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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第二章

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第8話 レベルアップ報酬!

「参上しました、我が王。アルティメット、任務開始でございますわ」


 その声は、低く、艶を帯び、あまりにも濃密な色香を含んでいる。

 その姿が召喚された直後から、配信画面には怒涛のコメントが流れ出す。


『何が起きた!?』

『何だあの女性は!?』

『あの女性はメイドなのか? いやしかしそれにしてはエッチ過ぎる』

『あの女性の身なりはともかく、その全体から伝わるオーラは虹色級冒険者に値するぞ!』

『こんなのテイマーとか話にならねえよ! この野郎は自分よりも格上の存在を使役できるというのか!? そんなの神の御業だぞ!』


 その光景に悠真は、自信に満ちた笑みを浮かべる。


「……ふっ、な? すごいだろ」


 肩をすくめて軽く片目を閉じると、気分良さげに視聴者たちのコメントを視線で追い始めた。

 だが、ひときわ目を引いた一言に、彼の目が留まる。


「――“虹色級”?」


 その言葉だけをぽつりと呟き、悠真は両腕を組んで、視線を少しだけ斜め上に向けた。

 それは明確に、記憶をたぐり寄せる姿勢。


 しばしの沈黙の後、ふいに息を吐きながら、彼の口が再び開いた。


「そういえば……あったな、そんなランク。確かラヴィニアが言っていた限りでは、この世界の冒険者には位があって、最初は“銅色級”から始まり、そこから“銀色級”、“金色級”と段位が上がっていく。各段には突破クエストという試練があるが――最上位の“虹色級”は、な。世界に数えるほどしかいないとか」


