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さくら台駅前ペット探偵事務所 「FXで数億稼ぐサヴァンの天才」×「バツイチの40代おじさん」。凸凹バディが挑むのは、迷子のペットと「人間の感情(バグ)」!?  作者: あおにし
CASE10 さくら台の絆と探偵の誇り

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File 31 悪意のノイズ

「いつも応援ありがとうございます!さくら台駅前ペット探偵事務所、第31話です。この探偵事務所に対する明確な悪意にどう立ち向かうか?お楽しみください!」

2月上旬。隙間風の入る極寒の事務所。ストーブの上で、ヤカンがシュンシュンと虚しい音を立てて白い湯気を上げている。


俺は赤いストーブにかじりついたまま、手元のスマートフォンを見つめて深いため息をついた。


「最近依頼が極端に少ないとは思ってたが……先月の途中まではあんなに順調だったのに、その後ピタッと来なくなったぞ。いくらお姉さんから毎月きっちり給料をもらえるって言っても、事務所の売上がゼロのままじゃ、その給料から息子の養育費を振り込むのも情けなくて胸を張れねえよ!」


不思議に思ってスマートフォンを操作し、液晶に並んだその文字列に俺は息を呑んだ。 画面を埋め尽くしていたのは、口コミサイトやSNSに書き込まれた、うちの事務所への大量の『悪評』だった。


思わず、俺はスマートフォンの画面を読み上げた。


『安かろう悪かろうの、ただの素人』


『適当な捜索をされて、二度と猫が戻ってこなくなった』


『さくら台の詐欺業者』


その声を拾い、ステラが羽をパタパタと羽ばたかせながら不快な言葉を連呼し始めた。


「サギギョウシャ! アクトク! サギギョウシャ!」


「おい、ステラ! お前までネットのデマを反響させんな!」


部屋の奥。ヘッドホンを外し、無表情でキーボードを弾いていたヒカルが、淡々と画面を見つめたまま口を開く。


「……ボット工作。検索汚染。同じIP群。僕たちを潰すための明確な悪意。だが、単なるノイズ。……無視」


ヒカルはモニターから目を離さず、静かにタイピングを続けた。


「悪意って……誰が、何のためにこんな嫌がらせを……」


コンコン。 その時、か細く、今にも消え入りそうなノックの音が響いた。


ドアが静かに開く。そこに立っていたのは、目元を真っ赤に腫らし、今にもその場に泣き崩れそうな主婦、水野莉子さんだった。


「あの……こちらなら、ちゃんとお話を聞いてくれるって、商店街のパン屋さんに聞いて……」


温かい緑茶の入った湯呑みを震える両手で握りしめながら、莉子さんがポツポツと語り始める。


「3日前の夜、飼っていた猫のムギ(茶トラ・オス・2歳)が逃げてしまって……。すぐにネット検索で一番上に出てきた、フリーダイヤルのペット探偵にお願いしたんです。最初は『すべて込みで15万』って言われたのに……」


莉子さんの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。


「たった一日探しただけで『難航しているから、応援の助っ人を呼ぶ』と、追加で50万を請求されて……。私が『そんなお金、すぐに払えません』と断ったら、『じゃあここで捜索は打ち切り。着手金も一切返さない』って言われたんです。ポスター代もお支払いしたのに、街のどこにも貼られていなくて……現場の状況も一切教えてもらえないまま、ただ『早く払わないと、猫の命の保証はない』って……」


「……ッ!」


俺はジャージの膝の上で拳を強く握りしめ、怒りで奥歯を震わせた。


莉子さんは震える手で、自分のスマートフォンを机に置いた。画面に映し出されていたのは、莉子さんが頼ったというペット探偵のサイトだった。


「これです……『格安・絶対発見』って、検索で一番上に出てきて……。でも、会社の実態がどこにもなくて、連絡先もフリーダイヤルだけで……」


ヒカルは莉子さんのスマホ画面を確認し、席に戻った。


カタカタカタカタカタカタ……ッ!


部屋の奥。ヒカルのタイピング速度が、怒涛の勢いで跳ね上がる。複数モニターの光に青白く顔を照らされながら、ヒカルは冷たく言い放った。


「……依頼人に現場を見せない。進捗を報告しない。不安だけを増幅させて追加料金を払わせる。……典型的な搾取モデル」


ヒカルのタイピングがピタリと止まる。


「イナガキさん。僕たちに対するネット上のボット工作の発信元ドメインと、その詐欺業者のサーバーの登録者情報……完全一致」


「……!!」


俺は勢いよく立ち上がった。


「俺たちが邪魔だったから、デマ流して潰しに来たってことか……! 命を、家族の愛を、金儲けの道具にしやがって……!」


「……正解」


ヒカルは真っ直ぐにモニターを見据え、氷のように冷たく、けれど確かな怒りを込めて言った。


「……データ訂正。先ほどの悪評は、無視できる単なる『ノイズ』ではない。法と倫理を完全に無視した詐欺システムが、僕たちを排除するために引き起こした意図的な『矛盾(エラー)』。……看過不能」


「あの……私、もうお金がなくて……。でも、ムギが心配で……」


俺はゆっくりと彼女の前にしゃがみ込み、その震える手を静かに制した。


「莉子さん。お金のことは、心配しないで。今回は、無料で引き受けます」


「え……?」


「俺たちの看板に泥を塗って、命を金儲けの道具にするような連中を、この街で野放しにはできねえ。……探偵の意地にかけて、必ずムギちゃんを見つけ出す。これは、俺たちの仕事だ。それでいいよな? ヒカル」


「……正解。エラーの排除は僕のタスク。今回の案件、費用対効果より優先順位が高い」


莉子さんは涙を拭うと、何度も深く頭を下げた。

「ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回、迷子猫の捜索を進めます!


もし『続きが気になる!』『このコンビ、面白い!』と思っていただけましたら、下部の☆☆☆☆☆から【評価】や、作品フォロー&ブックマークをしていただけると、執筆の励みになります!ぜひよろしくお願いします!」

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