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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第一章 解放編

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救出作戦

 静香が頭を下げたので、これには紅美も驚く。

 部下を軽んじる士官ばかりで、こんな隊長はいなかったからだ。


「すまない……補充員も補給も本部に何度も申請してるが、ずっと無視されてる状態なんだ。ただ他所の隊も状況は同じで、整備兵の数も足りてない。恐らく今回の敗戦で、軍は再編成されるだろう。だから私からは待ってくれ、としか言えない。本当にすまない!」


「…………」


 嘘は言っておらず静香の誠意が伝わってくる。

 もし下手へたに誤魔化してたら紅美はキレただろう。

 しかし下手したてに出られてしまうと、部下達は何も言えなくなる。


「……分かった。もういいい」


 紅美も謝ってる上官を、これ以上責めるわけにはいかなかった。

 軍の状況が厳しいことは分かった。ここは我慢するしかない。


「八雲曹長は何もないのか?」

「…………」


 八雲弥生は黙って顔をふるだけだった。もともと無口で何を考えてるかはわからない。

 静香は部下達に敬礼し、テントから出て行く。少し歩いてからぼやいた。


「あー、やっぱり感情をぶつけられるとキツいわ。でも不満があって当たり前、本部は何もしないし、もっと強く具申しないとダメね。みんなの命がかかってるんだから」


 静香は部下の為なら、自分が犠牲になってもかまわないと思っていた。

 これほど情に厚い隊長はいないだろう。


 考えながら歩き続け、やがて士官兵舎の自室へと入った。

 指令所の近くに建てられた仮設プレハブで、小隊長達は個室を与えられていた。

 もっともベットがあるだけでテントと待遇差はなく、上官の命令を早く聞くための場所にすぎなかった。


 肉体的にも精神的にも疲れた静香は泥のように眠った……。


 ◇◇◇


 ――数日後。


 鐵乙女軍の指令所に隊長達と上官が集まって、作戦会議をしていた。

 ある情報が議題となる。


「敵軍がこちらへ近づいて来てるのですか?」

「そうだ。問題なのは、逃げてきている味方もいるということだ」

「敗残兵を利用した平行追撃ですな」

「うーむ、さてどうする?」


 上官達は悩む。

 逃げてくる友軍を見捨てて基地へ逃げ帰るわけにもいかず、かといって敵と一緒に来られたら反撃しづらくなってしまう。

 なにより、まともに戦える部隊がもうないのだ。負けて物資も戦力もない。


「…………」


 会議場は沈黙して重苦しさだけが漂い、時間だけが過ぎていく。

 そこに挙手する者がいた。


「僭越ながら、作戦を上申いたします」

「氷室少尉か、言って見ろ」


「はっ、それでは今動ける部隊を集めて味方を救出しましょう。そして救出部隊が戻り次第、全軍で本部基地へ帰還するのはどうでしょうか?」


「なるほどな、攻められる前にこちらから動くわけか」


「私は賛成だが、現在動けるのは極少数だ。もし多数の敵に囲まれたら殲滅されるぞ。流石に特攻命令はだせない」


「それでは志願兵のみで構成し、あくまで敗残兵の援護に徹して、危なくなったら撤退すれば良いと思います。このまま友軍を見殺しにはしたくありません!」


「ふーむ」


 熱意のこもった氷花ひょうかに説得され、上官達も救出作戦の許可を出す。

 ただし無理は禁物、危うくなったら即時撤退。

 現場指揮官は提案者の氷室少尉が務めることになる。彼女には思わくと野心があった。


「これで手柄をあげて私は出世してやる。静香もこないか? 貴官がいるなら心強いんだが。副官をやってほしい」


「……私一人では決められない。隊のみんなと相談する」



 静香は重い足取りで、部下達の元へ向かう。氷花に直接は言えなかったが、かなり無茶で無謀な作戦だと感じていた。

 敵に対して臨機応変というのは聞こえはいいが、ただの行き当たりばったりでしかなく、また逃走経路も決められてなかった。


 作戦参加は死にに行くようなものである。とても部下には無理強いできない。


 なので、テントの中で開口一番。


「いいか、今回の作戦には絶対に参加するな! 味方の救出だが、予想生還率はたったの十数パーセントだ。私は同僚に付き合うしかないが、貴官らは仮病・・で不参加だ!」


 いつも冷静な静香が声を張りあげたので、全員がキョトンとなる。

 詐病を部下に勧めるなど上官としてはあるまじき行為で、バレたら軍規違反で処罰されてもおかしくはない。


 それでも静香は誰も死んでほしくなかった。部下達は笑い出す。


「あっははははは!」

「失礼だぞ、紅美!」


 天羽准尉がたしなめるも、久遠軍曹は大笑いした。

 月城椿と八雲弥生も笑いを堪えていた。巴隊は久々に明るい雰囲気になる。

 この瞬間、上と下が打ち解けあったと言って良い。


 笑いが収まったところで、紅美は静香に向かって敬礼する。


「久遠軍曹、本作戦に参加します!」


「私の話を聞いてたのか、軍曹! これは決死隊だ‼ 死ぬかもしれないんだぞ⁈」


 静香はキレるが、


「自主参加とのことなので、勝手にさせていただきます。おっと勘違いするなよ。あたいはアンタの死に様を見たいから行くんだぜ」


「それでは小官も参加します」

「……い、く」


「なっ!」


 月城伍長と八雲曹長も手を挙げて参加を表明する。

 天羽准尉は隊長に惚れ込んでるので、最初から付いていくつもりだった。

 これで巴隊は全員参加となり、静香の必死の説得は失敗してしまう。


 今回は逆の意味で反抗されたと言って良い。ただ部下達も隊長を思っての行動である。

 ただ互いの願いはすれ違った。


「どいつもこいつも身勝手な奴らばかりだ! もう、知らん知らん! 勝手にしろ!」


 ふてくされた静香が怒鳴って出て行くと、テント内では笑いが木霊していた。


 こうして志願兵は集まったものの、物資不足ですぐには動けない。

 各部隊から整備兵が出向き、壊れた機甲羽衣から部品を流用して、機体の修理と整備をした。

 なんとか武器もかき集めて、これで三個小隊が出動できるようになる。


 そして二日後。


「目的は味方の救出、この任務成功させるぞ! 出陣!」


「了解」


 救出部隊が動き出す。

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