 ランク制度に興味が無いが故に意識してはいないが、今現在の自分が銅色級の冒険者である事を思い出し、悠真は独り言を口にする。


「だがまぁ……ラヴィニア曰く、虹色級は片手で足りるほどの人数しか……だ。つまり神話級、伝説級。それが虹色という称号っつうわけだな」


 気だるげに大きく肩をすくめると未来永劫、その領域は辿り着けない事を何となくで察し、悠真は大きく溜息を吐き捨てた。


「まあ、なんにせよ……完璧だ。これで盤面は完成に至った」


 悠真の唇が、わずかに上がる。

 視聴者たちも、コメントを止めたまま、息を呑んで彼の動きを見守った。


 戦場の対面――三体のゴーレムたちはエレメント(属性)で構成された体を軋ませながら、ゆっくりと攻撃の照準を彼に合わせていた。


 無骨で無慈悲なそのゴーレムたちは、地の文すら無視して迫る破壊そのもの。

 だが、もはや恐れる必要はない。

 悠真は静かに手を掲げた。そして短く命ずる。


「ビキニメイド・ドミナ・アルティメット。制裁を、始めろ」


 その瞬間、ふわりと彼女は浮かび上がった。

 細い手が空に掲げられ、唇が可憐に動く。

 そこから発せられた声は、鈴を鳴らすように清らかで、それでいて全身の血が逆流しそうなほど美しかった。


「――律せられしゴーレムよ、神秘の秩序のもとに沈みなさい」


 天井の魔光石が全て共鳴し、激しい閃光が降り注ぐ。

 ビキニメイド・ドミナ・アルティメットの周囲に七枚の円盤が浮かび上がる。


 それはすべて違う神話言語で刻まれた封呪の刻印であり、ひとたび重なった瞬間、聖域の如き光柱が炸裂した。


 そして、その光がゴーレムたちに降り注いだ――否、飲み込む。

 凄まじい音と振動。

 火・水・土の巨体が引き裂かれ、魔力因子が飛び散り、光の粒が爆ぜる。


 ゴーレムたちは、咆哮一つ上げることすら許されず、まるで夢から覚めるように、塵となって消えた。

再び、静寂。

 湿った空気の中に、燃え残った油と金属の匂いが残っている。


 だが、それもやがて虚空に吸い込まれ、沈黙へと還った。

 悠真は、ゆっくりとビキニメイド・ドミナ・アルティメットの方へと歩み寄る。


「ありがとう、ビキニメイド・ドミナ・アルティメット。俺たちの勝利だ」


 静かに手を掲げ、指をひとつ鳴らした。

 その言葉に、彼女はただ柔らかく微笑み、軽く頭を下げる。

 次の瞬間、彼女の身体が光となって霧散していく。


 聖なる霧のような残滓が空間に揺らめきながら、やがて何事もなかったかのように消え失せる。

 その光景と連動するように、足元の魔法陣が静かに消失し、戦場に展開されていた領域能力――"決闘結界”デュエル・フィールドが解かれていく。


 地面に描かれた魔方陣は、一筋の風となって流れ、瓦解するように地面へと戻った。

 悠真の右腰に装着された、漆黒のデッキケースが微かに震える。


 そして――小さな音を立てて、数枚のカードが舞い戻るように、ケースの中へと収まった。

 ビキニメイド・ドミナ・アルティメットもまたその一枚として、静かにカードへと還る。


「ふっ……終わったな。まあ、当然か」


 デッキケースの表面を指先でなぞる。

 表情には僅かな満足感が滲んでいた。

 声のトーンは淡々としていたが、その奥に秘められた誇らしさは、隠しようもない。


「なぜって? 理由は簡単。俺が“孤独”だからだ」


 悠真の黒に近い暗めの茶髪が、谷を吹き抜ける風にさらりと靡く。

 かすかに光を浴びて銀糸のように揺れる前髪の向こう、その瞳はどこか遠くを見つめていた。

 懐かしむような、あるいは冷ややかに見下ろすような眼差し。


「俺はずっと一人だった。あのクソみたいなクラスでも、転移してからの訓練でも、どこでもな」


 地面に転がる小石を軽く蹴り、ぽつりと吐き出すように言葉を続ける。


「……昼休みだろうが放課後だろうが、誰とも話さなかった。話しかけられたことすらなかった。だからこそ、俺は“妄想”で対戦を続けたんだ」


 薄く笑いながら、デッキケースを胸元で構える。


「誰かとカードを交える想像。どんな相手でも、どんな展開でも、俺は先を読む。対人でも、対魔物でも……いや、最早“対想像”だったな」


 その声音には、どこか誇らしさと、そして少しの哀しさが混ざっていた。

 けれど彼自身は、そんな感情を気にも留めていないようである。


「“このモンスターが来たら相手はこう動く”――そう想定して、常に二手三手先を読む。相手が罠を張るか? それとも反撃魔法か? いや、捨て札を利用した特攻かもしれない……そうやって想像を重ねる内に、俺の頭の中では完璧な“シミュレーション”が出来上がった」


 僅かに足を進めて、悠真は冷たい岩の上に、ゆっくりと腰を下ろした。


「今の俺の戦績? 百パーセント。無敗。完全勝利」


 淡々と、しかし確信に満ちた声。嘘でも、はったりでもない。

 現に今も三体のゴーレムを葬った後だ。


「ま、正直に言うと相手が知能低すぎて退屈なんだよな。反応がワンパターンすぎて、予測を楽しむ前に勝負が終わる」


 ぽつりと呟き、ダンジョンの奥から吹き込む風に髪を撫でられながら、彼は空を仰ぐ。


「そろそろ……人間とやりたい。血の通った、感情のある相手とさ。思考を巡らせて、読みを交差させて……そういう本物の戦いを」


 彼の目が細くなった。まるで獲物を待つ狩人のように、冷たく、鋭く。

 しかし、その瞬間――耳元でチャラララッチャッチャ〜ンと、まるで某有名RPGのレベルアップ時の効果音を思わせる旋律が鳴り響いた。


「レベルが上がった音、来たああああああああああああっ!」


 もちろん実際に音楽が流れたわけではない。

 しかし、それは確かに“聞こえた”。自分の脳内に。魂に。

 女神フォルトゥナのルールが、明確に自分の成長を告げているのだ。


「きたきたきたー! きましたわーッ!」


 天井に向けて顔を上げ、悠真は両手を大仰に広げる。

 あまりに場違いなまでの高揚と、極端なジェスチャー。

 その姿は異世界の冒険者というよりは、舞台に立つ道化師のようですらある。


「ついに、この時が……! カードゲーマーが一番! 一番ッ! 興奮するこのお時間がッ!」


 歯を見せて笑う顔に狂気すら宿す。

 悠真の頬は紅潮し、覇気がなく濃い茶色の瞳は、異様なまでに濡れて光っていた。


 天井の高み。そこに、光が集いはじめる。

 いや、光粒子と言った方が正確か。


 青白い微細な点が宙を舞い、次第に黄金に変わり、螺旋状に集まり出す。

 その集束は、まるで惑星形成のような荘厳さを持っていた。


 静寂が支配する空間で、それは、ただ美しい。

 そして――それは、”形”を成した。


 黄金の粒子が一気に凝縮し、四角形の物体へと収束。

 すぐさま、光は弾けるように霧散し、空間に実体だけが残された。


 宙に浮かぶのは、一パックのカードパック。

 その表面には燃え上がるような紅蓮の装飾、蒼い瞳を宿す美しい女騎士のイラストが描かれている。


 胸甲を装着した白銀の鎧に、背から竜翼を生やした女竜騎士――これは、間違いなく悠真がこよなく愛するシリーズ、女竜騎士シリーズの最新パックだ。


「っ……! ッ!」


 悠真の喉がひくつき唇が震える。


「……出た……ッ! 出たぞ……ッ! “異界(レジェンド・オブ)竜騎士伝説(・ヴァルキュリア)!」


 名を口にするだけで、肺が焼けるような快感が駆け抜けた。

 そのパックは、まるで聖典の如く、静かに空中を滑り降りてくる。


 掌の上に舞い降りる雪片のように、慎ましやかに。

 そして悠真の正面へ。ゆっくりと、そのパックは降臨した。


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