31 Actor
大変長らくお待たせいたしました!
転生魔王の墜落詩 第31話です!どうぞ!
「さぁやって参りました!毎度ながら急ピッチでお送りしております魔法祭決勝戦!はたして、今年選ばれる生徒会メンバーは一体誰だー!?実況はこの私、エルヴィスがお送りいたします!」
時刻は十三時。
円形のステージに、実況者の大声が鳴り響く。
そんな実況者の声に共鳴するように、観客席はまるで鳥の群れのように歓声をあげた。
「えー、今回出場する決勝戦メンバーは以下の通りです!
まず、異様な魔力操作能力を見せつけたブライアン・デトロア!そのまるで意思を持ったかのように自在に動く魔術の様は必見です!
続いてマグトリア・マーデル!驚異的な魔術の発動速度で圧倒してきたその戦いぶりは、まるでチーターの如し!
そして──」
騒音が鳴り響くステージには、周囲を見渡せば先程紹介されていた去年の元生徒会メンバーらが、笑顔で歓声に応えている。
その様はまるで王公貴族のようだ。
「そして今回の目玉はなんといっても、あの『完全無敗の女王』ことリオン・クルス元生徒会長に敗北の泥を塗りつけた、ケイト・ハートフィリア選手!さてさて、今回の試合、いったいどうなることやら!?」
その一方で、私は慣れない視線に苦笑を返すだけだった。
だって仕方ないじゃん。私そういうの経験ないんだからさ。
そんな風に歓声に当てられていると、場面は次へと移っていき、私たちはくじ引きによって対戦順位が決定されることとなった。
(どれどれ……)
くじ引きに使用されたのは、典型的な新井式回転抽選機。
取っ手部分に取り付けられた黒いグリップは、自動的に反対魔法が発動するように仕掛けられた、最新式の機械仕掛けの魔法道具が取り付けられていた。
やがて私の番に回ってきたので、私は無造作にそれを回した。
──ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ、ゴトン。
鈍い音を台に響かせて落ちてきた鉄球に彫られた番号を確認する。
「3番、ということは、4番が相手か……」
そもそも私が生徒会長を目指す理由は、師匠への恩返しのつもりでもある。
それならいっそ、強い奴と闘ってみたいものだし……。
そう思いながら後に引くと、私より背は高いものの、お世辞にも高身長とは言えない美少年が前に出てきた。
「あ、4番だ」
少年はそう呟くと、私の方に近寄ってきてこう言った。
「本当にごめんなさいっす、ケイトさん。今回はちょっと楽しめそうにないっすわ」
「……は?」
「楽しめないかもってどういうことだよ……」
愚痴を吐きながら、私は観戦席でウィルの姿を探した。
ぐるりと見渡すも、この人集りだ。そう簡単には見つからなかった。なので、私は早々に諦めて、近くの空いていたベンチに腰を掛けた。
(ちゃんと対戦相手の戦いかたを見ておかないと……とか、普通なら思うんだろうけど、私にはそんなの見ても何がなんやらわかんねぇしなぁ……)
そのままボーッとしながら、私はステージの上を眺めた。
──ズドドドドン!ズドドン!ズドン!
あのちっちゃい魔法を連発しているのが、多分さっき言ってたマグトリアってやつか……。
確かにあれは早いなぁ。でも、あれならなんとかかわせられるかもしれない。相手が二倍の早さで動くとわかっているなら、こちらも二倍で動けばいいだけだ。って師匠は言ってたけど、その難しさは半端ではなかった。
それを、子供の遊びみたいに言えるのが、また師匠のすごいところなんだけど。
対して、その攻撃を器用に跳ね返したり避けたりしているのが、ブライアンだな。
ひょろっちい見た目の割に体力もあるし、足も速い。
まるでダンスでも踊っているかのような足裁きだ。
あれなら、試合時間延長するかもしれないなぁ。拮抗してるし。
そんなことを考えていると、案の定、試合はドローになった。
ドローの場合、ルール上はどうなるんだっけ?ま、いっか。
私はそう思いながら、あの、面白くないとか言っていた奴と闘うため、その席をたった。
不意に、こちらへ向けられた殺気のような物に気がついた。
毎晩の魔物狩(最近ほとんど経験値溜まらなくなってきてるけど)で覚えた、獲物を狙う視線だ。
最初のうちはずっと安全な距離からあの黒い奴で攻撃していたけど、それではなんだか戦っている気がしなかったので、最近は黒い奴で剣を作って戦うことにしていたのだ。
当然、それによって微力ではあるが、そういう視線がどこに向いているかはわかるようになってきていた。
やっていればわかると思うのだが、あれは普通の視線とはちょっとばかり違うのだ。
何というか、触覚的に伝わるような、ピリピリとした感じの視線だ。
「はぁ……。気づかれちまったか」
ふと、エヴュラはそんな風にため息をつきながら、席を立った。
(なんだ、矛先はお前か)
何か色々恨み買ってそうなツラしてんだもんなぁ……。
ま、俺は関係ないから、このまま彼らの試合を見学させてもらいますけど。
そう思っていると、膝の上に座っていたケイが、何やらそわそわしだした。
「なんだ?トイレか?」
「違います!……気づいてないんですか、そのアレ」
「アレじゃわかんねぇよ。アレって何?」
トイレじゃないなら、何だろ。
不思議に思うも、アーカイヴスは相変わらず彼女にたいしては権限が不足していますとの英文が出現されるのみ。
……なら、視点を変えてみるか。
現在の状況を教えてくれ。
【不明】
不明って何だよ!?
【関係者の一部に不許可権限が課せられているため、情報を提示できません】
……ということは、ケイが関係しているのか?それとも、あの殺気の主が調べられないって事か?
【関係者の一部に不許可権限が課せられているため、情報を提示できません】
殺気の主についての情報は?
【……】
あれ、どうしたんだ?
【関係者の一部に不許可けんg(ry】
何これ、バグってんの?
え、バグったの!?
え!?ちょっと待て!?バグった!?
【バグを修正中。しばらくお待ちください】
バグってたーっ!?
え、何で?これってバグるの!?異能力ってバグるものなの!?
【……】
しかし、相変わらずアーカイヴスは沈黙したままだった。
嘆いても仕方がないな。
──パァァン!
そう思った時、後方で何やら爆音とか破裂音っぽい音が聞こえてきた。
内耳が破裂しそうなほどに鋭い音響に、俺は反射的にその方向へと振り返った。
すると、そこには肩から血を吹き上げているエヴュラが、後方へと後ずさりしてドサリと倒れる瞬間だった。
瞬間的に、俺のボケていた脳がフル回転して、状況を整理し、次の行動を演算する。
その結果取った行動は、そのベンチの下へ、マフユの頭を引っ掴んで隠れることだった。




