その救済者、時に破滅
どうも、お久しぶりです。去年はお騒がせ致しました。……え?騒がせてない?まぁまぁ。
突然現れた、黒い龍。
それは空を飛び回り、破壊の限りを尽くしていた。
「千絋ちゃん、大丈夫?」
「何とか……でもあれ、何なんですか」
千絋ちゃんも僕と同様、翼から生み出された強風に飛ばされそうになっている。
龍が現れた途端に、気候が変わったのだ。
白みつつあった空は紫に染まり、黒い雲が広がっている。そして、赤い雨が降っていた。
このおかしな光景を、僕は……いや、純粋な異能者なら誰でも知っているだろう。昔から語り継がれてきた話に、「龍と王様」と言うモノがある。
龍達がヒトを巻き込んで争いを始め、世界は滅ぶ寸前にまで追い込まれた。そして世界を守るため、ヒトの王が龍の戦争を止めようと奮闘する……と言う話だ。
ヒトの王は最後、皇龍「バハムート」の力を借りて世界を統一する。バハムートは刃の様な翼と牙、鎌の様な鉤爪と闇を固めた鱗、金の眼を持つとされる。力が強過ぎるあまり、普段は別の世界に潜んでいるらしい。
知能が高く、人語を解す。皇龍と言う名前から分かる様に、龍の王である……
それが今目の前にいる龍だが、何でもかんでも見境なく壊して回るその姿には、おとぎ話で言う様な理性を欠片も感じられない。流石の僕も少し焦っていた。
「あれはバハムート。今まで確認されてなかったし、おとぎ話だけの存在だと思ってたけど、どうやら違ったみたいだ。……はは、この隙に逃げられるかもねぇ」
思い出した様に千絋ちゃんの手を引いて走ろうとした。
「……時紅は!?あの人は……クロトはどうするんですか!?」
「近寄れるだけ近寄って、合流地点を知らせて逃げよう。……きっと死なない。クロトは元から死なないけど」
手を振り解かれ、次に頬に痛みが走った。
「ふざけないで下さい……いくら強いから、死なないからって、放置して行くなんて酷過ぎます!!」
日本刀の様な鋭い声だけど、残念ながら僕には何の効果もない。
ただ、怒らせるだけだ。
「なら君が行けばいいだろ?」
「それではダメです!!……まさかちゃんと守るって決意も無しに、約束したんですか?」
「そうじゃない。僕は……」
鋭い痛みが走った。じわじわと頬に熱が集まってくる。
手を振りきり、怒りに満ちた目で千絋ちゃんは叫んだ。
「理由なんてどうでもいい!!約束も守れない貴方に、クロトは助けられない!!情けない人についていく必要はありません……俺があの人を助けるっ!!」
年下にこんな事を言われても黙っていられるほど、今の僕は冷静ではなかった。
今まさに走り出そうとしていた彼女の肩を掴む。
「止める意味はないでしょう?」
彼女の怒りだけはよく伝わるのに、憎しみは感じられない。やけくそになって、耳元で叫んでやった。
「__もうっ!!やればいいんでしょ、やればっ!!」




