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裏切りと信頼の境界線  作者: 三枝愛依
10/13

記憶と思想の境界線

一羽の鴉が結界を超えて空を舞う。


「透空くん!!透空くんっ!!!」


私は、ぽっかりと貫かれた穴を見て一瞬固まるが、すぐに透空くんに駆け寄る。


「桜木!危ないから下がれっ!!」


私は目前の赤い槍に気付いた時には既に目と鼻の先だった。


「くそがぁあああ!!!」


紗燈くんが、私に迫る赤い槍を無理矢理逸らす。


「くそっ!桜木、逃げるぞっ!!」


紗燈くんの丈夫な腕に抱かれて階段を駆け下りていく。


「え、あ……透空くんが………」


私は声に出すが、暴れて抵抗はしなかった。

だって、紗燈くんのとった行動がこの状況でもっとも正しかったからだ。


「あ、紗燈くん……透空くんが!!」


紗燈くんは黙って走り続ける。


「あ、嫌だ……ダメだよ………」


咄嗟に出た言葉は、透空くんの死への否定。


心の中で友達を失うのとは別の何か辛く悲しい感情が私を押し潰す。


死とは一瞬で、人の命が軽々しく消えることを思い知らされた。


「桜木!大丈夫か?!!」


紗燈くんが山をずるずると降りて行く。


「うん、私は大丈夫だよ………」


「よし、このまま皆のところまで逃げるからしっかり掴まっとけ!!」


紗燈くんはそう言うと、自分の身体能力を活かして更に速度をあげる。


「ここでくたばったら、誰も蒼夜を助けられねぇ!!そんなの嫌なんだろ。」


紗燈くんは私のこの隠れた感情が何かを知っているかのように言った。


「蒼夜はしぶとい奴だと願うしかないだろ、あの骸骨の槍を前に俺たちじゃどうしようも出来ねぇよ。」


紗燈くんは、歯を食いしばって悔しそうにそう言った。


「今の俺達には蒼夜が必須だ、だからこそ絶対に助けなきゃいけない。なら、皆を呼ぶしかねぇよな。」


紗燈くんはそう言い切ると、再び汗を流しながら山を駆け抜ける。


草木のことごとくを蹴り踏み潰してなんとか、浜辺に出る。


「みんなぁ!大変だ!!!」


紗燈くんがそう言うと洞窟の方から、白石さんと藤川さんが出てくる。


「どうしたんだ?!」


藤川さんが駆け寄ると、紗燈くんは息を切らして私を地面に下ろす。


「はぁ…はぁ……蒼夜が…蒼夜が………」


白石さんは、数秒硬直すると疲れ果てた紗燈くんに詰め寄る。


「蒼夜がどうしたの?!」


「骸骨の槍に心臓を貫かれて死んだかもしれない。」


「………どうして、蒼夜を置いてきたの?」


「置いてくるしか無かったんだ!!あの骸骨の槍は一度投げたら、どんな障害物も突き破って俺らを貫いてくる!」


「そんな…じゃあ、蒼夜は………」


「分からない、まだ分からないだろ!だから、だからみんなの力を貸してほしい!」


紗燈くんは白石さんに逆に詰め寄る。


「待って、さっき鐘苻さんが起きてベルリア(神の鉄塔)に向かった。彼女なら、倒して蒼夜を連れて帰ってくれるかもしれないし私たちは蒼夜を助けられる余裕もない……私は本当なら今すぐにでも助けに行きたいけど、私のクロス(異能)が戦闘向きではないし神代さんはここの守りで連れて行けないし……鐘苻さんに願って二人も待とう。」


