国王への報告
悪魔との決戦を終え、学生の皆は一度寮へと帰宅する事となった。
気絶していたミーナ達も無事目を覚ましたため、二人のケアはクレア達に任せ、アルスとアスタロトさんはスヴェン王子とサミュエル団長に連れられて、至急今回の件の報告のため国王様の元へと向かう事になった。
そして、王城へ着くとすぐにスヴェン王子は国王様へ事の経緯を報告した。
悪魔の軍勢が学校に攻めてきた事。
またその裏には帝国が関与していた事。
その証拠として、帝国魔術師のシュナイダーを捕縛した事について一通り報告した。
その報告を受けた国王様は、以前会った時の朗らかな表情とは違い、真剣な顔付きでその報告を全て聞いていた。
「なるほどな、それは大変ご苦労であった。サミュエルよ、その今回現れた悪魔というのはどれ程であった?」
「はい、正直以前の私達では太刀打ちは出来ないレベルの相手でした。こちらのアスタロト殿の影響がなければ、討ち取る事など出来なかったでしょうな。」
「ふむ。それほどの悪魔であったか。それを含む悪魔がおよそ100体……もしやすると、この国が始まって以来一番の危機であったと言っても過言ではなかろうな。」
すると、国王様は立ち上がりアルスとアスタロトさんの方を向くと、そのままその頭を僕達へ向けて深々と下げた。
「この度は、この国の未曾有の危機を救って頂き本当にありがとう。国からは、相応の礼をさせて頂きたいと思う。」
「そ、そんな!僕達は何も!それに……むしろ今回の件は、僕達がここにいるから起きた事でもあると思います……。」
国王様からの勿体無いお言葉に、アルスは慌てて返事をした。
それに今回の件の原因は、確実に自分達がここに居る事が原因で起きた事だろう。
だから、誉められる事なんて何もないし、むしろ今回の事件を招いた事を罰せられて然るべきだと思っている。
「何を言う、君達は既にこの国の国民だ。その国民に降りかかる危機から護る為に、王国魔術師団は存在するのだ。だが、我々では対応しきれなかったであろう強敵から、この国は君とアスタロト殿に救われたのだ。それにだな、そこに敵対関係である帝国が絡んでいるのであれば、その時点で我が国が無関係でもあるまい。」
責任を感じているアルスの言葉を、国王様はしっかりと否定してくれた。
そっと隣を見ると、アスタロトさんは何も言わずうっすらと笑みを浮かべながら国王様の言葉を聞き入れていた。
「国王、それからサミュエル団長。実はもう1つ報告があります。」
一通り事の成り行きを見守っていたスヴェン王子は、話が一段落したのを見計らってもう1つの報告をした。
「サミュエル団長が我々の元へと来る前に、実はあの場に大天使様が現れていたのです。」
「なに?大天使様だと!?」
スヴェン王子の報告は、全く予想したものでは無かったのだろう。
国王様とサミュエル団長はそのまさかの報告に驚いた。
「はい、私も信じられませんでしたが、こちらのアスタロトさんとは顔見知りであったという時点で信じるしかないでしょう。大天使様は、セレス様と名乗られてました。そしてそのセレス様の導きにより、悪魔達は我々の学校へとやってきたのです。」
「ふむ、という事は、まさか帝国側に大天使様が付いているという事なのか?」
「いえ、そうとは思えませんでした。セレス様は、ただアスタロトさんに会う為だけに、悪魔を利用したような事を仰ってました。しかし、その為に悪魔すらも利用するような方です。どうやら我々の崇拝している大天使様と現実の大天使様とでは、大分違うのだという認識を改め、そして警戒するべきかと。」
確かに、僕達がずっと崇拝し続けてきた大天使様が、まさか悪魔を引き連れて人々を襲わせるなんて思いもしなかった。
「今後直ぐにこの国に対してどうこうされる事は無いかと思いますが、そんなセレス様がこの世界の管轄になったという事を仰られてました。この件は、共に居合わせたクレアには既に口止めをしております。大天使様を信仰する民は多いので、一先ずはここだけの秘密にすべきかと。」
「なるほどな……報告ご苦労。確かにこの件はここだけで留める必要があるだろう。アスタロト殿、良ければそのセレス様の事を知っていたら教えて頂けないだろうか。」
流石に大天使様への対処なんて処理しきれない様子の国王様は、アスタロトさんにセレスさんの事を教えて貰えるように頼った。
「あいつは天使の中でもかなり高位の存在だったはずだ。正直、それがこの世界の管轄を請け負うなど不相応だろうな。普通なら、世界の管轄などもっと下の天使に任せるはずだ。」
アスタロトさんは、別に隠すことでもないとセレスさんの事を教えてくれた。
「まぁそれも全員、今この世界に我が居るからであろう。基本的に、天使と悪魔の世界は互いに干渉できないようになっているのだ。だが以前、我は悪魔界を出ていた頃があったのだが、その時に偶然セレスと知り合ったのだ。それ以降、あいつは隙あらば我と会う為であれば何でもするような節があるのだ。」
そう語ったアスタロトさんは深く溜め息をつくと、なんだかゲッソリしたような表情を浮かべていた。
……色々と思い出したのだろう。
確かにその話が本当であれば、アスタロトさんに会うという理由だけで、高位の存在であるにも関わらずこの世界の管轄を請け負い、そして悪魔すらも利用してアスタロトさんの元へとやってきたという事になる。
それはなんだか、ストーカーにも近いように感じる。。
「まぁ、いくら相手がセレスであっても、もしアルスへ少しでも干渉しようとするのならば容赦はしない。ついでに、この国に対しても何かしようというのなら、我がそれを食い止める事をここに約束しよう。それだけ、先程のお前の言葉は気に入った。」
そう言うと、アスタロトさんは国王様に向けてニヤリと笑みを浮かべた。
先程というのは、アルスに対して国王様が仰ってくれた言葉の事だろう。
「それは有難いお話だ。もはや我々ではどうしようもない次元の話だ、素直に頼らせて頂くとしよう。しかしそうか、アスタロト殿も苦労をされているのだな。」
「全くだ。あいつはその力も考え方もめちゃくちゃなのだ。」
そう言うと、アスタロトさんは再び深く溜め息をついたのであった。
大天使セレスさん。
どうやら相当ヤバいお方のようです。




