ゴルドール・ディザスター
ディザスター帝国城の王室。
国王であるゴルドール・ディザスターは、王座に腰をかけながら今か今かと待ちわびながらも、来るはずの者が中々現れない事に苛立ちを隠せないでいた。
遅い、遅いのだ!
シュナイダーをアスタロト討伐に向かわせてから、一夜が明け、そして昼が過ぎても尚シュナイダーから何も報告が届かないのだ!
嫌な予感がゴルドールの脳裏を過る。
――シュナイダーが討たれたのではないか。
だが、そんな事は今回に限っては絶対にないはずだとすぐに考え直す。
何故なら、最上位悪魔であるデーモンロードが自分達の希望に応えてくれたのだから。
同じ悪魔で、最強の存在とされるデーモンロードだ。
例えアスタロトが同じデーモンロード級であったとしても、相手は単体なのに対してこちらは悪魔の軍勢が揃っているのだ、負ける訳がなかった。
じゃあ何故こんなにも報告が遅い?
来ないという事はやはり……。
こうして、ゴルドールはただ座って待ちながらも、同じ考えをグルグルと巡らせながら苛立つ事しか出来ないでいた。
王国に現れた、かつてこの世界を滅ぼし尽くしたとされる大悪魔アスタロト。
当初はシュナイダーを偵察に向かわせ、その実力を注意深く監視する事が目的であった。
だが、そこに本来召喚魔術で現れるはずがない最上位悪魔のデーモンロードという、思わぬ戦力が帝国の味方となってくれたのだ。
これは、神が我々人類に与えてくれたチャンスだと思った。
いつまた滅ぼされるのかと怯えながら日々を過ごすぐらいなら、今この掴み取った絶大なるチャンスを逃す手などゴルドールの考えにはなかったのだ。
決して選択は間違ってなどいない!
そう気を取り直し、まだかまだかとシュナイダーからの報告を待ち続けた。
すると、勢いよく王室の扉が開かれた。
ついに来たか!とそちらに目をやると、残念ながらシュナイダーではなく、見張りの兵士が勢いよく王室へ駆け込んできた。
「こ、皇帝陛下!これを!!」
兵士は、一枚の封書をゴルドールへ差し出してきた。
ゴルドールは訝しみながらも、側近にそれを受け取らせ何事かとその封書に目を通す事にした。
「なん……だと……?」
そこに書かれた内容を見て、ゴルドールは絶望した。
それは、まさかのアルブール王国の国王からの一便であった。
"帝国から差し向けられた悪魔は討伐した。"
"帝国魔術師のシュナイダーは王国が捕縛している。"
"本件については、帝国による我が国への侵略行為として、厳正に対処させて頂く。"
シュナイダーが捕縛され、悪魔は討たれた?
一体何の冗談だ?
人間では敵うわけがない最上位悪魔が討たれるなど、そんな訳がないのだ!あるはずがない!
そうだ!これは王国側の嘘に違いない!!
だが、何故ここに悪魔とシュナイダーの事が記されているのか……それは、実際に王国が二人と対峙したからに違いなかった。
つまりは、王国はその二人と対峙をして、かつ無事にこの封書をゴルドールの元へと届けてきたという事になる。
それはつまり……。
「クソッ!!何故だ!!何故こうなった!!」
こうして、全てを理解したゴルドールは、手紙を破り捨てながらただ苛立つ事しか出来なかった。
翌日、魔術師団と共にアルブール王国の国王が帝国へとやって来た。
シュナイダーの居ない今の帝国には、王国魔術師団とまともに戦えるだけの力など残されてなどいなかった。
素直に一行を王城へ通すと、その後帝国は王国からの一方的な要求を全て受け入れる事しか出来ず、結果としてかなり不利な条件での調停を結ばされる事で今回の一件を処理する事となった。
「デーモンロードですら容易く屠る存在だぞ、お前達王国民にとっても危険と背中合わせなのではないか?」
「何を言う。アスタロト殿も我々王国の民の1人だ、何も問題はない。」
「そう言っていられるのも今のうちだ。これはお前達だけの問題ではない、人類の危機なのだ。精々足元をすくわれない事だな。」
「ふん、要らぬ心配だ。帝国こそ、この隙を魔族にでも狙われない事を願っているといい。」
こうして、要は済んだとばかりアルブール王国の一団は帝国から去って行った。
富も戦力も激減した今の帝国には、もはや王国にも大悪魔にも抗う力と気力など残されてはいなかった。
だが、これはまだまだ序章に過ぎないのだ。
言い伝え通り、必ず近い未来もっと激しい戦禍にこの世界は覆われる事になるだろう。
帝国が王国に、そして大悪魔に敗北した事などすぐに世界中に広まる。
であれば、次はそろそろ彼等が行動を開始する番だ。
そう、ここから遥か遠くの地に住まう人ならざる存在、魔族達が。
少し早いですが、これにて第2章終了です。
次からは、第3章〜対魔族編〜に突入します。




