オークジェネラル3
はやくユミルとイチャイチャさせたいのに全く戦場から抜け出せない…。
「ガアァァァーー‼︎」
他のオークもジェネラルと同じように叫び出す。最初はただ近くの仲間でも呼んだのかと思ったがそうではない。彼らの動きがより激しいものになっただけだ。だが、それは僕にとっては大したことがなくても他の騎士達には厳しいものだった。
せっかく僕が減らし、騎士達の奮戦で大多数のオークが討伐されたが残ったオーク達はまるで上位の個体へと進化したかのようなより強力な攻撃を繰り出すようになった。
なんとなくだが原因は分かる。ジェネラルの持っていた士気高揚だろう。普通に指揮のスキルは使っていただろうしこちらを使ったのだろう。
効力は名前同様に自分の指揮下にある仲間達の士気を上げるスキルだ。だがこれはただ士気を上げるだけなら誰にでも出来ることでスキルとは呼ばない。これはその効力に更に同族の力を一時向上させる効果がある。熟練度的には大した効果は見込めないが士気が上がり多少能力が上がっただけでも彼らには辛いだろう。
実際に周りの騎士達の損耗が増え始めている。残りは百にも満たないオークしかいないのにこれでは助かる前の状況に戻ってしまう。どうにかしないと…。
「ジェネラルーー!」
速くこいつを倒して応援に行くしかない。ここから離れれば回復に専念するか近くにいる騎士達に攻撃を始めてしまう。
さっきまでより攻勢に出るが焦ればそれだけ動きは単調になりジェネラルの付け入る隙になる。僕は無理な攻撃を加え反撃を許してしまう。
「ガッ!」
棍棒でこそ殴られなかったがモロに右ストレートを受けてしまう。こいつの利き手がどちらかなんて知らないがそれでも防御もせず受けた一撃は僕を怯ませるには充分だった。
そこからは攻守が逆転してしまう。ジェネラルの攻撃はまだ直撃は一度きり、それも回復魔法を使えば充分完治可能な怪我でしかないがそれだけでも僕の心は折れかけてしまう。
ジェネラルの振り下ろしを大きく回避し攻撃へと転じようとするか反撃を恐れて躊躇してしまう。その間ジェネラルはやりたい放題やってくる。
「シルフィ様⁈」
ユミルが僕の戦況を見て叫んでくる。殴られてから一切攻撃しなくなればその一撃のダメージが大きかったのかと思うだろう。だが実はそこまでのダメージは無かった。ただ怖いだけだ、殴られるのが、蹴られるのが、傷付くのが痛いのがただ嫌なだけだった。
「くそっ!」
悪態を吐きながら回避を続ける。ジェネラルの方はちょこまか動き回る僕を追い回しながら攻撃を続ける。こいつの体力は底無しなのか?傷こそ再生の力でもまだまだ治しきれていないのに馬鹿みたいに棍棒を振り回してくる。
「シルフィ様、今行きます!」
ユミルが向こうの戦線をほっぽり出してこちらの援護をしようと近付いて来るがそんなことをすれば騎士達の方が危なくなる。今も僕がジェネラルと、一騎打ち出来ているのは彼らが他の魔獣を抑えてくれているがからだ。
「ユミル来るな!騎士達の援護を続けろ!こっちは大丈夫だから!」
「しかし、シルフィ様の動きが!さっきのがまだ効いているのでは⁈」
「大丈夫だってば!ちゃんとやれる!騎士達の援護に戻れ!」
ユミルは僕に怒鳴られると戻って行った。どこか子犬が飼い主に怒られて怯えて逃げるような仕草だったがそんなに怖かっただろうか。
ジェネラルは未だ半殺しのような状態なのに元気に棍棒振り回すが叩きすぎで棍棒はかなりへしゃげてしまっている。もうすぐ壊れるんじゃないだろうか。
ならそれを狙おう。ジェネラルも武器を壊されれば怯むなりして動きが多少止まったりするはずだ。僕は棍棒へと攻撃を集中させる。と言ってもわざと武器同士をぶつけ合わせるだけだ。勿論ぶつけるのは硬魔剣の方だ。槍でやってるとこっちまで傷付く。
ジェネラルは僕がメイン武器を変えたことを疑問に思わないのか攻撃を続けるが流石に疲れてきたのか動きが鈍重になってきた。それでも構わずわざと棍棒で受けられるように攻撃を続け遂に棍棒を破壊した。
ジェネラルの表情なぞイマイチわからないが困惑しているのか攻撃が止まる。戦闘中にそんな隙を晒せば狙ってやってなくても危ないだろうに。
「ハッ!」
そのまま硬魔剣で顔面目がけて斬りつける。ジェネラルは寸前まで壊れた棍棒に意識が向いており反応に遅れるがそれでも咄嗟になのかただビックリして後退ったのか身体が後退したため首の下を斬り裂くだけで終わった。
だが勿論それだけで攻撃を止めるはずもなく更に斬りつける。ジェネラルは壊れた棍棒を投げつけてくるが狙いもあまく回避するまでもなく当たらない。
ジェネラルはそのままナイト達の居る方向へと逃げようとするが合流させる気はない。わざわざ士気高揚を奥の手の如く使っておいてあいつ自身何もないんだろうか…。何も無いから逃げたんだろうけど…。
僕は槍を持つと投擲体制に入る。ジェネラルは僕が追って来ないのを感じてか一度振り向きこっちを見る。だが僕を見るとまたすぐ、今度は敗戦した将兵みたいに随分情けなく走る。
槍が金色の光を放ち小刻みに震えだす。充分に魔力を纏わせ、付与と支援魔法で前より強化された筋力で投げつける。
ジェネラルは振り向きもせず走り続けるがもう間に合わない。槍はジェネラルの背中に直撃し身体に風穴を開けて前方へと抜けて行った。
ジェネラルはそれでも数歩歩くがそれで力尽きて倒れる。騎士もオーク達も一度手を止めてこちらを見る。僕は鑑定を使用してジェネラルを観る。
名称:オークジェネラルの死体
僕はジェネラルが完全に死亡したのを確認すると勝鬨をあげる。
「オークジェネラルはこのシルフィが討ち取ったぞ!」
「オォォォォォォーーー‼︎」
「統率者は討ち取った!畳み掛けろ!オーク共を全て討ち取れ!」
「オォォォーーー!」
僕も参加しジェネラルが率いて来たオーク達を討伐する。それから少し経ち、周りには動くオークは一体も居なくなった。
オークジェネラルが率いてきたオーク達は合計二百体程。それに対して千人隊生存者数六百三十八名。死傷者はほぼ全員。犠牲は多く勝ちはしたが辛勝だった。
誤字報告、感想お待ちしております!




