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転生幼女、教団はじめました。  作者: 有郷 葉


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59 覚悟


 しばらくの間、会議室は静寂に包まれる。

 最初にこれを破ったのは首座のキアだった。ため息をつきながら「やれやれ」とヨルンシスさんに視線を送る。


「ほどほどの支援、じゃ済まなくなったな。そうだろ?」

「はい、エルフィリス国はナザネシア王国を全力で支援します。決を取りましょう」


 バロノーザさんが「結局こうなったか……」と賛成票を投じ、おじさん代表者達も苦笑いでこれに続いた。皆さん、すみません、ご迷惑をおかけします……。


「よし、じゃあどうやってナザネシア王国を再建するかだな。考えてくれ」


 と出だしだけ仕切ったキアは両手を広げ、後は丸投げしてきた。

 これは割といつものことなのであまり気にしても仕方ない。まずは私から方向を示すことにした。


「優先的に取り組まないといけないのは二つです。一つは、早い段階で侵攻してくるであろうガノゼオン帝国に対する備え。ケイトリンさん、あちらの監視は?」

「もちろん常に見張っています。何か動きがあればすぐに察知できますよ」


 やはりぬかりはなかった。

 ナザネシア王国の周辺国で一番に攻めてくるのは、北に位置するガノゼオン帝国でほぼ間違いない。常々交通の要衝である王国を狙っており、軍事力では帝国の方が遥かに上だと自信も持っているだろうから。

 私は一度頷いた後に話を再開させる。


「ガノゼオン帝国との戦いはおそらく他の周辺国も見ているでしょうから、なるべく派手な演出で、圧倒的な戦力を見せつけて追い払う必要があります。それの準備を進めるのがまず一つ目。そして、二つ目は王国第二の都市ルダフトの復興です。こちらは早ければ早いほどいいので、この後すぐに私が現地に入ります」


 喋り終えると手元でメモを取っていたヨルンシスさんが顔を上げた。


「この後ですか? さすがに明日からでもいいのでは?」

「今日は魔法もほとんど使っていませんから。私と教団のチームでできることは結構ありますし」

「結構どころではありませんよ、むしろそこ頼りですので。……ですがルーシャさん、力の使い方についてもう覚悟はできているのですか?」

「……できています。綺麗ごとだけではいずれ立ちゆかなくなると前々から思っていましたから」


 私達の会話に、キアが首を傾げながら割って入ってきた。


「何の覚悟だよ?」

「私の生物再生能力をお金儲けに使う覚悟」


 ほぼ蘇生魔法である私の治癒魔法は、ほぼ錬金術でもある。金銭的に価値の高い生物を大量再生すればいくらでもお金を稼げるだろう。

 これまでも教団に食材を提供したりはしてきたけど、直接お金儲けの手段とするのは避けてきた。

 でも、今回はこの禁忌を破らなければナザネシア王国は救えない。私の魔法で王国の経済を立て直す。


 決意表明を受けてケイトリンさんがスッと挙手。


「ルーシャ様のお覚悟、誠にいたみいります。僭越ながら、大量再生に適した生物について私に案がございます。羊、はいかがでしょうか」


 なるほど、確かに羊はいいかもしれない。


 この後、私達はエルフィリス国が実施する支援を具体的に会議で決めていった。

 主に、黒い悪魔に破壊された地域を建て直すための資材などの援助で、すぐに準備に取りかかってもらうことに。


 お昼を少し過ぎた頃に会議は終わり、私は早速行動に移ることにした。

 キアとオーゼスさん、ケイトリンさんを引き連れて会議室の扉に向かうも、目の前に立ちはだかる人物が。テルミラお母さんが腕組みをして私を睨みつけてくる。


「相変わらず、やると決めたら頭の回転も行動も速いわね。私に何か言うことがあるでしょ?」

「う……、こういう話になったから、お母さんにも手伝ってもらえたら嬉しいなー、なんてね……」


 幼女固有の特技、可愛くお願いする、を発動するとお母さんは大きなため息。

 手をかざして風を操り、会議室の窓の一つを開け放つ。


「ったく! 急ぐんでしょ! さっさと行くわよ!」


 風に体を持ち上げられた私達は一塊となって建物外へと飛ばされた。

 そして、あっという間に教団の拠点に帰還を果たす。


 まずは出迎えに現れたトレイシーさんとミーティアさんに事情を話さなければならなかった。

 ナザネシア王国が聖女ルーシャ教団の勢力圏となったことを告げると、やはりと言うべきか、参謀達は狂喜乱舞して大歓迎だった。


「勢力圏になるのですから当然聖女ルーシャ教が国教ですよね!」

「国民まるごと信者に! しかも世界有数の交通の要衝という好立地!」

「世界進出が見えてきましたよ、ミーティア!」

「見えるどころかもう手が届きますよ、トレイシー!」


 うかれにうかれた末に二人はケイトリンさんに向かって頭を下げる。


「「素晴らしい誕生日プレゼントをありがとうございます! 女王様!」」


 早速教団の恥ずかしいところを見られてしまった……。と思っていると、ケイトリンさんの方は笑顔でこれに応じる。


「今日からは私も教団幹部の一人。共に世界を取りにいきましょう」


 新幹部の女王は参謀達とがっちり手を結んだ。

 ……この人達、めちゃ気が合いそうだな。





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