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魔族領ゴエティア

 魔族領ゴエティア。


 そこは、アルブール王国から遠く離れた土地にそびえる、人が踏み入れることは決して許されないとされる魔族達の住まう国である。


 ゴエティアとは連合国であり、その中には6つの国が存在する。


 この6つの国は、それぞれが強大な力を持つ魔王により治められている。


 そして、それら全ての頂点に君臨し、6つの国全てを1つに統治する絶対的な存在がいる。


 それが、魔族の頂点にして最強の存在、大魔王サタンである。




 ――――――


 サタンは、緊急会議として数十年ぶりに魔族領の魔王6人全てを集めた。


 普段、それぞれの魔王達とは必要に応じて話をする事はあるのだが、こうして魔王達が一堂に会するのは非常に稀な事である。


 前回は、この世界から天使が去ったのではないかという議題で集まって貰った。

 この世界には、常に世界の秩序を管理する大天使が存在しているのだが、ある時気が付くと大天使によるこの世界への干渉が途絶えていたように思えたからだ。


 結論として、当時の話し合いでは要らぬ憶測で侵略行動などに出るのは得策ではないと結論に至ったため、何もしない方向で話は決着したのだが。


 そもそも、サタンには大天使など大した問題ではなかったのだ。

 大天使であれば、サタン達魔王が力を合わせれば倒せる程度の存在だからだ。


 それよりも、この世界には大天使などよりもっと恐ろしい存在がいる事を警戒しなければならないのだ。


 それが、大悪魔アスタロト。


 サタンは今でもあの時感じた恐怖を覚えている。

 思い出すだけで、大魔王である自身の体が震え出す程に。


 それだけ、1000年前の戦いは一方的であったのだ。

 というか、あんなものもはや戦いとも呼べなかった。


 そう、あれはただの、悪魔による魔族の蹂躙であった。


 当時のサタンにとっては、敵は大天使だけであった。

 大天使というこの世界の頂点とも言える存在さえ抑えることができれば、あとはこの世界を魔族が手に入れる事など容易いと思っていたのだ。


 だから、1000年前に我々魔族は大天使と戦い、そして見事勝利した事で世界征服をすることに決めたのだ。


 あとは、人間など我々魔族の敵ではなかった。

 簡単に世界を蹂躙し領地を広げて行く中、賢明な人間は魔族の配下に下る事で自らの国を護ろうとする者も現れた。


 サタンにとって、人間などに興味は無かった。

 この世界を我々の手に出来るのであればそれで良かったのだ。


 だから、相手にはならないが、それでも戦わずして一国が魔族の配下に下るというのであればそれで良かった。


 もっとも、他の魔王達は何というかは分からなかったのだが、そんな事はこの戦いが全て終わってから整理したら良いと考えていた。



 だが、そんな順調に進んでいると思えた魔族による世界征服であったが、1人の大悪魔により一瞬にして失敗に追い込まれてしまったのである。


 突如として現れたその大悪魔により、次々と配下達が目の前で消されていったのだ。

 しかもそれは、どれだけ力を持つ存在であろうとまるで関係なかったのだ。

 我々の配下に下ったただの人間と変わらず、その全てが一撃で屠られて行く様を見せられたのだ。


 そう、それが例え、魔王であっても等しく。


 そんな、あり得ない光景を目の前で見せられたサタンは、例え自身が魔族最強の大魔王であろうと、あれとまともに戦おうなどという気は起きなかった。

 そんな事より、今すぐこの場から全力で逃げなければ、サタンであっても同じく一撃で消されるであろう事を逸早く察した。


 それからは、サタンはすぐに全力でその場から退いた。

 一目散に、魔族領の方へと超速度で移動したのだ。


 だが、その場で1番の力を有するサタンの存在を察知した大悪魔は、あろう事かサタン目掛けて突進をしてきたのだ。


 サタンの全力をも上回る超速度で迫ってくるあの大悪魔の姿は、今でもはっきりと覚えている。


 ―――あれは、ただただ美しく、そしてそれ以上に恐ろしかった。


 あっという間に追い付かれたサタンは、その瞬間死を悟った。


 何が世界征服だと、笑わせる。

 この圧倒的な力を持つ大悪魔の前では、自分などただの無力な存在に過ぎないのだと痛いほど分からされてしまった。

 静かに魔族領で過ごしていれば、こんな事にならなかったのであろうなという後悔だけが頭を駆け巡った。


 そうして、すぐに殺られると思ったその次の瞬間、何故か大悪魔はその動きを止めたのだった。


 何か別の事に気が付いたような素振りを見せると、サタンに一言告げて大悪魔はその場から去っていってしまった。


「ふん、命拾いしたな。次また同じ過ちを犯すのならば、その時は貴様の命など無いと知れ。」


 今でもこの一言は、サタンの頭の中にしっかりと記憶されている。


 この言葉を思い出す度に、もう2度とあんな存在と敵対してはならないとサタンは己を戒めるのであった。



 そして、話しは戻って今回の魔王会議の議題だが、そんな例の大悪魔が再びこの世界に現れたという事が報告されたため緊急で魔王達を集める事にしたのだ。


 そして今、あの時のトラウマが再びこの世界に現れたと言う。

 対策のしようもないのかもしれないが、それでも少なくとも魔王達に勝手な行動をさせるわけにはいかなかった。


 サタンは、震える手で魔王会議室の扉を開く。

 扉の先には、既に6人の魔王が着席をしていた。


 当時、同じくアスタロトの恐怖から生き残った魔王が2人、そして、当時のあの戦いに参加をしていない、消された魔王達の後釜として新たな魔王となった者が4人。


 新たな魔王達は、何用だと反応は様々であるが、他の2人はこの会議の意味を既に分かっているのだろう、神妙な面持ちでサタンの方を向いていた。


 サタンは、6人のかける長机の上座へと腰をかけると、全員を一瞥し、そしてこの世界に再び現れたという大魔王アスタロトについての話し合いをすべくその重い口を開いたのであった。

第3章スタートです。

誤字報告や感想による忌憚ないご意見等色々ありがとうございます。

当初、完全に興味本位で始めた本作の執筆活動ですが、まさかのブクマ100件以上頂けるなんて思いもしませんでした。

改めまして、皆様いつもありがとうございます。


相変わらずのクオリティとペースですが、少しでも楽しんで頂けているのであれば幸いです。

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