悪魔との戦いを終えて
悪魔達の襲撃により壊れた校舎の補修のため、クリストフ魔法学校は数日間の休校となった。
でも、その間アルスとアスタロトさんには休暇を楽しむ余裕はあまりなかった。
何故なら、常に誰かがアルス達のもとへとやってくるからである。
皆の目的はたった1つ。
それは、アスタロトさんによる魔術訓練を志願して皆集まってきているのだ。
悪魔達との熾烈な戦いの中で、それぞれが感じた無力さの克服のため、あの時以降毎日誰かしらがアスタロトさんに訓練をつけて貰うべくやってくるようになっていた。
こうして、休校の間はアスタロトさんによる的確な指導のもと、スヴェン王子やマーク、クレアにミスズ、そしてそんな中一緒に訓練に参加していたサミュエル団長とその一団まで、やってくる全員の魔術レベルが確実に向上しているのがアルスから見てもはっきりと分かるほど、しっかりと成果となって現れていた。
でも、それもそのはずだ。
だって、冷静に考えればここにいる全員、アルスより遥かに優等生で超人の集まりなのだから。
アスタロトさんの繰り出す目新しい魔術の数々に、最初は皆ついていくのに苦戦していたようではあるが、今では全員が新たな魔術を会得するまでに至っていた。
そうして、学校が再開されるまでの間、アルス達はそのほとんどを魔術訓練に時間を捧げていたのであった。
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そして、今日からようやく魔法学校が再開される事となったため、アルス達は久々に登校する事となった。
久々だったせいか、いつもより少し早めに教室へついてしまったが、教室の扉を開けると既にマリア先生が教室にいた。
どうしてこんな早くに先生がいるのか疑問に思ったが、どうやらマリア先生はアルスとアスタロトさんに用があったようで、アルス達が教室へ来た事に気が付くと、すぐに付いてきて欲しいと職員室の方へと連れられる事となった。
職員室なんて滅多に行かないため、一体何事だろうと少し緊張していると、そのまま入ると思っていた職員室を何故か素通りして、そのままその先にある校長室の前へと連れられてきた。
え?なんで校長室?
なんて思っているのも束の間、マリア先生は校長室の扉をノックすると、そしてそのまま校長室へ入ることとなってしまった。
「ほう、君達が例の二人じゃな。アルスくんと、それにアスタロトくんで良かったかな?」
校長室へと入ると、大きな椅子に腰をかけたセベレク校長が1人、アルス達が来るのを待っていた。
セベレク校長と言えば、今では校長として第一線を退いてはいるが、かつてはサミュエル団長の前に王国魔術師団団長を務めていた程の凄いお方だ。
付いている異名は、「竜殺しのセベレク」。
かつてこの地に現れた巨大な竜を、セベレク校長は1人で凄まじい魔術により討伐した事からこの異名がついている。
まさに、ここアルブール王国においては生きる伝説として広く知られている程の超人なのである。
サミュエル団長も大分年齢を重ねているけれど、セベレク校長は更にその前任者という事なので、正直今いくつになるのかすらよく分からない謎の多い人でもあった。
「この度は、この学園始まって以来の未曾有の危機から二人に救われたという事で、校長であるわしから直接礼を伝えたくて呼び出させて貰った。この度は、本当にありがとう。」
そう言うと、そんな超人であるセベレク校長はアルス達に向かって頭を下げた。
「い、いえ!元はと言えば、あの悪魔達の目的は僕達だったわけですし、むしろ巻き込んでしまった事を謝罪すべきなのはこちらの方です!」
思いがけないセベレク校長からの謝罪を受けて、アルスは慌てて謝罪を返した。
だって、国王様やサミュエル団長には庇って貰えたけれど、やっぱり今回の件の原因は確実に自分達のせいなのだから。
