表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第一章 解放編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/101

敗走

所変わって、とある惑星。

『くっ! このままでは!』

『ほーら、言わんこっちゃない』

『文句はあとあと、さっさと逃げるわよ!』


 機甲羽衣はごろもという名の、兵装をまとった女性達が戦っていた。


 高機動・高火力を兼ね備え、装甲が厚く身を守る鎧である。

 一方は黒色、もう一方は赤色の機体で、黒の兵士達が圧倒的に不利で押し込まれていた。


 赤軍はいいように撃ちまくってる。やがて黒軍に退却命令がくだり、これで負けが決まる……。


挿絵(By みてみん)


『全軍、第二防衛線まで後退せよ。繰り返す、全隊速やかに撤退……』


「簡単に言いやがる!」


 正に言うは易し、敵からの追撃を受けることになり各部隊はかなりの損害を出す。

 殿しんがりを出す間もなく戦線が崩壊したのだ。それでも退かねば黒軍は全滅していただろう。


 ……しばらくして、辛うじて生き残った部隊が後方陣地に集まってくる。


 最前線から命からがら逃げられたともえ小隊は、テントの中でぶっ倒れていた。

 精根尽き果てて一歩も動けず寝転がっている。女がTシャツとパンツ一丁では問題だが、男は一人もいない。

 そもそも敵方にも男性はいないので、知識として知ってる者がいるだけだった。

 

 鐵乙女くろがねおとめ団と紅蓮姫ぐれんき


 異様な環境の中、女だけの軍隊が何度も戦っていた。会戦は数え切れない。

 少なくとも十数年間、戦いが続いている……戦争の理由すら知らずに。

 それを疑問に思う兵士はいない。


 なぜなら彼女らが物心つく頃には、徹底的に思想教育されて、命令に服従するように叩き込まれるからだ。

 そして戦争が日常になり、生き残ることしか考えられなくなる。

 今回の戦いの被害は大きかった。鐵乙女団はボロ負けと言って良い。

 部隊の士官達は重い足取りで指令所に入っていく。



「巴隊、全員帰還しました。負傷者なし戦果なし、機体の損耗軽微」


「ご苦労。他の部隊が戻るまでそのまま待機せよ、獅堂少尉」


「了解です」


 帰還報告をした獅堂静香しどうしずかは、上官に敬礼して指令所を後にする。

 軍の立て直しには時間がかかるので、それまではしばしの休息がとれるはず。

 巴隊のテントに向かう途中、華隊隊長の氷室氷花に声をかけられる。同期でライバルだった。


「そっちは全員無事だったようだな、静香。うちは一人やられた……」


「そうか……でも、運が良ければ生きてるだろう。機甲羽衣は頑丈だ」


「捕虜の方が死ぬよりきついかもしれんがな。そもそも、この作戦に無理があったんだ! あんな見え見えの奇襲なんて通用するはずがない!」


「よせ! 総司令部への批判は許されない。憲兵につかまるぞ!」


 静香は憤った氷花をたしなめる。大切な部下を失い、やりきれない気持ちは良く分かった。

 それでも不満をぶちまけたせいで、戦友がいなくなるのは嫌だった。

 上に目を付けられたら謹慎で済めばいいが、最悪の場合、降格処分されて軍刑務所送りもあり得る。


「……そうだな悪かった。文句を言う前に昇進してやる! そうすれば無駄な犠牲も減るだろう」


「優秀な氷花なら良い幹部になれるさ」


「ふっ、主席卒業のお前に言われると嫌みに聞こえるな」


 二人は笑って別れた。友人との楽しい時間は束の間、静香の足取りは重くなり途中でため息をつく。

 部下達に会うのが嫌で、この上なく億劫おっくうだった。

 獅堂静香は隊長として着任したばかりで、部下と対話をしてないのは仕方ないとして、前隊長がやらかしたのが問題だった。

 部下達は上に不信感を募らせており、関係は悪化したままである。


 それでもテントの前までくると、腹をくくって中に入る。


「総員、敬礼」

「…………」


 副隊長が号令をかけるが誰一人従う者はいない。寝転がったままの者もいる。

 この態度に副隊長は腹を立てるが、


「貴様らー! 少尉殿に挨拶せんかー!」


「よい、天羽准尉。いつもすまないな」


「いえ当然の任務です」


 唯一の味方は士官の天羽天音あまはあまねだけだった。残りの三人は下士官。

 もともと士官学校出のエリートを嫌っている。後ろから危険な命令を出すだけで、威張ってれば腹も立つ。静香はそれとは違うが、口で言っても信用はされない。


 静香は怒りもせずに、司令部からの連絡を伝える。


「全員そのままで聞いてくれ。味方が戻ってくるまでココで待機だ。ただ緊急出動もありえるので、皆そのつもりでいてくれ。以上」

「はっ、了解しました」


 副隊長の天音だけが返事をすると、一人の部下が声を荒らげる。


「けっ! 敗残兵待ちかよ。どうせ負け戦なんだから、さっさと基地に逃げ戻りゃあいいんだよ」

「口が過ぎるぞ、久遠軍曹!」

「ああん、文句あんのか天音ー! 相手してやんぞ!」


 赤い長髪の久遠紅美くおんくみは立ち上がって、ショートヘアの天音に突っかかる。

 上官批判の常習犯で何度も処分を受けている。本来なら軍刑務所送りだが、兵員不足のせいで叱責だけで済んでいた。

 一触即発の二人の間に静香が割って入る。


「よせ、二人とも! 軍曹、不満があるなら私に言え!」


 紅美は静香の方を向いて大声を出す。


「たった五人でどう戦えってんだ! いつまでたっても補充要員はこねー! あたいらは使い捨ての駒じゃねえぞ! どうせ、お前もいざとなったら逃げるんだろ⁉」

「…………」


 巴隊には8名の兵士がいたが前隊長が任務に失敗し、部下を見捨てて逃げようとした所、真っ先にやられてしまう事件があったのだ。

 その結果四人が戦死。戦友を失った下士官達は、軍上層部と上官を恨むようになる。


「どいつもこいつも信用ならねー!」


 仲間思いの紅美は特に不信感が強く、新隊長の静香を最初から敵視している。

 静香もその気持ちが分かっているので、頭ごなしに命令する気はなく、時間をかけて信頼されるように努力するしかなかった。


 大声を張り上げて紅美の興奮は収まった。静香はさらに聞く。


「他に意見がある者はいるか? 暴言でも構わん、決して上に報告しない」


「では、私から質問を」


 三つ編みの若い隊員が手を挙げた。ただ顔は笑ってはいない。


「月城伍長か、話を聞こう」


「補充員はともかく、兵站は足りず機甲羽衣はごろもの整備すら満足にできてません。食料・武器・弾薬がなくては戦いようがないであります! 隊長はいかがお考えなのですか?」


 静香は黙って聞いた後、全員に頭を下げた。

ブックマークと★評価をよろしくお願いします。

ねだってすみません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