紗燈くんは、少し考えると苦い顔をして渋々頷いた。




▷▶︎▷




「ふぅ……ここが、ベルリア(神の鉄塔)………いくら私でも命の危険がある以上は気を引き締めて行きましょう。」


私は、もう既に彼らに攻略されたであろう階を駆け上って合流を目指す。


「長い螺旋階段……これは足に来ますね。」


螺旋階段に文句を垂れていると、すぐに資料が散らばった階に辿り着く。


「ここは……いえ、きっと有力な情報は既に彼らが持ってくれている事でしょう。先を急ぎましょう」


私は、血に濡れた足をもう一度動かした。


「長いですね、果てしない名付けるなら無限階段です。」


私は、暗い階段に明かりを求めて右手の宙に火球を浮かばせる。


「明るいし温かいですね、それよりも彼らはかなり上へと上がったのでしょうか……物凄く上がった気がしますが、出会う気配がありません。」


私がそう呟いた途端、階段上から頭骨を狙って赤い槍が飛んで来た。


「なっ?!くっ!!」


体を無理やり、斜めに逸らして腕への軽い切り傷で防げた。


「槍……ですか、面倒ですね。」


私は、暗く何も見えない続く階段の奥へと火球を数発撃ち込む。


明るく周りを照らす火球は、螺旋状にグルグルと私と共に登っていくとやがて骸骨の頭にぶつかり呆気なく消える。


「あなたが槍を投げた本人ですか、人に槍を投げるなんて危ないと教わりませんでしたか?」


私は片手をクイッと下に動かして骸骨の体に圧をかける。


重力と似たその圧は骸骨の細い腕や足の骨を粉々にしていく。


「ちょろいものです、そのまま骨粉となって息絶えなさい。」


私は更に圧をかけていく。


だが、そんな優勢も下から駆け上がってくる赤い槍によって一瞬で崩れる。


風を切って駆け上ってくる赤い槍は私が気付いた時には私の腕を貫き、そのまま骸骨の手元に戻る。


「ぐぁああああああ!!」


あまりの痛みに声を荒らげて、腕を抑える。


片腕が肩から全てもぎ取られて槍の刃に突き刺さって垂れ下がっている。


「ぐっ……やりますね、くそ骸骨が。」


私がふらふらとした足取りで残った片方の腕で圧をかけ直そうとすると後ろから、一羽の鴉がとことこと歩いてくる。


「こら、駄目じゃないか……フギン、そこは危険だよ。」


後ろから、鴉を追い掛けるように微笑んだ表情の透空くんが鴉を捕まえる。


鴉は鳴くと、飼い慣らされた鳥のように透空くんの肩に乗る。


「フギン、君は身勝手すぎるよ。ところで……どうして、鐘苻さんがここに?」


「あなた達の助力をしに来た、その骸骨はとんでもない強者です。気をつけてください。」


「この骸骨……本当だ、腕が飛ばされてるね。」


私はあまりの痛みに彼の惚気が混じりあって呆れと怒りが込み上げてくる。


「そんな余裕な顔をしていると、死にますよ」


「あー、そっかぁ……俺は死んだのか……二度も死ぬなんてドジだなぁ………」


透空くんはそう言うと、私の方に振り返る。


「悪いけど、俺の存在は知られたくないから消えてもらうよ。」


透空くんがそう言うと腕の痛みを超えた耐え難い苦痛が頭を襲う。


「あがぁあああ!!ぐぁあああああ!!!」


私はあまりの痛さに頭を抱えて、意識が朦朧とする中で彼を見据える。


「痛いけど我慢してね、その痛みも忘れられるから。」


それだけ言うと、薄くなっていく景色の中で彼は骸骨を何事もないかのように………


鐘苻不冷は視界が暗転し、意識が飛んだ。




▷▶︎▷




「ふーん、凄い便利なクロス(異能)だね。名付けるなら……グングニル(誘いの死槍)」


俺は汚れた手をはたいて手を伸ばす。


「まぁ、俺に投げることすら出来ないけどね。」

「フギン、この可哀想な骸骨(死を否定された者)に安らかな安眠を。」


一羽の鴉は骸骨を睨んだ。


「残念だね、その槍を投げることは君には出来ない。」


骸骨はずっと槍を握ったまま微動だにせず、静止している。


「今、寝かせてあげるよ。」


俺はツンと人差し指で骸骨を突くと、念力に近い何かで支えられていた骨たちはバラバラと地面に落ちていく。


「この槍、もらっていくよ。」


蒼夜が赤い槍を握るとその姿を消した。


「さぁ、フギン行こうか。」


蒼夜はそう言うと、姿を消した。




▷▶︎▷




「透空くん……」


私は洞窟の中から、手を握って祈る。


ただひとつ、透空くんが無事であることを神に祈って。


二羽の鴉は少女の見つめる空を過ぎって飛んでいく。



今回、少し短いのは私が眠いからです。


眠い中執筆したせいで、まぁキリがいいかなって所で終えさせていただきました。本当にすみません。

許してください、今度から配信なんてせずにお昼に更新します。

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