「何を言う、君達に非などあるまいて。君達が卒業するまでの間、君達の事を守るのがわしらの仕事なのじゃからな。それが、守るどころか守られていたのだから、わしら教師もまだまだ鍛え直さねばならんのう。」
そう言うと、セベレク校長は笑いながらも国王様達同様に今回の件を受け入れてくれた。
そんな周りの温かさに、アルスの中では嬉しさと申し訳なさが同時に膨らんでいた。
「ふむ、では諸悪の根源に謝らせれば全て丸く納まろう。」
アルスとセベレク校長のやり取りを見ていたアスタロトさんは、そう言うと校長室に大きな魔法陣を1つ展開した。
すると、すぐに魔法陣の中から急いで二人の悪魔が飛び出してきた。
1人はデーモンロードのイワン。
そしてもう1人は、元クラスメイトのヤブンであった。
「お、お呼びでしょうかアスタロト様!」
急いで飛び出してきた様子のイワンさんが、額の汗を拭いながらアスタロトさんへ慌てて声をかけた。
「ふむ、やはり貴様らの行いのせいで、学校の一部が破損するなどそれ相応にこの学校へ迷惑をかけていたようなのでな。だから、そこの校長に今すぐ謝罪せよ。」
「しゃ、謝罪ですか?」
「二度も言わせるな。」
「は、はいぃ!!この度は調子に乗って学校を破壊してしまい、誠に申し訳ございませんでしたぁ!!」
アスタロトさんの氷のような一瞥を受けて、イワンとヤブンは慌てて学長へ頭を下げて謝罪した。
そうして謝罪を受けたセベレク校長はといつと、状況の理解が追い付かないようで戸惑っていた。
「な、なんじゃ……あのデーモンロードがわしに謝罪をしているこの状況はなんなんじゃ……?」
どうやらセベレク校長は、デーモンロードを知っているようだった。
その上で、そんなデーモンロードが慌てて自分に謝罪をしている光景にただ戸惑っているのであった。
「なんだ、デーモンロードを知っておるのか。」
「あぁ……。かつて王国魔術師団長をしていた頃、一度デーモンロードと戦った事があるのじゃよ。あれはとてもわしら人間では太刀打ち出来る相手ではなかった……。だから、あの日この学校へ攻めてきた悪魔がデーモンロードだったと聞いた時は、正直震えが止まらなかったわい……。」
「そうなのか?おい、この世界のデーモンロードはお前だけだったはずだが。」
「は、はい!記憶にございますっ!!この者とは数十年前に一度戦った事がありますっ!!」
「な、なんと!?あの時のデーモンロードであるのか!?それが何故こんなことに!?」
「あの時も含め、大変申し訳ございませんでしたぁ!!もう二度とあんな事致しませんっ!!」
まさかその時のデーモンロード本人だと知り驚くセベレク校長と、そんな事関係無しにまたも綺麗にお辞儀をしながら謝罪するデーモンロードのイワンという、校長室内は本当によく分からない状況に陥っていた。
「問題を起こした張本人がこうして謝罪しているのだ、今回の件は水に流しては貰えないだろうか?気に食わないのであれば今すぐこの場で滅ぼしても構わんのだが、こんなのでもこの世界から悪魔が消えるのは多少面倒なのだ。」
「あ、あぁ、十分じゃ。負傷者こそ出たが、幸い全員無事であったしな。それによく分からないが、デーモンロードを滅ぼすなど不可能だろうて……。」
「そうか助かる。ではこの件はこれで終いでよいな?」
「あ、あぁ、もとよりそれで構わんよ。」
「あ、ありがとうございますっ!!」
こうして、何故か張本人の1人であるはずのアスタロトさんが、強引なやりとりで今回の一件を全て丸く納めてしまったのであった。
その結果、未だ状況が全く掴めず戸惑いながらも承諾したセベレク校長と、またしても命の危機から無事助かった事に涙するイワンという、更によく分からない状況となってしまっていた。
次回、新たな強キャラ登場!!




