってきた。


振られても構わないから、とにかく気持ちに整理をつけたい。


俺の返事を聞いてきてくれないか、とセーラ嬢はシルヴィアに頼んだらしいのだ。


「返事をしないということは、拒絶ということだ。ハリーは面倒くさいことが嫌いだからな。多くの女と浮名を流したが、別れる時はいつも自然消滅を狙っていた。女からの告白に返事をするのも面倒くさいと考えるタイプだから、返事がないということが返事だと思うぞ」


マクシミリアンはそう宣ったらしいが……。


確かに過去の自分の行いを振り返るとそんな風に言われても仕方がないようなことを繰り返してきた。


しかし……


セーラ嬢から恋文をもらった記憶が全くない。


彼女は魔法や剣技に長け、辺境伯の騎士団と共に戦えるほど強い。


しかも、魔王との戦いの場でも取り乱さず冷静に状況を判断できる女性だった。


例えば、自分が足手まといになりそうな時は率先して安全な場所に隠れるような聡明さがあった。意地になって無理をすると仲間に迷惑をかけると理解していたのだ。


次々と仲間が傷つき、追い詰められても表情を変えずに戦況を見極めつつ、逃げずに戦う強靭さに俺は感銘を受けていた。


美しく聡明な戦いの女神。


内心憧れていたといっても過言ではない。


そんな彼女から恋文をもらったら、絶対に忘れるはずがないし、その返事をどうするか苦悩していたことだろう。


忘れっこない。


「俺は彼女から恋文をもらったことはない。それは本当だ」


きっぱりと言い切ると、シルヴィアが初めて困惑した表情を見せた。


「セーラ様は、貴方のカバンの中に手紙を忍ばせたと仰っていましたが・・・」

「俺のカバン?旅装束のカバンだな?分かった!確認する。シルヴィア嬢、すまなかった・・その、君のことを疑って・・・」

「いえ、私もハリー様を疑っていました。失礼な発言をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」


シルヴィアが深く頭を下げる。


「いや、感謝する。セーラ嬢のこと、知らせてくれてありがとう!旅に持っていくカバンは次にまた同じものを持っていくので、帰宅してから中身を空けないんだ。約束する。ちゃんと誠意をもって彼女に返事をするから!」


そう叫ぶと俺はクリフォード侯爵邸を飛び出した。




その後、騎士団の宿舎に戻り、埃まみれのカバンを取り出した。


開くとぷーんとカビた匂いが漂う。


ちゃんと洗わないとダメだな、と面倒くさがって放置していたことを反省した。


古い衣類や保存食などが乱雑に詰め込まれたカバンを空にすると、一番底からカビの生えたヨレヨレの手紙が姿を現した。


封筒の表に美しい筆跡で俺の名前が書いてあるのを見て、ドキンと心臓が震える。


あの女神が俺のためにこれを書いてくれたのか?


そして、何年も返事を待っていてくれたんだ。


本当に申し訳ないことをした。


どんな顔をしてしたためてくれたのか?


頬を染めながら書いてくれたんだろうか?


嬉しい、というのが正直な気持ちだった。


キリッとした生真面目な表情を変えないセーラ嬢の顔を思い出すと嫌でも顔がニヤける。



俺はドキドキしながら封筒の封を開けた。


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