第5話 ゴーレム対ビキニメイド
「……まあ、俺とてカードゲーマーだ。カードに描かれているキャラが、いつか現実世界に実体化してくれたら、どれだけ嬉しいことか何度も妄想したことはある……だが、こうして目の前に現れると……」
ごくりと喉を鳴らして、言葉を継いだ。
「なんかいよいよ、現実世界の女に対しての興味が薄れていくな……」
その呟きは誰にも届くことなく、ダンジョンの空気に吸い込まれていった。
彼の周囲を囲むのは依然として、火・水・土の三属性を冠するゴーレムたち。
赤きゴーレムは煤けた鋼鉄の身体に赤黒い炎を纏い、頭部からは火口のように小さな噴火を繰り返す。
青きゴーレムは氷河のように透き通った外殻を持ち、その身体からは冷気が絶えず吹き出していた。
そして茶色のゴーレムは岩塊を集めたかのような重厚な造形で、踏みしめる度に地が呻き声を上げる。
「ターンエンドは……まだ先だ」
悠真は二枚目のカードを手に取り、フィールドに叩きつけた。
「装具魔術カード発動――火照る乙女たち! これでビキニメイド・エイミーの攻撃力と防御力を、ターン終了時まで500アップ! さらに属性攻撃への耐性を一段階上昇!」
淡い光がエイミーの身体を包み、ビキニ衣装が更に艶やかに輝いた。
火照ったような紅が頬を染め、魔力の光が指先に灯る。
彼女の身体全体が淡く発光し、その露出した肌が妖しく輝く。
「……そしてこの瞬間!」
悠真は続けざまにカードを差し出した。
「カードの効果により、ビキニメイド・クラリスを特殊召喚!」
赤い魔法陣が浮かび上がり、そこから新たなメイドが実体化する。
赤髪の巻き毛を後ろで束ねた少女――エイミーよりも背が高く、百六十五センチほどだろうか。その身体つきはエイミーよりも豊満で、特に胸の膨らみが目立つ。
彼女が纏うのも、ビキニメイド服だ。
胸部を覆うのは、赤い布地の小さなビキニトップ。
だが、エイミーのものよりもさらに小さく、豊満な乳房を支えきれていない。
胸の大部分が露出しており、深い谷間が完全に見えている。
布地の中央には黒いフリルが施され、乳房を強調するように装飾されていた。
腹部は完全に剥き出しで、引き締まった腹筋のラインが見える。
くびれた腰から臀部にかけての曲線が美しい。
下半身を覆うのは、赤いビキニボトムと黒いフリル付きのミニエプロン。
ビキニボトムは紐で結ばれたタイプで、腰骨の部分で蝶結びになっている。
太腿の付け根から脚全体が露出しており、長く伸びた脚が目を引いた。
太腿には何も着けておらず、膝下に黒いニーソックス。
足元には赤いメイド靴で、ヒールが高い。
右手には炎を纏ったホウキを構えている。
ホウキの先端からは赤い炎が揺らめき、その熱が空気を歪ませていた。
顔立ちは美しく、切れ長の赤い瞳が鋭い光を放つ。
唇はツンと結ばれており、どこか高慢な表情だ。
赤く染まったビキニ衣装が、彼女の攻撃的な雰囲気を強調している。
「さらにクラリスは特殊召喚時に、フィールド上の他のビキニメイド一体と連携攻撃が可能!」
エイミーとクラリスが視線を交わし頷く。
エイミーは支援型――トレイから淡い青い光を放ち、クラリスの攻撃力を高める。
クラリスは攻撃特化――炎のホウキを振り上げ、炎の波動を放つ構えを取った。
その瞬間、青きゴーレムが地を蹴って突進してきた。
ターン制など理解しない本能的な攻撃。
それは熱を奪う波動となり、悠真へと迫る。
しかし、結界に守られた悠真の目前で攻撃は霧散した。
「まだ、俺のターンだっつってんだろ……」
淡々と、しかしその目は燃えている。
カードゲーマーとして、己の力を世界に示す絶好の機会だ。
「計略カード発動。メイドの誓い! 相手が攻撃してきた時、手札から即時発動可能。相手の攻撃を、そのまま跳ね返して、ダメージを与える!」
突如現れた鏡のような壁に、青のゴーレムの氷の拳がめり込む。
次の瞬間、反動で自身の胸部がひび割れた。
だが、すぐに火のゴーレムが咆哮と共に火球を放つ。
「っ!? まだ俺のターンだぞ! 攻撃は通らないはず――」
――だが、火球はルールを無視して突き進んだ。
そして、直撃。
「がっ……!?」
衝撃が悠真の身体を襲う。炎の熱が肌を焼き、ロングコートが焦げた匂いを放つ。
「く、そっ……! ライフ五千から九百五十減って、残り四千五十か……!」
そして続けて土のゴーレムの岩石投擲が命中。
「ぐっ……! さらに九百五十、残り三千百……っ!」
悠真は膝をつきかけた。だが、その目には困惑の色が浮かんでいる。
「おかしい……俺のターン中だってのに、なんで敵の攻撃が通るんだ……!?」
――その瞬間、脳裏に女神フォルトゥナの声が響いた。
『ふふ、気づいたかの? 我が授けた能力じゃ――多少の"調整"を加えておいたぞ。フィールド内では確かにターン制が適用される。だが、この世界の魔物は"意思"を持っておる。お主のターン中であろうと、彼らが攻撃の意思を示せば――低確率ながら攻撃が通ることもあるのじゃ』
「……っ! フォルトゥナめ……! 勝手にルールを弄りやがって……!ゲームマスター気取りかよ!」
悠真は歯を食いしばる。
女神が能力に"不確定要素"を仕込んでいたのだ。
完璧なターン制ではなく、相手の攻撃が稀に通る――それは、この異世界における"リアルな戦闘"を想定した調整だった。
悠真は膝をつきかけたが、それでも手札を睨みながら立ち上がる。
エイミーとクラリスは、彼を守るように前に立つ。
エイミーはトレイを盾のように構え、クラリスは炎のホウキを振りかざす。
彼女たちの露出した肌が汗で濡れ、光を反射している。
「へっ、まあいいぜ……これぐらいが寧ろ、ちょうどいい」
そう呟きながら視線を端に向けると、視聴者の数は十五人を超えていた。
『おいおい、メイドが二人になったぞ!』
『エイミーちゃん可愛い!クラリスさんセクシー!』
『ビキニメイドとか最高かよ!』
『おら、もっと見せろ!カメラ寄れ!』
視聴者たち少数のコメントが悠真の視界の端で僅かに流れてゆく。
それからゴーレムたちとデュエリストの戦いは続き、その過激さを増していくと、悠真は右手を開き汗ばんだ手のひらを軽く振る。
立ち昇る蒸気と何度も吐き出される呼吸。
熱気、興奮。そして手の中に収められたカードが僅かに震えていた。
戦況は佳境である。
三体の属性ゴーレムは、揃ってHPの6割を残していた。
だが同時に悠真の召喚したビキニメイド・エイミーと、ビキニメイド・クラリスは未だフィールドに健在であり、彼のライフは二千ほど残されている。
「くっ、やっぱ熱ぃな……」
手のひら全体に汗が滲むと、指先の感覚が鈍くなった。
だが、それすらも今の悠真にとっては悦楽である。
肌を撫でる微かな冷風、ゴーレムたちの振り下ろす拳の爆風、計略カードが炸裂する瞬間の衝撃派……これらの物理現象が、五感に刻まれるということ。
それはデュエル・フィールドという能力における最大の快感であり最大の地獄でもある。
――――だが、その一方で。
「……ん?」
ふと悠真の視界の端に何かが映り込む。
そう、それは半透明の数字で表示されており、なんと視聴者の数が異様に増えていた。
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